労働委員会命令データベース

(こ の命令は、労組法に基づく和解の認定により失効しています。)
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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年(不)第28号その2・平成27年(不)第53号 その2・平成28年(不)第31号その2 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社(「Y2会社」、「Y3会社」と併せて「Y1会社 ら」) 
被申立人  Y2会社 
被申立人  Y3会社 
命令年月日  平成29年7月18日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①平成27年3月から4月に、Y1会社が、組合員に対 し、元従業員を介して、金銭の支払を条件として組合脱退を働きかけたこと、②Y2会社が、平成27年6月30日以降、車両事 故を起こした後に組合に加入したA2に対し、シュレッダー係の業務に就かせたこと、③Y1会社らが、8月11日付けで、A2 の懲戒解雇処分について、懲戒解雇理由を「罪状」などと記載した同人の顔写真入りの通知をY1会社らの社内に掲示(「本件掲 示物」)したこと、④未払い賃金の支払等に関する平成28年2月23日から同年3月16日までの間に4回にわたって行った団 体交渉申入れ(「本件団体交渉申入れ」)に対するY2会社の対応、⑤Y1会社らが、本件社内報にA2及びA3についての記事 を掲載し、Y1会社らの全従業員の自宅に送付したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委 員会は、Y1会社らに対し、組合からの脱退勧奨禁止、誠実団交応諾、文書の送付・交付・掲示等を命じた。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人組合の組合員に対し、元従業員を介 するなどして、申立人組合からの脱退を勧奨してはならない。
2 被申立人Y2会社は、申立人組合が、平成28年2月23日付け、同月24日付け、同月25日付け及び3月16日付けで申 し入れた団体交渉に、誠実に応じなければならない。
3 被申立人Y1会社、同Y2会社及び同Y3会社は、本命令書受領の日以降に発行する直近の社内報「B2」に下記と同一の内 容を読みやすいように印刷掲載し、被申立人会社らの全従業員の自宅に送付しなければならない。


 「B2 2015年8月号」に、組合組合員A2氏を懲戒解雇(なお、この懲戒解雇は後日撤回されています。)したことと、同氏の懲戒解雇理由を「罪状」などと記載した記事を掲載し たこと、同組合組合員A3氏の組合加入の勧誘を断るよう勧める内容の記事を掲載したことは、東京都労働委員会において不当労 働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 以上、東京都労働委員会の命令により掲載します。
4 被申立人Y1会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文 書を55センチメートルx80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所 に10日間掲示しなければならない。

年  月  日
 組合
  執行委員長 A1 殿
Y1会社               
代表取締役 B1

 当社が、①元従業員を介して、貴組合の組合員に対し、貴組合からの脱退を勧奨したこと、②貴組合の組合員A2氏の懲成解雇 の理由を「罪状」などと記載した書面を各支店に貼り出したことは、いずれも東京都労働委員会において不当労働行為であると認 定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
5 被申立人Y2会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文 書を55センチメートルx80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所 に10日間掲示しなければならない。

年  月  日
 組合
  執行委員長 A1 殿
Y2会社               
代表取締役 B1

 当社が、①貴組合の組合員A2氏に対し、平成27年6月29日にシュレッダー係への配転を命じたこと、②貴組合の組合員 A2氏の懲戒解雇の理由を「罪状」などと記載した書面を各支店に貼り出したこと、③平成28年2月23日付け、同月24日付 け、同月25日付け及び3月16日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったことは、いずれも東京都労働委員会において不当労 働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
6 被申立人Y3会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文 書を55センチメートルx80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所 に10日間掲示しなければならない。

