概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成20年(不再)第45号
エクソンモービル(自家用車通勤手当改定)不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合 |
再審査被申立人 |
Y1会社(Y2会社承継人) |
命令年月日 |
平成29年7月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、Y2会社が従業員がマイカー通勤を選択した場合の通勤手当の支給方法を、組合との合意を経ることなく、自宅から勤務地までの走行距離に応じて一定の単価を基に算出した金額を支給する制度(自動車通勤手当制度)に変更したことが不当労働行為に当たるとして、申立てがあった事案である。
2 初審東京都労委は、本件申立てを棄却したところ、Xは、これを不服として、再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する |
判断の要旨 |
1 自動車通勤手当制度の経過について自動車通勤手当制度導入の経過についてみると、Y3会社及びY4会社は、Y5会社との事業統合に伴い、上記3社の労働条件を統一する必要性があったことから、経営の選択として、同社の自動車通勤手当制度を導入することを決定したものであって、経営上の必要性に基づく相応の合理性が認められるし、その対象も、Xの組合員のみではなく全従業員を対象として実施されたものであって、Xの組合員をそれ以外の従業員と比較して殊更差別的に取り扱ったものとはいえない。
2 また、Y2は、約2年間にわたり相応の配慮をしながら団体交渉に臨んだものの、Xとの考え方の対立点について折り合いがつかなかったことから、やむなく組合の合意なくXの組合員に対しても自動車通勤手当制度を実施したものであって、交渉の過程において、殊更Xとの合意の成立を阻害するような対応をしたとの事情も認められず、むしろ誠実に団体交渉に臨んでいたといえる。
3 さらに、そもそも通勤手当は、通勤に要する費用を実費弁償する性質のものであるところ、通勤手段が従業員の選択に委ねられている状況の下で、マイカー通勤を選択した者について、自宅から勤務地までの走行距離に応じて一定の単価を基に算出した金額を支給するとの算定基準によること自体が直ちに不合理とはいえず、また、この算定基準の具体的内容が、実費弁償の趣旨から逸脱しているとみられるような事情は、証拠上認められない。
4 以上のことを併せ考慮すると、Xの組合員に対する自動車通勤手当制度の実施は、通勤手当の減額幅が小さいとはいえないこと、結果としてXとの合意なく実施されたことのほか、従前の労使関係の経緯を考慮しても、それだけではXを敵視ないし否認する意図でされたものとはいえず、Xの組合員であるが故をもって行われたものとはいえない。
5 また、Xの組合員に対する自動車通勤手当制度の実施は、Y2がXに対し相応の配慮をしながら誠実に団体交渉を重ねたものの行き詰まりの状態となるに至った後にされたのであって、Xを他の労働組合と比して殊更に差別的に取り扱ったとはいえず、Xの活動や運営等に影響を与えるおそれがあったとするような事実は証拠上認められない。
6 よって、Y2が自動車通勤手当制度を実施したことは、労働組合法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入には該当しない。
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掲載文献 |
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