労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛労委平成26年(不)第9号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年8月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①A1分会長の65歳時再雇用を拒否したこと、②団体交渉において同人を65歳時再雇用しない理由及び基準を明確にしなかった対応が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、愛知県労働委員会は、会社に対し、②について文書の交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。


 当社が、平成26年7月24日の団体交渉において、貴組合のA2分会長であるA1の65歳後の再雇用をしない理由及び基準を明確にしなかった対応は労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
      年 月 日
 組合
  執行委員長 A1様
会社                
代表取締役社長 B1

2 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 争点(1)(会社が、A1分会長を65歳時再雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)について
(1)争点(1)ア(会社において、希望すれば65歳時再雇用される労働慣行があったか。)について
 65歳時再雇用の希望を持っていた65歳後賃金締切日到達者は、会社によって65歳時再雇用しようとする者に選別された場合、当該希望を会社から確認された後、65歳時再雇用されるといえ、会社によって65歳時再雇用しようとする者に選別されない場合、当該希望を会社から確認されないまま退職しているといえる。
 このことから、65歳後賃金締切日到達者の65歳時再雇用の希望は、会社による65歳時再雇用しようとする者の選別の段階では全く考慮されておらず、当該選別の後に初めて考慮されるものといえる。
 よって、このような会社の65歳時再雇用の手続の過程からは、会社において、希望すれば65歳時再雇用される労働慣行があったということはできない。
(2)争点(1)イ(A1分会長が、会社に65歳時再雇用されるものと期待することに合理的な理由があったか。)について
 A1分会長が就業規則第55条第2項に規定された要素を満たすと考えることに具体的な根拠がある場合には、同人が会社に65歳時再雇用されるものと期待することに合理的な理由があったものといえる。しかし、同人の営収の点での会社への貢献度は低いものであるというほかなく、また、会社との信頼関係も問題があったものと評価せざるを得ない。
 よって、A1分会長が就業規則第55条第2項に規定された要素を満たすと考えることに具体的な根拠があるとはいえず、同人が会社に65歳時再雇用されるものと期待することに合理的な理由は認められない。
(3)争点(1)ウ(上記の労働慣行ないし合理的な理由があったといえる場合、会社がA1分会長を65歳時再雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)について
 会社において65歳時再雇用についての労働慣行があったということはできず、また、A1分会長が会社に65歳時再雇用されるものと期待することに合理的な理由も認められないため、本争点については判断するまでもない。
(4)結論
 以上のことから、会社がA1分会長を65歳時再雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たらない。

2 争点(2)(会社の平成26年7月24日開催の団交における対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
(1)争点(2)ア(A1分会長の65歳時再雇用に関する事項(65歳時再雇用をしない理由と基準)は、義務的団交事項といえるか。)について
 義務的団交事項には、解雇、雇止め等の雇用関係の終了に関する事項も、当然に含まれると解される。
 最終的な65歳時再雇用の判断については、会社がその裁量に基づいて判断する事項であるとしても、実際に65歳時再雇用が実現するかどうかは、既に会社との間で約10年もの間継続して労働関係にあるA1分会長にとって、事実上、嘱託雇用契約が更新されるかどうかという、労働条件そのものに関わる事項であるから、65歳時再雇用しない場合の理由や、65歳時再雇用の判断の基準の説明を求めることは、まさに使用者に処分可能な労働条件その他の待遇に関する事項について説明を求めるものというべきである。
 よって、A1分会長の65歳時再雇用に関する事項は、義務的団交事項といえる。
(2)争点(2)イ(義務的団交事項といえる場合、会社は組合に対し、A1分会長の65歳時再雇用について当該団交において説明を尽くしたといえるか。)について
 会社は、就業規則第55条第2項に具体的に明示されていない営収の問題及び他乗務員とのコミュニケーションの問題を考慮してA1分会長の65歳時再雇用を判断していたにもかかわらず、第3回団交において、A1分会長を65歳時再雇用しない理由及びその基準の説明を求めた組合に対し、当該営収の問題及び他乗務員とのコミュニケーションの問題を考慮したことを説明せず、就業規則第55条第2項がその根拠であるとのみ答えたことから、具体的かつ明確な説明をしたものとはいえない。
 このような会社の対応は、義務的団交事項であると判断したA1分会長の65歳時再雇用に関する事項について、誠実交渉義務を果たしたものとは認められない。
 よって、会社は組合に対し、A1分会長の65歳時再雇用について第3回団交において説明を尽くしたとはいえない。
(3)結論
 以上のことから、会社の第3回団交における対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
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