労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  広労委平成28年(不)第1号
安全運輸不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成29年4月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、Y1会社が、①広島県トラック厚生年金基金の解散に伴う脱退一時金又は選択一時金の受給手続き及び退職後の新たな雇用先に関する事項について、平成(以下、命令本文を除き「平成」の元号は略する。)21年12月17日組合結成通知に伴う確認事項に反し、組合と事前協議しなかったこと及び当該基金の解散に係る事項の説明を、労働者代表である組合A4分会のA5分会長に行わなかったこと、②一時金を受給するために退職した非組合員を被申立人Y2会社に雇用させる一方、同じく退職したA2組合員及びA3組合員に対し、有期雇用及びY2への雇用に関する説明を行わず、雇用機会を与えなかったこと、③27年10月29日及び11月9日に行われた、広島県労委27年(不)第4号不当労働行為救済申立事件の和解協議の場において、組合がY2会社に対する説明を求めたのに対し、会社が、不誠実な対応をしたこと、④25年7月20日付け組合員の継続雇用に関する覚書を無視し、A5分会長を、定年退職後に嘱託社員として継続雇用することを拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件である。
 広島県労働委員会は、Y1会社に対し、申立人組合員の労働条件に係る事前協議、A2及びA5が希望する場合の嘱託社員としての再雇用、A2及びA3に対するバックペイ、文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人Y1会社は、今後、申立人組合員の労働条件に関わる事項については、平成21年12月17日付け組合結成通知に伴う確認事項に基づき、申立人と事前の協議を行わなければならない。
2 被申立人Y1会社は、申立人組合員A2が希望すれば、同人を、1年間、嘱託社員として雇用しなければならない。なお、その際の労働条件については、申立人と協議のうえ、速やかに決定しなければならない。
3 被申立人Y1会社は、申立人組合員A2に対し、同人の退職の日の翌日から、同人が引き続き雇用されていれば定年退職することとなっていた日までの賃金(退職前3か月の賃金の1か月当たりの平均額を1か月分の賃金相当額として計算した額。)の6割に相当する金額を支払わなければならない。
4 被申立人Y1会社は、申立人組合員A3について、退職後の雇用に関して非組合員と同様に取り扱わなければならない。
5 被申立人Y1会社は、申立人組合員A3に対し、同人の退職の日の翌日から、前項により雇用される日の前日までの賃金(退職前3か月の賃金の1か月当たりの平均額を1か月分の賃金相当額として計算した額。)の6割に相当する額を支払わなければならない。
6 被申立人Y1会社は、申立人A4分会長A5が希望すれば、同人を、1年間、嘱託社員として雇用しなければならない。なお、その際の労働条件については、申立人と協議のうえ、速やかに決定しなければならない。
7 被申立人Y1会社は、本命令書受領の日から2週間以内に、下記の文書を申立人に交付するとともに、縦1メートル、横1メートルの大きさの白紙に明瞭に記載し、会社事務所正面玄関の従業員の見やすい場所に30日間掲示しなければならない。
(省略)

8 申立人の被申立人Y1会社に対するその余の申立てを棄却する。
9 申立人の被申立人Y2会社に対する申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 Y1会社が組合に対し、基金の解散に係る事項について、21年確認事項第4項に基づき事前協議しなかったことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1)
 基金の解散に係る事項のうち、一時金の受給に関連する脱退後の新たな雇用先については、事前協議の対象である「組合員の労働条件に関わる事項」に該当するため事前協議を行うべきところ、Y1会社が組合に対し、正当な理由なく事前協議しなかったことは、労働協約の趣旨を没却させ、労働組合の存在意義を無視するものといい得るから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
2 Y1会社が、一時金を受給するA2組合員及びA3組合員に対し、Y2会社への雇用に関する説明をしなかったために、退職後にY2会社への雇用の機会を与えなかったことは、労働組合法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2)
 Y1会社が、A2組合員及びA3組合員に必要な説明を行わず、退職後にY2会社への雇用の機会を与えなかったことは、A2組合員及びA3組合員が組合員であることを理由として行った不利益取扱いであると判断するのが相当であり、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
 また、Y1会社の上記対応により、A2組合員及びA3組合員はY1会社から排除され、従来のように、Y1会社内で組合活動を行うことができなくなったのであるから、組合の弱体化につながり、同条第3号の不当労働行為に該当する。
3 27年10月29日及び11月9日、組合がY2会社の設立に伴う雇用労働条件についての説明を求めた際の会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点3)
 本件和解協議は団体交渉に該当するとはいえないから、その余について検討するまでもなく、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
4 会社が、A5分会長を嘱託継続雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点4)
 Y1会社が、A5分会長を正当な理由もなく嘱託継続雇用しなかったことは、A5分会長が組合員であること及び組合活動を行ってきたことを理由とした不利益取扱いと認められ、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
 また、A5分会長を嘱託継続雇用しなかったことは、A5分会長をY1会社から排除することによって、分会の活動を弱体化させるものと認められ、加えて、労働協約である25年覚書を会社が遵守しなかったことは、労働組合の存在を無視するに等しい行為と認められ、その弱体化を企図するものといいい得るから、同条3号の不当労働行為に該当する。
5 その余の申立人の主張について
 組合は、Y2会社について、Y1会社の100パーセント出資の子会社であることや、退職者を雇用し、同時にY1会社に出向させていることなどから、実質的には、Y1会社と一つの経営体を構成しており、全ての争点において、Y1会社の行った不当労働行為について、使用者としての責任があると主張する。
 しかし、Y2会社は、社員全員が会社の出向していることは認められるものの、Y1会社とY2会社が一つの経営体を構成していることについての疎明はなく、いずれの争点についても、Y2会社に使用者としての責任があると認めることはできない。  
掲載文献   

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