労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第53号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年8月18日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①A2組合員の戒告処分に係る通知書を校内に掲 示したこと、 ②A2組合員及びA3組合員に対し年次有給休暇の取得を認めなかったこと、 ③A3組合員の子の退園届の撤回を受け入れなかったこと、 ④A3組合員の休業に対する賃金保障等に関する平成27年5月13日付け団体交渉申入れ等に応じなかったこと、 ⑤その後に開催された団体交渉において交渉事項を限定したこと、 ⑥当該団体交渉においてA2組合員の組合加入について非難する旨の発言を行ったこと、 が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、 ④⑤について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなけれ ばならない。

年  月  日
 組合
  委員長 A1 様
会社            
代表取締役 B1

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為と認められました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。


(1)貴組合から平成27年5月13日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったこと。
(2)貴組合から平成27年7月15日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったこと。
(3)平成27年8月13日に開催された団体交渉において、貴組合員A2氏の問題に限る旨、その他について今日は話合いをし ない旨発言したこと。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 争点1(会社が、平成27年8月31日に、27.8.31通知 書を校内に掲示したことは、組合員故の不利益取扱いに当たるか)について
 27.8.31通知書の掲示により、A2組合員は、同僚等の間での社会的信用が低下し、名誉が傷つく恐れなどの精神的苦痛 を受けたであろうことが推認され、精神的な不利益があったといえる。
 しかし、これまで掲示された2件の事例がいずれも組合員に対してなされたものであったとしても、それ以外の事例として懲戒 等の処分を受けていながら掲示がなされていない非組合員である従業員が存在していたとの主張も疎明もない以上、これらの事実 のみをもって、組合加入に対する報復として、27.8.31通知書の掲示が行われたとまで認めることは困難である。
 したがって、会社が、27.8.31通知書を校内に掲示したことは、組合員故の不利益取扱いといえず、この点に係る組合の 申立ては棄却する。
2 争点2-1(会社が、A2組合員の平成27年9月25日から同年10月21日までの17日間の有給休暇の申出に対し、2 日間を除き有給休暇を認めなかったことは、組合員故の不利益取扱いに当たるか。)及び争点2-2(会社が、A3組合員の平成 27年6月1日から同月19日までの15日間の有給休暇の申出に対し、5日間を除き有給休暇を認めなかったことは、組合員故 の不利益取扱いに当たるか。)について
 会社では、職員は当該年度において年次有給休暇の取得日数のうち5日のみ自由に有給休暇を取得することができ、それ以外の 有給休暇取得日については、会社が計画的に付与し取得させる制度を運用していたということができる。
 A2組合員が17日間の有給休暇を求めた時点で、同組合員が取得できる有給休暇の残日数は、2日問であったといえる。ま た、A3組合員の15日間の有給休暇の申出に対しても、同様に、本来認められうる有給休暇は5日問であったといえる。
 以上のとおりであるので、会社が、A2組合員の17日間の有給体暇の申出に対し、2日間を除き有給休暇を認めなかったこと 及びA3組合員の15日間の有給休暇の申出に対し、5日間を除き有給休暇を認めなかったことは、組合員故の不利益取扱いには 当たらず、この点に係る組合の申立てを棄却する。
3 争点3(会社が、A3組合員の子の26.7.30退園届の撤回を受け入れなかったことは、組合員故の不利益取扱いに当た るか。)について
 会社は、A3組合員の26.7.30退園届を受けて、既に別の子どもの入園を決めているのであるから、組合が 26.12.15要求書を提出した時点でキンダーBクラスにA3組合員の子を受け入れる余裕があったとみることはできず、受 け入れなかった取扱いには合理的な理由があるといえる。そのほかに会社がA3組合員の子の26.7.30退園届の撤回を受け 入れなかったことに組合嫌悪意思があったと認めるに足る疎明もない。
