事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成28年(不)第7号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成29年8月29日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、被申立人が、①業務中に物損事故を起こした組合員に対
し、フォークリフトオペレーターに復帰させなかったこと、②当該組合員の職務変更に係る平成27年9月30日の団体交渉にお
いて不誠実な対応をしたこと、③当該組合員が申立人組合に加入したことの疎明がない等を理由に組合員の職務変更に係る団体交
渉の拒否及び引き延ばしを行ったことが、不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対
し、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなけれ
ばならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社
代表取締役 B1
当社が貴組合に対し、貴組合員A2氏が貴組合員に加入したことの疎明を求めたことは、大阪府労働委員会において、労働組合
法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点1(会社が、平成27年8月13日以降、A2組合員を
フォークリフトオペレーターに復帰させないことは、組合員故の不利益取扱いに当たるか。)について
A2組合員は職務変更に伴い、職務給が1万9,000円減額されたままとなっており、経済上の不利益があったといえる。
会社が、A2組合員について、短期間に4件の事故を起こしたことを理由に、A2組合員がフォークリフトの運転について、適
格性を欠き能力が不足していることが明らかである旨主張するには理由があり、職務変更したことが合理性を欠くとはいえない。
また、平成27年8月13日以降、A2組合員のフォークリフトの運転について、適格性が改善されたとの疎明はなく、会社が
A2組合員の職務変更を継続していることは、合理性を欠くとはいえない。
平成22年9月27日、フォークリフトオペレーターであったC1は事故を起こし、同年10月7日に安全研究会が開催された
こと、同23年2月1日、会社はC1をフォークリフトオペレーターから一般作業員に職務変更し、その後C1はフォークリフト
オペレーターに復帰していないことなどが認められる。
以上のことからすると、安全研究会及び惹起者講習会を経て間もなく原職復帰するのが通例であったとまではいえない。また、
そのほか原職復帰するのが通例であると認めるに足る疎明も無い。
したがって、会社がA2組合員をフォークリフトオペレーターに復帰させないことは、合理性を欠くとはいえず、また、安全研
究会及び惹起者講習会を経て原職復帰するのが通例であったとまではいえない以上、会社が平成27年8月13日以降、A2組合
員をフォークリフトオペレーターに復帰させないことは、A2組合員が組合に加入し、9.30団交を行ったことをもってなされ
たとはいえないのであるから、組合員故の不利益取扱いとはいえず、この点に係る組合の申立を棄却する。
2 争点2(9.30団交における会社の対応は不誠実団交に当たるか。(1)安全研究会の出席者であるB7課長及びB8課長
を出席させなかったこと、及び(2)A2組合員について、現時点ではフォークリフトオペレーターへの再乗務は考えていない旨
述べたこと。)について
(1)9.30団交において、会社が、安全研究会の出席者であるB7課長及びB8課長を出席させなかったことについて
9.30団交の議題は、結局のところ、平成27年6月1日にA2組合員の職務が変更されたことについてであったといえ、会
社が当該団交議題についてのやり取りから、3.3安全研究会当日の進行方法や議論の内容等が団交のテーマになることを予測し
てB7課長及びB8課長を9.30団交に出席させる対応をすることは困難であったと認めるのが相当である。
また、会社は組合に対し、団交開催以前に団交出席者を9.25会社回答書で通知しており、組合は9.30団交にB7課長及
びB8課長が参加しないことを認識できる状況にあったところ、9.25会社回答書を受け取った後、9.30団交開催までに会
社側の団交出席者について要請や抗議をしたと認めるに足る疎明もない。
そうすると、9.30団交に、3.3安全研究会に出席していたB7課長及びB8課長が出席していなかったことをもって、会
社の対応を不当であったとまではいえない。
したがって、会社が9.30団交に安全研究会の出席者であるB7課長及びB8課長を出席させなかったことは、不誠実である
とはいえず、この点に係る組合の申立てを棄却する。
(2)9.30団交において、会社が、A2組合員について、現時点ではフォークリフトオペレーターへの再乗務は考えていない
旨述べたことについて
9.30団交において、会社は組合に対して、A2組合員の職務変更の理由、賃金に係る認識、職務変更されたほかの従業員の
過去の事例、職務変更の判断基準を説明し、組合の質問に対し一定回答した上で、A2組合員の再乗務は考えていない旨回答した
といえる。
また、会社の回答が組合の意向に沿わないとしても、そのことのみをもって9.30団交において会社が結論ありきの回答に固
執したとはいえない。
そうすると、会社が、A2組合員について、現時点ではフォークリフトオペレーターへの再乗務は考えていない旨述べたこと
は、組合の質問に対し、一定の回答をした上のことであるから団交をする前から対応を決めていたとまではいえないのであって、
不誠実に当たらず、この点に係る組合の申立てを棄却する。
3 争点3(会社の組合に対する以下の行為は、支配介入に当たるか。(1)A2組合員が申立人組合に加入したことの疎明を求
めたこと、及び(2)交渉人数を双方4名以内とし、交渉5日前までに双方の役職及び氏名の交換を求めたこと。)について
(1)会社が、A2組合員が申立人組合に加入したことの疎明を求めたことについて
会社がユニオン・ショップ制をとっていたとしても、労働者が複数の労働組合に加入することを妨げるものではない。また、誰
を組合員とするかは、労働組合が決すべきことであるところ、組合は、現にA2組合員の労働条件について8.12団交申入れを
行った上で、8.21会社回答書、8.26会社回答書を受け、A3書記長及びA2組合員は、会社弁護士事務所の事務員に対し
て、8.27組合抗議書を手渡すとともに、A2組合員の運転免許証も提示し氏名を明らかにしている。それにもかかわらず、会
社は、その後も、9.4会社回答書及び9.7会社回答書で、殊更、A2組合員が組合の組合員であることの疎明に固執し、組合
からの再三の開催要求に応じず、結果として、8.12団交申入れから約1か月間、団交の日程調整等がなされず団交が開催され
なかったのであるから、この間の会社の対応は、団交開催を遅延させ、組合運営を妨害する行為であったといえる。
したがって、会社が、A2組合員が申立人組合に加入したことの疎明を求めたことは、組合活動を妨害し、支障をもたらす行為
といえ、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(2)交渉人数を双方4名以内とし、交渉5日前までに双方の役職及び氏名の交換を求めたことについて
団交開催日は、9.7会社回答書及び9.9組合回答書のやり取りにおいて、同月30日とすることが決まり、予定どおりその
日に開催されているのであって、団交開催予定日までの間に交渉人数や役職及び氏名の交換について調整を行ったことにより、団
交開催を遅延させ、組合連営を妨害したとはいえない。
したがって、会社が、交渉人数を双方4名以内とし、交渉5日前までに双方の役職及び氏名の交換を求めたことは、組合活動を
妨害し、支障をもたらした支配介入に当たるとはいえず、この点に係る組合の申立てを棄却する。 |
掲載文献 |
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