事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成28年(不)第4号及び第17号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成29年11月14日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、①被申立人から労働条件を変更された従業員1名が申立人に加入し、申立人が、同人の
労働条件の変更等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、被申立人が不誠実な対応を行っていること、②申立人が同人を元の
業務へ復帰させるよう求めたが、被申立人が差別的取扱いを放置し継続していること、が不当労働行為であるとして救済申立ての
あった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、ドライバー業務に専従させる旨の業務命令がなかったものとしての取扱い、
原職復帰、誠実団交応諾並びに①及び②について文書の手交・掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員A2をドライバー業務に専従させる旨の業務命令について、平成28年3月1日以降はなかったものとして取り扱い、
同人の同27年10月29日前の運輸・業務部長の業務に相当する業務に従事させなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員A2の処遇に係る団体交渉に誠実に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦1.8メートルx横0.9メートル大の白色板に下記の文書
と同文を明瞭に記載して、被申立人本社の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社
代表取締役 B1
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)貴組合員A2氏を平成28年3月1日以降も引き続きドライバー業務に専従させたこと(1号違反)。
(2)平成27年12月9日及び同28年1月12日に開催された団体交渉において、貴組合員A2氏をドライバー業務に専従させた理由を
説明しなかったこと(2号違反)。 |
判断の要旨 |
争点1(27.12.9団交及び28.1.12団交における会社の
対応は、不誠実団交に当たるか。)について
(1)27.12.9団交について
27.12.9団交において、①組合がA2組合員を運行管理者として採用したにもかかわらず、業務命令でドライバー業務に
特化させたことが不当でも不利益でもない理由を尋ねたところ、B6本部長は、作成した資料を読み上げる形で27.10.29
会議及び27.10.29面談の概要を述べたこと、②これに対し、組合がさらにドライバー業務に特化させた具体的、客観的、
合理的な理由を詳しく聞きたいと述べたところ、B6本部長は、(ⅰ)収入が変わらないのに経費が悪化し利益が大幅に減った、
(ⅱ)世間一般的には部長自らが現場で汗をかいて改善することは当然であると認識している旨述べたこと、が認められる。
これらのことからすれば、会社の説明は、一般論を述べるにとどまるものであって、会社がA2組合員をドライバー業務に専従
させた根拠を具体的に説明し、その裏付けとなる客観的な資料を示したとはいえず、かかる会社の対応は不誠実であったといわざ
るを得ない。
(2)28.1.12団交について
①組合が、A2組合員をドライバーに特化させる客観的、合理的な理由の説明を求めたところ、B6本部長は、協力会社に支払う
費用の抑制である旨述べたこと、②組合が、B6本部長が運転したらどうかと述べたところ、B6本部長は、別に構わない旨述べ
たことが認められる。
そうすると、経費削減のために自社運行が有効であるとしてドライバー業務への業務の割り振りが必要な状況であるとしても、
B6本部長の説明は一般論を述べるにとどまるものであって、なぜA2組合員がしなければいけないのか客観的、具体的な理由を
会社が説明したとはいえず、かかる会社の対応は不誠実であったとみるほかない。
(3)以上のとおりであるから、27.12.9団交及び28.1.12団交において、A2組合員をドライバー業務に専従させ
た客観的、具体的な理由の説明を組合が求めたことに対して会社が十分に説明したとは認められず、その余の組合主張を検討する
までもなく、かかる会社の対応は不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(会社が、A2組合員を平成27年10月29日前の運輸・業務部長の業務に復職させないことは、組合員であるが故
に行われた不利益取扱いに当たるか。)について
(1)①A2組合員は運輸・業務部長として運行管理の業務に従事していたこと、②A2組合員以外に部長職でドライバー業務に
のみ従事した前例はないこと、③27.10.29会議でB6本部長が、(ⅰ)協力会社を更に減らし、自社運行に切り替える、
(ⅱ)実務はA2組合員の部下にしてもらう、旨述べたこと、④27.10.29面談でB6本部長が、(ⅰ)来年の2月までは
部長職であることも賃金も変わらない、(ⅱ)皆がA2組合員を部長と呼ぶことを遠慮するかもしれない、旨述べたこと、が認め
られる。
これらのことからすれば、ドライバー業務は複数の協力会社に委託された庸車をもって代替することができる業務であって、会
社内で部長職にある者が従事するような業務ではないと認識されているものと推認され、たとえ給与や役職名はそのままであった
としても、労働者として精神的に大きな打撃を受ける取扱いであるといえる。
よって、A2組合員をドライバー業務に専従させたことは不利益取扱いであり、また、平成28年3月1日以降も引き続き不利
益な取扱いが継続しているといえる。
(2)会社が、A2組合員をドライバー業務に専従させ続けていることは、①経営の責任である経常利益の責任を部長であるA2
組合員に取らせるものであり、②従来の慣行と著しく食い違う取扱いをA2組合員にのみ強いており、③その人選においてもB7
部長と比較するとA2組合員の取扱いは著しく均衡を欠いているといわざるを得ず、かかる会社の対応に合理的な理由があるとは
認められない。
(3)会社は平成28年2月の組織改編に当たり、組合から再三元の業務に戻すよう要求されて団交を行っていた組合及びA2組
合員に組織改編について全く説明せず、組織改編後も28.6.10団交まで説明しなかったというべきである。
また、会社の人員体制を抜本的に改変する際に、人事を再考するとしたA2組合員をあえてその対象に含めないのは、いかにも
不自然であるといわざるを得ない。
以上のことからすると、会社は、A2組合員が本人にとって不本意なドライバー業務に従事させられたことに対して、組合に加
入した上、組合が団交において会社の対応を追及したり、元の業務に戻すことを繰り返し求めたりしたことを嫌悪し、A2組合員
の労働条件をめぐり会社と対立関係にあった組合及びA2組合員を好ましからざる存在と認識し、会社の組織改編に当たって、あ
えて組合やA2組合員に説明することなく、A2組合員を組織改編の対象から除外し、平成28年3月1日以降も引き続きドライ
バー業務に従事させたとみざるを得ない。
(4)したがって、会社が、当初の業務命令をB4センター閉鎖後に再考するとしていながら、同センター閉鎖後の平成28年3
月1日以降も引き続きA2組合員にドライバー業務を継続させ、同27年10月29日前の運輸・業務部長の業務に復職させない
ことは、同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるものであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為
である。 |
掲載文献 |
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