労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成28年(不)第42号
凸版印刷不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年7月4日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   A2に対する平成28年4月1日付けで異動する命令(以下「本件配転命令」という。)の撤回、パワハラの是正等を議題とする団体交渉を組合が平成28年3月31日に申し入れたところ、同日、会社は本件配転命令を撤回した。平成28年4月5日、組合は、再度、本件配転命令の撤回の経緯等を議題とする団体交渉を申し入れたが、本件結審日(平成29年4月21日)に至るまで、会社は団体交渉に応じていない。
 本件は、平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉を会社が拒否したことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、団交応諾、文書の交付・掲示を命じた。  
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が、平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉について、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルx80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。

年  月  日
 組合
  中央執行委員長 A1 殿
会社          
代表取締役 B1

 当社が、貴組合が平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
 
判断の要旨  1 申立人組合が労働組合法上の労働組合に当たるか否か
 組合自体が労働組合法上の労働者が主体となって構成されていれば、本件のように、当該使用者に雇用されている者が少数であったとしても、主体の点で労働組合法上の労働組合該当性が問題となることはない。
2 会社が、組合が平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉を拒否したことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か
① 会社は、団体交渉申入れに対する回答猶予を求めた上で、文言上は「当面」の間としつつも、簡易、迅速な連絡手段である電話や面談を一切拒否し、A2の組合加入及び組合が労働組合法上の労働組合であることを組合が説明し繰り返し団体交渉を申し入れているにもかかわらず、会社として組合に具体的事実関係の釈明を求めることなく、団体交渉を申し入れる「根拠」を示すよう書面にて繰り返し求め、団体交渉応諾の意向やその条件について1か月以上にわたり明確に回答していない。
 会社の上記一連の対応をみると、会社は、組合に対して形式的な質問を繰り返すことにより、組合からの団体交渉申入れに対する回答を理由なく先延ばしにし、開催日時、場所等、団体交渉応諾についての回答を避け続けているものといわざるを得ない。
 会社は、団体交渉を拒否していないなどと主張するが、このような会社の対応は、組合が平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉の拒否に当たることは明らかである。
② 会社は、団体交渉を拒否したことに正当な理由があったとも主張している。
ア 本件配転命令の撤回経緯については議題となっていないとの主張について
 組合が会社に送付した4月5日付送信書には、本件配転命令撤回については基本的に解決されたが、本件配転命令の撤回経緯について「どのような理由で撤回されたのか説明を受ける必要があると思っております。」との記載がある。そのため、組合が本件配転命令の撒回経緯について団体交渉の議題とする意向であることは、同書面の文言から明らかに読み取ることができる。したがって、会社の主張は、採用することができない。
イ パワーハラスメントの是正及びヘルプラインの不正性が、いずれも義務的団交事項に当たらないとの主張について
 B4部長は、B2部長のA2に対するパワハラの件について、A2と直接面談し、東京労働局におけるあっせん手続にも参加しているのであるから、会社として、3月31日付団体交渉申入書で議題とされていた「パワーハラスメントの是正」が、A2がB2部長からパワハラを受けたとする件及び本件配転命令のことであると認識していたことは明らかである。また、3月31日付団体交渉申入書には、ヘルプラインの問題点に関する具体的事実の記載はないが、ヘルプライン制度の問題点を指摘し、その改善を求めることが、労働者の待遇に関する事項であることは明らかであり、会社が、議題の抽象性から団体交渉に応じ難いと考えたのであれば、具体的にどのような問題であるかを事前に組合に質すなどすべきところ、会社はそのような対応も行っていない。したがって、会社の主張は、採用することができない。
ウ C1労組との二重交渉のおそれがあったとの主張について
 A2は、C1労組と組合の両方に加入していたが、組合の3月31日付団体交渉申入書には、C1労組がB2部長のA2に対するパワハラについて「扱わない」こととしたため、A2が組合に加入した旨の記載があり、また、C1労組が、会社に対し、組合が提示した議題について団体交渉を申し入れたことはなく、会社が組合及びC1労組に対して交渉権限の有無を質問したり、その調整を求めたりしたこともなかった。したがって、会社の主張は、採用することができない。
エ 組合の交渉態度が不誠実主張について
 組合は、A2が組合に加入したこと及び組合が労働組合法上の労働組合であることを説明しており、一方、会社は、組合の団体交渉における適格を疑問視するような具体的根拠を何ら有していないにもかかわらず、漠然と組合に対して団体交渉の開催を求め得る根拠を示すよう求めただけであり、会社が組合との団体交渉に応ずべき立場にあったことは明らかである。会社の主張は、採用することができない。
オ なお、会社は、組合の団体交渉申入れに対し、組合が提示した議題の具体的な内容が不明であることや、二重交渉のおそれがあること等を何ら指摘していない。使用者が組合の団体交渉申入れ事項等に疑問を抱いたとしても、それが直ちに団体交渉を拒否する正当な理由となるものではなく、議題の具体的な内容や、労働組合間の交渉権限の配分等を組合に問い合わせるなどして疑問の解消に努める必要があり、そのような対応もせずに、本件申立て後に、いわば後付けで主張したという点においても、団体交渉を拒否したことに正当な理由があったとの会社の主張は、採用することができない。
③ 以上のとおりであるから、会社が、組合が平成28年3月31日及び同年4月5日に申し入れた団体交渉を拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
 
掲載文献   

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