労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第55号・平成28年(不)第11号・平成28年(不)第13号不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成29年9月22日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人から自宅待機を命じられた従業員が組合に加入し、組合が団体交渉を申し入れたところ、被申立人は、当初、配置転換を提案していたが、その後、調査委員会を設置し、調査を終了させ、当該組合員を懲戒解雇した。本件は、このような状況下で、①団体交渉における被申立人の対応、②被申立人が調査委員会を設置し、調査を終了させたこと、③当該組合員に対する懲戒解雇、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(1)(27.3.18団交にて、2.19配転案を撒回したことが、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
 団交協議中に、一方当事者が、これまでの方針を転換することを直ちに問題があるとはいえない。
 法人は方針転換の理由について組合に一定程度説明しているといえるところ、法人が、寮生との間で不適切な関係を持ったことや寮生に飲酒をさせた等の問題が事実であったならば、配転で対処するのではなく重大な懲戒処分を科さざるを得ないとすることについて、不自然な点は見当たらない。
 加えて、法人は、その後も、27.6.9団交、27.7.8団交及び27.9.18団交において、新しい事実の調査の必要性について説明したことが認められる。
 したがって、法人は組合に対し、27.3.18団交において2.6事情聴取以降に新しい事実が判明したため方針を転換したこととその理由を説明し、これら事実について調査を行った上で、A2組合員の処遇についての協議を継続しようとしていたとみるのが相当であり、しかも、この方針転換について不自然な点は見当たらないのだから、27.3.18団交において2.19配転案を撒回したことが不誠実であったということはできない。
 以上のとおりであるから、法人が27.3.18団交にて、2.19配転案を撒回したことを労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
2 争点1(2)(団交申入れに対する回答として提示した2.19配転案以降、独自に法人の生徒に対し聞き取り調査等を行い、そのことを27.3.18団交まで組合に明らかにしなかったことが、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
 2.19配転案撤回の前提となった事情聴取等を行ったことに格別の問題があるとはいえないし、また、法人が調査を実施する際には、組合との事前協議を要する旨の労使協定が締結されている等の特段の事情がない限り、事前に組合に通告しなかったことをもって直ちに不当とはいえない。
 以上のとおりであるから、法人が団交申入れに対する回答として提示した2.19配転案以降、独自に法人の生徒に対し聞き取り調査等を行い、そのことを27.3.18団交まで組合に明らかにしなかったことを労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
3 争点1(3)(27.10.8団交にて、調査委員会の設置撤回要求を議題とする交渉を打ち切る旨返答したことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
 法人は組合に対し、調査委員会を開催し、さらなる調査を行わざるを得ないと判断する理由を明言し、自らの考えを伝えているというべきである。
 また、法人は調査委員会の開催についての自らの考えを伝えるとともに組合の意向に応じて一定の対応をしているというべきである。
 2.19配転案撤回直後から、法人は調査委員会設置の必要性についての自らの考えをその理由も含めて何度も明らかにした上で、組合の意向を尊重し、組合との合意を得られるよう提案を行うなどしていたが、27.9.18団交の段階で、調査委員会の設置の必要性についての労使の見解は平行線になっており、これ以上、団交を重ねても、進展が期待できない事態に至っていることは明らかである。
 以上のとおりであるから、法人が、27.10.8団交にて、調査委員会の設置撤回要求を議題とする交渉を打ち切る旨返答したことを労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
4 争点2(法人が、組合の設置撤回要求にかかわらず調査委員会を設置し、平成28年2月27日をもって調査を終了させたことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)について
① 調査委員会は本件嫌疑事項に対するA2組合員の言い分を書面で提出を受けた上で弁明の機会を付与すべく何度も働きかけており、調査委員会の設置が、A2組合員に不利益を及ぼすものというべき特段の事情は見当たらない。
 就業規則中に調査委員会の設置についての規定がなく、第三者性を有しなければならない根拠はない上、調査委員会の委員構成についても、法人が組合の意向を尊重し、組合との合意を得られるよう提案を行ったにもかかわらず、組合の合意が得られず、労使の見解が平行線になったために、法人が本件法人代理人を含む3名の弁護士を構成員として委嘱したものであり、このような法人の対応を不当であるということはできない。
② A2組合員は、法人が調査を委嘱した調査委員会がA2組合員の懲戒処分の事由となり得る行為の有無について調査を行い、その結果を経て法人がA2組合員の処遇を決定する意向があるのを知りながら、本件調査開始書等を受領せず、与えられた弁明の機会に応じなかったというのが相当である。
 平成27年10月から同28年2月27日までの間の法人及び法人が調査を委嘱した法人調査委員会の対応とこれに対するA2組合員の対応に照らすと、法人調査委員会がA2組合員への聴取を行わないまま、調査を終了させたことを不当ということはできない。
 したがって、法人調査委員会がA2組合員に対し十分に弁明の機会を与えたのに対し、A2組合員がこれに応じない中で、法人は、調査を終了させたというべきであるから、法人のかかる対応を不当ということはできない。
③ 以上のとおりであるから、法人が、組合の設置撤回要求にかかわらず、調査委員会を設置し、平成28年2月27目をもって調査を終了させたことは、A2組合員が組合員であるが故に不利益に取り扱ったとも、組合に対して支配介入を行ったということもできない。したがって、かかる法人の行為を労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
5 争点3(本件懲戒解雇は、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)について
 法人調査委員会が調査に着手した頃の根拠資料の内容が虚偽であると認めるに足る疎明はないのであるから、その後の調査を経て、法人調査委員会が、①A2組合員の行為は、わいせつ行為及びセクシャルハラスメント行為に当たる、②A2組合員は複数の寮生に対し、酒を振る舞い飲酒させるなどした、との結論を出したことを不当とみることはできない。
 本件調査報告書を受け取った法人が、懲戒処分の主たる理由とした2点の行為が事実であると判断したことには理由がある。また、教育機関たる法人が、これらの行為は重大な非違行為であって懲戒解雇に相当すると判断したことにも不自然な点は見当たらず、法人が解雇権を濫用したということもできない。
 以上のとおりであるから、本件懲戒解雇を労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。 
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