労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成27年(不)第6号
ファルコンエキスプレス等不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1(個人)、会社Y2(「Y2会社」) 
命令年月日  平成29年6月13日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   Y2会社の従業員であったY1は、同社を退職し、屋号をB2とし、自らを代表者として軽貨物の運送業を開始し、Y2会社からの業務を請け負っていた。A2は業務委託契約書(以下「本件規約」という。)に署名し、自らを軽貨物運送の運転手とする業務委託契約をY1と締結した者であり、勤務時間中の交通事故(以下「本件事故」という。)について、Y1及びY2会社から損害賠償を要求されたことなどを理由として、組合に加入した。
 本件は、組合が、Y1及びY2会社に対し、本件事故に係る損害賠償問題や未払賃金等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、Y1及びY2会社ともに応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。
 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(A2は、Y1との関係において労組法上の「労働者」に当たるか否か。)
 労組法上の「労働者」については、同法の目的が労使対等を促進することにより労働者の地位を向上させること、団結権を擁護すること、団体交渉を助成することであることに鑑みると、労働契約を締結し労務を供給する者だけにとどまるものではなく、当事者間の契約形式にかかわらず、労組法第3条の定める「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」に当たるか否かという観点から実質的に判断するべきである。
 A2は、Y1の事業組織に組み入れられており、本件規約は、一方的・定型的な契約内容であった。また、A2が受けていた報酬は、労務提供の対価といえるものであった。この他、A2には業務許諾の自由は事実上なく、業務時間についてY1からの管理を受け、広い意味での指揮監督下にあったと評価でき、Y1との関係においてこのような業務実態にあったA2は、労組法上の「労働者」に該当する。
2 争点②(A2が労組法上の「労働者」に当たる場合、組合の団体交渉申入れに対するY1の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。)
 組合の団体交渉申入れに応じる義務があるにもかかわらず、Y1はこれに応じない旨回答し、さらには訴訟提起されても構わないなどと組合の団体交渉申入れに応じない意思を明確に表明していることからすると、Y1あて団体交渉申入書に対する同人の対応は、労組法第7条第2号の正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。
3 争点③(A2がY1との関係において労組法上の「労働者」に当たる場合、Y2会社は、A2との関係において労組法第7条第2号の「使用者」に当たるか否か。)
 団結権の侵害を排除して正常な労使関係を確立しようとする不当労働行為制度の趣旨・目的に鑑みると、労組法第7条における「使用者」は、現に労働契約の当事者である雇用主に限られるわけではない。雇用主以外の者であっても、①労使関係が存続していた期間の清算されていない労働関係上の問題をめぐって争われている事情が存在する場合や、②当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて、当該労働者との関係において労組法上の「使用者」に該当すると解すべきである。
(1)団体交渉事項②(A2がY2会社を退職したことを証する書面の提出)について
 A2がY2会社を退職したことを証する書面は、Y2会社が退職者たるA2に対して交付すべきものであり、Y2会社とA2の間における労働関係上の清算されていない事項に関するものであるといえることから、当該交渉事項に関して、Y2会社はA2の「使用者」に当たる。
(2)団体交渉事項①(本件事故に係るA2に対する賠償請求の撤回)、③(本件事故に係る賠償請求はY1に行うこと)及び⑤(本件事故に係る話合いの場において、両親から借入れしてでも賠償するようA2に強要したことについて、文書による謝罪と慰謝料の支払いを求めること)について
 A2はY2会社を退職していたにもかかわらず、Y2会社はA2の労働時間を決定し、研修の参加や業務の開始を指示し、業務実施にあっては、A2は対外的にY2会社の従業員であると示すことを求められていたなど、A2がY1の下で就労するようになってからも、Y2会社は、これらのA2の就労条件について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたといえる。
 これらに加え、本件事故は、Y2会社がA2に対して業務への従事を直接指示した配送業務中に生じた事故であるとともに、事故車両の所有者はY2会社であり、また、話合いの場においてA2に賠償を迫ったのも同社であったことから、団体交渉事項①、③及び⑤の解決について実質的に使用者として決定できる地位にあったのは、Y1ではなくY2会社であったことを併せ鑑みると、同団体交渉事項について、Y2会社は団体交渉応諾義務を負うべき「使用者」に当たると解せられる。
(3)団体交渉事項④(A2がY2会社を退職してB2に移ったことによる減収分や平成26年8月及び9月分の業務委託料の支払い)について
 Y2会社が実質的に決定できない事項について、組合が、団体交渉を申し入れた趣旨は不明確といわざるをえず、同団体交渉事項についてY2会社がA2の「使用者」に当たらないことは明らかである。
4 争点④(Y2会社が「使用者」に当たる場合、組合の団体交渉申入れに対するY2会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。)
 団体交渉事項②については、Y2会社は、27.1.26Y2会社返答文書において、離職票は既にA2に送付済みである旨回答しており、さらにこの返答以降、組合がY2会社に対して離職票の交付を求めた事実は審査の全趣旨を通しても認められないことから、同団体交渉事項に関するY2会社の対応が、団体交渉の拒否に当たるとまではいえない。
 Y2会社は、団体交渉事項①、③及び⑤について、組合の団体交渉申入れに応じる義務があるにもかかわらず応じない旨回答し、回答に不満な場合には訴訟提起を勧めるなど組合の団体交渉申入れに応じない意思を明確に表明していることからすると、Y2会社あて団体交渉申入書に対する同社の対応は、労組法第7条第2号の正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。
5 救済の必要性
 Y1あて団体交渉申入書及びY2会社あて団体交渉申入書において組合が申し入れた団体交渉事項中、本件事故に係る損害賠償に関する事項、未払賃金に関する事項及び本件事故に係る賠償の強要に対する慰謝料に関する事項については、A2が提起した別件訴訟において、一部認容判決が下され、確定している。
 また、本件審査手続中に、組合、Y1及びY2会社は、当委員会からの提案に応じ、労使協議を実施している。同協議では、Y1やY2会社のB1社長などが出席のもと、本件団体交渉申入れに係る話合いがなされており、事実上団体交渉が行われたものと認められる。
 さらに、上記労使協議後、本件結審日に至るまで組合が本件に関し、新たな労使交渉の機会を求めた事実は認められない。
 以上のことを併せ考えると、Y1及びY2会社による本件団体交渉の拒否は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるものの(Y2会社については、Y2会社あて団体交渉申入書の団体交渉事項①、③及び⑤に関するものに限る。)、Y1及びY2会社に団体交渉の応諾を命じるまでの必要性は認められないものと判断する。
 
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