労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年(不)第108号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年5月9日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要  1 会社は、組合と締結した、会社の従業員は管理職等一定の職にあ る者を除き、組合員となることを定めた協定(本件ユシ協定)を含む包括的な労働協約(本件労働協約)を改定して、オープン・ ショップ制に移行すること等について組合と5回の団体交渉を行った。
 第5回団体交渉において、組合は組合員の範囲に制限を設けないことを条件にオープン・ショップ制への移行を受け入れる旨を 表明したが、会社が、組合員の範囲を制限する規定(「組合員である者は会社が採用した者に限る」旨の規定及び本件労働協約第 3条第4項の「その他、会社及び組合が適当と認め、協議決定したもの。」を組合員から除外する旨の規定)を残したまま、本件 ユシ協定を解約するという当初の会社提案を維持したため、労使双方は合意に至らなかった。
 また、会社は、団体交渉において合意できた部分についてのみ労働協約を締結することも拒否したため、本件労働協約は失効し た。
2 本件は、会社が、本件労働協約の改定を議題とする団体交渉において、組合が受け入れられない条件を提示することで本件労 働協約の失効に至ったことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案で、東京都労働委員会は、会社に対し、第4回団体交渉 までの間に合意した事項について労働協約の締結を拒否しないこと、新たな合意が成立するまで本件労働協約失効以前と同様の取 扱いをすること並びに文書の交付及び掲載を命じた。  
命令主文  1 被申立人会社は、平成27年8月13日に申立人組合に提示した 労働協約の改定案について、同組合と第4回団体交渉までの間に合意した事項の労働協約の締結を拒否してはならず、また、10 年9月1日締結の労働協約第3条については、新たな合意が成立するまでの間、27年10月31日をもって労働協約が失効する 以前と同様の取扱いをしなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を 会社の社内のポータルサイトに、会社が平成27年11月12日に「労働協約の有効期間満了に関するお知らせ」を掲載したのと 同じ方法で、10日間掲載しなければならない。

(省略)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。  
判断の要旨  1 会社案が組合にとって到底受け入れることができない案であった との組合の主張について
 組合員の範囲は本来労働組合が自主的に定めるものであって、結果的に利益代表者の加入を認めないようになっていればよく、 会社との労働協約で組合員の範囲を定めなければならない必然性はない。
 そして、本件ユシ協定の解約は、新規採用者を自動的に組織化することができなくなるという組合の組織維持に多大な影響を及 ぼすものであり、その上、本件労働協約第3条の組合員の範囲を制限する規定が残っていれば、組合としては、ホールディングス 等で採用し会社に出向扱いとなっている従業員や、これまで非組合員とされていた従業員を組織化することもできず、組合員の減 少の可能性こそあれ、拡大の可能性を絶たれることになる。
 ところが、会社は、組合がこのような多大な不利益を甘受しなければならない合理的な理由を何ら説明していないのであるか ら、組合が会社の提案を受け入れられなかったことは無理からぬことである。
2 結論
(1) 23年に役員体制が変わって以降、会社は、組合が会社の経営改善の障害となっているとのB2会長及びB1社長の認識 の下に、組合に対してそれまでの協調的な姿勢を改めるとともに、24年度以降、新規採用を通じて、組合員の減少を図る措置を とっていた。
(2) ①20年間特に支障なく継続してきた本件ユシ協定を解約する合理的な理由はそもそも認められないこと、②組合が本件 ユシ協定の解約に反対する理由を丁寧に説明し、条件によってはオープン・ショップ制を受け入れるとの大幅な譲歩を示したのに 対し、会社は、組合が解約に伴う多大な不利益の受入れを納得できるだけの十分な理由を何ら説明しないまま、本件ユシ協定を解 約しても、組合員の範囲を制限する規定を残すという、本来使用者が介入すべきではない条件を維持して譲らず、それに固執した こと、③会社が、合理的な理由がなく部分合意を拒否し、第3条について合意しない限り本件労働協約全体を失効させるとの姿勢 を固持したこと、などの会社の一連の対応全体をみれば、会社は、組合に多大な不利益を与える会社案を当初の提案どおり実現す ること、又は本件労働協約全体を失効させることにより、組合の弱体化を企図したものと評価せざるを得ない。
(3) したがって、会社が、組合に対し、本件ユシ協定を解約するが、組合員の範囲を制限する規定は維持するという、組合が 受け入れられない労働協約の改定案を提示し、その条件に固執した結果、本件労働協約の失効に至ったことは、組合運営に対する 支配介入に該当する。  
掲載文献   

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