年  月  日
 組合
  執行委員長 A1 殿
Y3会社               
代表取締役 B1

 当社が、貴組合の組合員A2氏の懲戒解雇の理由を「罪状」などと記載した書面を各支店に貼り出したことは、東京都労働委員 会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を操り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
7 被申立人Y1会社は、第3項及び第4項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
8 被申立人株式Y2会社は、第3項及び第5項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
9 被申立人Y3会社は、第3項及び第6項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならな い。 
判断の要旨  1 組合員の脱退について
 Y1会社が、組合のY1会社らに対する影響力の拡大を危惧し、元従業員であるC2を介するなどの方策をとって、組合員に対 して、金銭を支払って和解することと引換えに、組合を脱退するよう働きかけたものとみざるを得ず、このようなY1会社の行為 は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。
2 A2をシュレッダー係の業務に就かせたことについて
 シュレッダー係の業務は、一日中廃棄書類をシュレッダーに入れる作業を行うものであり、Y2会社は、団体交渉での組合の質 問に対し、後日、シュレッダー係の業務に配属される者は、障害者雇用で雇用した者及び勤怠不良等で従前の業務への適性がない として配転された者であると回答していること、正社員でシュレッダー係の業務に配属された従業員はA2以外にはいないことな どを考慮すると、中位以上の成績の月が多く、また、一時期は、営業専任職としてY2会社の中で1位の成績を挙げていたA2 が、正社員としてただ一人、単純業務であり、勤怠不良等とされた従業員が配転されているシュレッダー係に配属されたことは、 不利益な取扱いであるといえる。
 Y2会社がシュレッダー係にA2を配転した真の狙いは、同人の組合加入により現役従業員の処遇改善を初めて求められた同社 が、組合のY1会社らに対する影響力が強まることを懸念し、これを抑制することを狙って、同人に不利益な取扱いをすることに より、組合のY1会社らにおける組織拡大を抑止することにあったとみざるを得えない。
 このようなY2会社の行為は、A2が組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、組合の弱体化を企図した 支配介入にも当たる。
3 本件掲示物について
 Y1会社らが、本件掲示物をY1会社らの社内に掲示したのは、組合のY1会社らに対する影響力が強まることを懸念し、現役 の正社員であり、団体交渉にも出席しているA2が犯罪者であり一生を棒にふることになったかのように思わせることで、Y1会 社らの従業員の組合加入を抑制し、組合のY1会社らにおける影響力を減殺することを狙ったものといわざるを得ない。
 このようなY1会社らの行為は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。
4 団体交渉について
① 平成28年5月26日まで団体交渉が開催されなかったことについて
 2月2日付書面及び同月10日付書面でY2会社が求めた回答は、いずれも、回答がなければ団体交渉の開催に支障を来すと いった事情はうかがわれず、Y2会社は、団体交渉を開催した上で、組合に対し、説明や回答を求めることもできたのであるか ら、Y2会社が、2月2日付書面及び同月10日付書面の回答を待って日程を検討するとして、本件団体交渉申入れに対し、日程 調整を行わず、本件団体交渉申入れについての追加申立てがあり、Y2会社事件の調査が行われた後の5月26日に至るまで、団 体交渉に応じなかったことに、正当な理由を認めることはできず、本件団体交渉に対するY2会社の対応は、正当な理由のない団 体交渉拒否に該当する。
② 救済利益の有無について
 本件追加申立て後の平成28年5月26日に団体交渉が行われたことや、その後の本件結審時までの団体交渉の状況等を考慮し ても、前記①の団体交渉拒否によって生じた状態が既に是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されているとは認められず、 本件団体交渉申入れに係る救済利益が失われたということはできない。
5 本件社内報について
 支配介入に当たる内容と同様の記事や、掲載の必要性が見いだし難い、組合加入をちゅうちょさせる内容の記事を掲載し、Y1 会社らの全従業員の自宅に送付し同居人にも広く知られる状況にしたのは、当時の労使関係を考慮すると、Y1会社らが、組合の Y1会社らに対する影響力が高まることを懸念し、Y1会社らの従業員の組合加入を抑制し、組合のY1会社らにおける影響力を 減殺することを狙ったものとみざるを得ない。
 このようなY1会社らの行為は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。 
掲載文献   

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