労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第44号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年5月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、
① 会社会長が、平成26年7月19日の全体会議において、他の会社を引き合いに組合に対する支配介入発言、組合脱退や退職勧奨発言を行うとともに組合への誹謗中傷を行う文書を配布したこと、
② 会社が、平成26年10月21日及び28日、賃金体系、年金打切問題等について団交交渉の開催を求める組合に対し、団体交渉を引き延ばすとともに、あっせん申請をしたことを理由に団体交渉は不必要としたこと、
③ 組合の、平成27年4月18日の春季団交要求書に対し、同年5月14日の回答書において、文書をもって団体交渉とする旨の回答を行い、団体交渉を拒否したこと、
④ 平成26年12月26日.会長が従業員に配布した「中小企業の労使関係と賞与の支払いについて」と題する文書の一部撤回を、平成27年3月18日の団体交渉において約束したにもかかわらず、約束を履行しないこと
等が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年  月  日
 組合
  執行委員長 B様
会社          
代表取締役 B

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
(1) 当社が、平成26年7月19日の全体会議において、従業員に対し、貴組合を批判する内容の発言を行ったこと(3号違反)。
(2) 当社が、平成26年8月18日の団体交渉で、次回の団体交渉を同年9月末に開催する旨約束したにもかかわらず、団体交渉の開催を引き延ばしたこと及び同年10月28日付け文書で団体交渉開催を拒否したこと(2号違反)。
(3) 当社が、平成26年12月26日、「中小企業の労使関係と賞与支払いについて」と題する文書を従業員宛てに配布したこと(3号違反)。
(4) 当社が、平成27年3月18日の貴組合との団体交渉において、「中小企業の労使関係と賞与支払いについて」と題する文書の一部撤回に同意したにもかかわらず、その約束を履行しなかったこと(2号違反)。
(5) 当社が、貴組合員A2氏との間で、定年後の継続雇用について平成27年1月30日、同年2月7日、同月27日にそれぞれ面談し、当該面談において、同氏に対し、退職勧奨を行ったこと(1号及び3号違反)。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(26.7.19会長演説は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 会長が、26.7.19会長演説において、①民事再生となった物流会社の資料を配付した上で、労働組合の要望したベースアップ等が団交において満額回答で通ったところ、その後その会社は民事再生になった旨発言したことは労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当しないが、②企業が倒産したとき労働組合は守ってくれるのか等発言したことは、同7条第3号の不当労働行為に該当する。
2 争点2(平成26年10月21日及び同月28日の会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 平成26年10月21日及び同月28日の会社の対応は、協議が継続中の、義務的団交事項に係る団交申入れについて、正当な理由なく団交を引き延ばした上に、26.10.28回答書で正当な理由なく団交開催を拒否したものといえるから、こうした会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 争点3(会社が、平成26年12月12日に岸和田労働基準監督署に対し、就業規則の届出を行ったことは、A2組合員に対する不利益取扱いに当たるか。)について
 会社が、平成26年12月12日に岸和田労働基準監督署に届け出た新就業規則の定年条項の変更が会社の従業員にとって不利益な変更であるとしても、このことをもって直ちにA2組合員に対する不利益取扱いには該当しない。
 新就業規則の定年条項が、A2組合員に対しては適用されていないことが認められる一方で、A2組合員が就業規則の届け出により特段の不利益を受けたと認めるに足る事実の疎明はない。
 したがって、会社が、平成26年12月12日に岸和田労働基準監督署に就業規則の届出を行ったことは、A2組合員に対する不利益取扱いには該当しない。
4 争点4(会社が、26.12.26会長文書を配布したことは、労働組合法第7条第1号及び第2号、第3号及び第4号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 会社が、26.12.26会長文書を配布したことは、使用者が許される表現の自由の範囲を逸脱し、組合員を威嚇し、組合活動を殊更誹謗中傷する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するが、同条第1号、第2号及び第4号の不当労働行為には該当しない。
5 争点5(27.3.18団交における会社の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
 27.3.18団交において、会社が、26.12.26会長文書のうち組合が撤回を求めている箇所を文書で撤回することに同意したことについて、27.4.7グループ通信において、約束を履行したとはいえないから、会社の対応は、不誠実であったと言わざるを得ず、労働組合法第7条第2号に該当する。
6 争点6(会社が、組合に対し、27.5.14回答書を送付したことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 義務的団交事項を含む27.4.18春季団交要求書に対し、会社は、約1か月後に27.5.14回答書を送付し、「この回答を持って団交と致します」と回答したことについて、組合が団交を拒否されたと受け止めたとしても無理からぬところがある。しかし、当該回答書には、問題があれば、後日打合わせの上日程調整を行う旨も併せて記載されており、会社が、当該回答書によって団交を拒否したとまでは、直ちにみることができない。
 また、組合が、27.5.16返答書によって、団交開催を改めて要求したことに対して、会社は、間をおかず回答し、団交に対応可能な候補日を提案する等して、最終的には組合の要求した日時で団交が行われていることから、27.4.18春季団交要求書に対し27.5.14回答書を送付した会社の対応が不誠実であったとまではいえない。
 したがって、会社が組合に対し、27.5.14回答書を送付したことは、労組法第7条第2号に該当しない。
7 争点7(平成27年1月30日、同年2月7日及び同月27日のA2組合員と会社との間でのやり取りにおける会社の対応は、労組法第7条第1号、第3号及び第4号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 27.1.30面談、27.2.7面談及び27.2.27面談における会長のA2組合員に対して執拗に退職を求める発言は、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するが、同条第4号の報復的取扱いに該当するとまではいえない。
8 争点8(平成27年7月1日に、会社が、A2組合員の接触事故に関し、始末書の提出を求める譴責の懲戒処分の通知を行ったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)について
 A2組合員が発生させた事故の前後約3年間の、A2組合員以外の従業員による3件の物損事故に対して、会社が、懲戒処分の通知を行い、始末書の提出を求めていること、懲戒処分の量定もA2組合員と同じであることが認められる。
 したがって、会社が、A2組合員に対し、27.7.1通知書によって始末書の提出を求めたことは、A2組合員を組合員であるが故に殊更に不利益に取り扱ったものとみることはできない。  
掲載文献   

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