労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第26号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年6月20日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①平成27年4月16日、配送に携わっている申立人組合員A2及び同A3(両名を併せて「本件組合員ら」)に対し、配送から帰ってきた時点で業務を終わるよう指示(本件業務終了指示)したこと、②同月22日、申立人組合員A2が会社において行った行為(4.22行為)を理由として、同月24日以降同人の就業を禁止したこと、③被申立人代表取締役B1等が申立人組合員に対し、申立人組合の活動に関連した発言をするなどしたことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、本件組合員らを他の従業員と同基準の労働時間で就業させること及び文書手交を命じた。
 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2及び同A3について、他の従業員と同基準の労働時間で、就業させなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
 組合
  委員長A1様
会社           
 代表取締役 B1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 平成27年4月9日及び同月14日、B1が貴組合員A2氏に対し、組合活動を阻害する発言をしたこと(3号違反)。
(2) 平成27年4月16日、貴組合員A2氏及び同A3氏に対し、配送を終えた時点で退社するよう指示し、同日以降、勤務時間を短縮したこと(1号違反)。
(3) 平成27年4月17日及び同月22日、B2が貴組合員A2氏に対し、組合活動を阻害する発言をしたこと(3号違反)。
(4) 平成27年4月17日及び同月18日、B3が貴組合員A2氏に対し、組合活動を阻害する発言をしたこと(3号違反)。
(5)平成27年4月22日、会社内で貴組合員A2氏が行った行為に関し、警察に通報し、被害届を提出したこと(3号違反)。
(6) 平成27年4月24日以降、貴組合員A2氏を就業させなかったこと(1号・3号違反)。
 
判断の要旨  1 会社が、平成27年4月16日に本件業務終了指示を行い、それ以降も当該指示を続けたことについて
(1) 、平成27年4月16日の本件業務終了指示は、本件組合員らが組合に加入し、残業手当の支払を求める等の活動を行ったことを理由になされたものとみるのが相当である。
(2) 本件申立て後の平成28年10月頃には、会社全体の従業員について労働時間が短縮されている可能性は高いが、このことにより平成27年4月16日の本件業務終了指示に問題がないとされるものではない。
(3) 会社が、平成27年4月16日に本件業務終了指示を行い、それにより本件組合員らの労働時間を短縮させたことは、少なくとも、他の組合員について、同程度に労働時間が短縮されるまでの間については、本件組合員らが組合に加入し、組合活動を行うなどした故に、本件組合員らから就業の機会を奪い不利益を与えるとともに、他の従業員から孤立させ、精神的な不利益を与えるものであると判断され、かかる会社の行為は、労働組合法第7条第1号に該当する。
2 平成27年4月24日以降、会社が、A2組合員の就業を禁止したことが組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるかについて
(1) 会社が、4.22行為を契機に、平成27年4月24日以降、A2組合員を就業させなかったことは明らかである。かかる取扱いは、A2組合員に対し職場から排除するという不利益取を課すものである。
(2) 4.22行為については、包丁を持って暴れるという行為があったか自体について疑問であるところ、会社は、これについて、客観的な立場から事実やそれに至る経緯を明らかにする態度を欠いたまま、就業規則に基づかず、A2組合員を職場から排除したと判断される。
 このことに、A2組合員の組合加入後の状況を併せ考えると、平成27年4月24日以降、会社が、A2組合員を就業させなかったことは、A2組合員が組合に加入し、組合活動を行うなどした故の不利益取扱いに当たり、もって組合を弱体化させる支配介入にも当たるとみるのが相当である。
3 27.4.14B1社長の発言等の行為は、会社の組合に対する支配介入に当たるかについて
(1) B1社長の弁護士紹介発言(弁護士を紹介した時点で組合が入ってこれなくなる旨の発言等)、
(2) 27.4.14B1社長発言(B1社長が、未払残業代を支払えと言われて、誰が支払うかとの発言した後、「組合抜きで、組合来ていらんと」等、発言したこと)、
(3) 27.4.17B2取締役発言(B2取締役が、A2組合員に対し、4.16組合文書を投函したか尋ねる等したこと)、
(4) 27.4.17B3会長発言(B3会長が、A2組合員に対し、平成27年4月16日の電話が営業妨害である、同月17日に自宅ポストに書面が投函されたことについて組合を非難する等発言をしたこと)、
(5) 27.4.18B3会長発言(B3会長が、A2組合員に対し、4.18組合文書について、組合等を非難する発言をしたこと)、
(6) 27.4.22B2取締役発言(B2取締役が、A2組合員に対し、子供の通っている学校名を尋ねるなどしたこと)、
は、組合に対する支配介入に当たる。
3 4.22行為について、警察に通報し、被害届を提出したことについて
 会社は、組合活動を継続して脱退慫慂に応じようとしないA2組合員が4.22行為を起こしたことを奇貨として、包丁を持って暴れているとして警察に通報し、被害届を提出したというのが相当で、かかる行為は、会社が、平成27年4月24日以降、A2組合員を就業させなかったことと併せて、同組合員を会社から排除し、組合の弱体化を図ったものと判断されるから、組合に対する支配介入に当たる。
 
掲載文献   

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