 したがって、会社が、A3組合員の子の26.7.30退園届の撒回を受け入れなかったことは、組合員故の不利益取扱いとは いえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
4 争点4(会社は、27.5.13団交申入れを拒否したといえるか。拒否したといえる場合、会社が同団交申入れを拒否した ことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
 組合は会社に対し、27.4.1要求書を提出し、A3組合員の休業に対する賃金保障等を議題とする団交を申入れしているこ と等が認められ、従前からの一連の経緯からみれば、27.5.13団交申入書を受け、会社は組合が当該要求事項についても団 交を申し入れているということを容易に認識できる状況であったとみるのが相当である。A3組合員の休業に対する賃金保障等が 議題となっているのであるから、これは組合員の労働条件に関わるものであり義務的団交事項に当たるといえ、会社は団交に応じ る義務がありながら、これに応じなかったものといえる。
 会社は、27.5.13団交申入れを正当な理由なく拒否したとみることができ、当該行為は、労働組合法第7条第2号に該当 する不当労働行為である。
5 争点5(会社は、27.7.15団交申入れを拒否したといえるか。拒否したといえる場合、会社が同団交申入れを拒否した ことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
 27.7.15団交申入書において、組合は会社に対して、有給休暇の計画的付与制度に関する説明等を求めて団交を申し入れ ているといえるところ、当該議題は、労働条件に関わることであり、義務的団交事項に当たることは明らかである。会社は、当該 事項について書面で一定回答はしているものの、その後に団交において組合に対し、有給休暇の計画的付与制度について説明した と認めるに足る疎明もないのであるから、会社は27.7.15団交申入れに対し、団交を拒否したといえる。
 また、27.5.13団交申入書においては、A3組合員の休業に対する賃金保障等の義務的団交事項に係る交渉が求められて いることは会社が容易に認識できたにもかかわらず、団交が開催されていないと認められるのであるから、同様に、 27.7.15団交申入書に記載されている「継続中の要求事項」が不明確な状態にあったとはいえず、組合から27.7.27 御連絡に対応した要求事項の具体的な提示がなかったことをもって、会社が団交に応じなかったことの正当な理由として認めるこ とはできない。
 以上のことから、会社は、27.7.15団交申入れを正当な理由なく拒否したとみることができ、当該行為は、労働組合法第 7条第2号の不当労働行為に当たる。
6 争点6(27.8.13団交において、会社が、A2組合員の問題に限る旨、その他について今日は話合いをしない旨発言し たことは、不誠実団交に当たるか。)について
 会社は、要求内容については弁護士が分かっている旨述べて、交渉事項はA2組合員の問題に限る旨、その他について今日は話 合いをしない旨発言しており、このような会社の態度は、組合の要求に主体的に対応する姿勢が欠けており、自らの都合で一方的 に交渉事項を限定し、それ以外の事項についての交渉を拒否したものといえ、組合の主張や質問に対し、合意が得られることを目 指して、誠意をもって当たったとはいえず、不誠実な対応であったというのが相当である。
 よって、27.8.13団交において、会社が、A2組合員の問題に限る旨、その他について今日は話合いをしない旨発言した ことは、不誠実団交にあたり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
7 争点7(27.8.13団交において、会社がA2組合員に対し、あなたは物事を複雑にしている旨、あなたはここに行った 旨発言したことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 B2従業員の発言については、そもそも意味も明確ではないうえ、これが団交のやり取りの一部であることや、B2従業員はス クールカウンセラーであり、交渉権や決定権を持つ立場ではないこと、B2従業員の発言後に会社側出席者であるB7が、A2組 合員が組合に加入する権利がある旨を発言していること、などを併せ考えると、B2従業員の当該発言が会社の意を体してなされ たものとはいえない。そうであれば、当該B2従業員の発言が、会社の行為として支配介入に当たるような組合非難であるとまで みることはできない。
 そうすると、27.8.13団交において、会社がA2組合員に対し、あなたは物事を複雑にしている旨、あなたはここに行っ た旨発言したことは、組合に対する支配介入に当たらず、この点に係る組合の申立てを棄却する。 
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