事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成27年(不)第15号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成29年10月24日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、被申立人が、①組合員1名を昇格させなかったこと、
②B2営業部を分割し、その一方の組織に組合員2名を配置したこと、③これらを議題とする団体交渉申入れに応じなかったこ
と、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、団交応諾、③について文書の手
交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人が平成26年10月22日付け、同年11月
27日付け及び同年12月22日付けで申し入れた、「B2営業部の分割による組合員隔離」及び「営業部内のA2組合員に対す
る昇格差別」に関する団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社
代表取締役 B1
当社が、貴組合が平成26年10月22日付け、同年11月27日付け及び同年12月22日付けで申し入れた、「B2営業部
の分割による組合員隔離」及び「営業部内のA2組合員に対する昇格差別」に関する団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働
委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さな
いようにいたします。
3 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点1(会社が、26.10.1人事異動においてA2組合員を
営業本部長代理に昇格させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)について
A2組合員が、26.10.1人事異動の前後を通じて次長であったことに変わりはないことが認められる。確かに、
26.10.1人事異動と同時に26.10.1組織改編が行われたことによりA2組合員の統括する地域や部下数に変更があっ
たことは認められるが、会社における次長の権限に変化があったとの疎明もなく、これらのことをもって、26.10.1人事異
動が、実質的な降格人事であるとまでいうことはできない。
また、組合は、A2組合員が売上目標達成や部下の育成その他においてB3本部長代理に劣っていない旨主張するが、
26.10.1人事異動において、A2組合員が当然に営業本部長代理に昇格すべき事情が存在したとの疎明はない。
そうすると、26.10.1人事異動において、A2組合員に不利益が生じていたとは認められず、その余を判断するまでもな
く、会社が、26.10.1人事異動においてA2組合員を営業本部長代理に昇格させなかったことは、組合員であるが故の不利
益取扱いに当たるとはいえず、この点に関する組合の申立ては棄却する。
2 争点2(会社が、26.10.1組織改編により、B2営業部をB8営業部とB7営業部に分割し、B8営業部にA2組合
員及びA3組合員を配置したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)について
組織改編は、会社の経営判断に属する事項であって、どのように組織を改編するかは、本来、会社の裁量に委ねられるべきもの
である。しかしながら、本件B2営業部の分割が、会社の裁量を逸脱する不合理なものであり、手続的にも適正といえない場合に
は、不当労働行為に該当する余地がある。
営業力強化のための手法として、B2営業部を分割しないで行う手法もあったことは否定できないものの、どのような手法を取
るかは会社の経営判断に属する事項であるから、営業部の分割により、きめ細やかな営業の実施、営業部間の切磋琢磨により営業
力の強化を図った旨の会社主張は不合理とはいえない。また、A2組合員による49期のB2営業部の営業売上目標は5億
5,000万円であったところ、B7営業部とB8営業部を合計した売上目標金額は5億7,000万円となり、最終的には、約
6億5,300万円の売上実績が上がっていることが認められ、これらのことからしても、会社の方針が不合理であったとは言い
難い。
休眠顧客が営業成績に及ぼす影響は極めて限定的といわざるを得ず、休眠顧客の数に差があることをもって、両営業部における
顧客数のバランスがとれていないとはいえず、結局、売上げに実質的に影響する顧客数においてB8営業部とB7営業部において
大きな差は存在せず、不平等があったとはいえない。
また、対外的な営業業務に従事していた人員についてみると、B8営業部は次長1名、一般社員2名であり、B7営業部は、次
長1名、係長2名であることが認められ、確かに、B7営業部の方が上位職位にある者が多いとはいえる。しかしながら、両営業
部で人数そのものは同じであり、職階の差のみをもって両営業部における人員配置が不平等であったとまではいえない。
以上のとおりであるから、B8営業部とB7営業部との間で、顧客数や人員配置のバランスが不平等であったとまではいえな
い。
組織改編を決定するに当たり、どの程度の期間議論するのか、どのようなメンバーで議論するかは、会社の経営判断に属する事
項であって、それが明らかになっていないことをもって、当該決定が合理的経営判断に基づいていないとはいえない。
以上のとおりであるから、会社が、B2営業部を分割したことが、会社の裁量を逸脱した不合理なものとはいえない。
組織改編を行うに当たり、どのような手順で決定するかは、会社の経営判断に属する事項であるといえ、また、会社において組
織改編を行うに当たり、対象となる部署の責任者に事前に相談する慣行ないし取り決めがあったと認めるに足る疎明はないことか
らすると、A2組合員にB2営業部分割等について事前相談がなかったことが、B2営業部分割の動機が組合嫌悪であることの証
左とみることはできない。
そうすると、本件B2営業部の分割は、会社の裁量を逸脱する不合理なものであるとも手続的に適正さを欠いているともいえな
いから、組合嫌悪・差別による取扱いであるとはいえない。
両組合員をB8営業部に配置したことが、会社の裁量を逸脱する不合理なものである場合には、不当労働行為に該当する余地が
あるが、本件配置が、そのような不合理な配置であったと認めるに足る疎明はない。
したがって、会社が、B8営業部にA2組合員及びA3組合員を配置したことが、組合員であるが故の取扱いであるとはいえな
い。
以上のとおりであるから、その余を判断するまでもなく、会社が、26.10.1組織改編により、B2営業部をB8営業部と
B7営業部に分割し、B8営業部にA2組合員及びA3組合員を配置したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらず、
この点に関する組合の申立ては棄却する。
3 争点3(26.10.22団交申入れ、26.11.27団交申入れ及び26.12.22団交申入れに対する会社の対応
は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
組織改編に伴う人事異動や昇格・昇任の基準については、労働条件に関する事項であって、義務的団交事項であると解されると
ころ、本件で問題となっている各議題は、これらを含むものと解される。これに加え、組合は団交申入れを行う理由として、
26.10.1組織改編とそれに伴う26.10.1人事異動により、組合員が不当に差別的取扱いを受けていると考えているこ
とを明確に主張しているのであるから、これらの議題は、団体的労使関係の運営に関する事項にも該当するものとして、いずれも
義務的団交事項に当たるといえる。
26.10.22団交申入書に記載された「組合員隔離」と「昇格差別」が指す事実や、組合の要求内容については、会社が主
張するほど判然としないものとは認められず、会社は、遅くとも26.11.5組合回答書を受領した時点で、組合が求める事項
が義務的団交事項に当たるものであることを認識し得る状態であったといえる。
以上のとおりであるから、26.10.22団交申入れ、26.11.27団交申入れ及び26.12.22団交申入れで申し
入れた議題のうち、①B2営業部分割による組合員隔離について、②営業部内のA2組合員に対する昇格差別について、会社が団
交に応じていないことに、正当な理由があるとはいえず、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為
である。
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掲載文献 |
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