概要情報
事件番号・通称事件名 |
群労委平成28年(不)第5号 茶屋四郎次郎記念学園不当労働行為審査事件
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申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
法人Y(「法人」) |
命令年月日 |
平成29年4月7日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、平成28年6月10日付け団交申入書による団交申入れ(6.10申入れ)、同年7月5日付け団交申入書による団交申入れ(7.5申入れ)により組合が申し入れた①組合員A2の秋学期の授業計画を早急に決定すること(要求事項1)及び②常勤教職員を無期雇用契約とすること(要求事項2)対して、A2が別件に係る裁判上の和解に違反したことを理由として団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
群馬県労働委員会は、法人に対し、裁判上の和解に違反していることを理由とする団交拒否の禁止及び文書交付を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人から団体交渉の申入れがあったときは、申立人の組合員A2が東京地裁平成27年(ワ)第19831号における裁判上の和解に違反しているとの理由で、これを拒否してはならない。
2 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、次の内容の文書を申立人に交付しなければならない。
年 月 日
組合
委員長 A1殿
法人
理事長 B
当法人が、貴組合から平成28年6月10日付け及び同年7月5日付けで申し入れのあった当法人に勤務する常勤教職員を無期雇用契約とすることに関する団体交渉において、何ら理由を示すことなくこれを拒否したことは、群馬県労働委員会において不当労働行為であると認定されました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
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判断の要旨 |
1 団交拒否の有無について
法人は、団体交渉を拒否していないと主張するが、法人は、組合による2回の団体交渉の申入れに対し、応じる意向を有していると述べているものの、最初の申し入れから8箇月以上経過した結審時においても、これに応じていないのであるから、この対応は、団体交渉を拒否したものといえる。
2 本件和解拒否を理由とする団体交渉拒否の正当性について
法人は、本件和解条項違反が団体交渉を拒否する正当な理由であると主張するが、
① 本件和解の当事者はA2と法人であり、A2の本件和解条項違反を組合との間の団体交渉拒否の正当理由とすることには合理性がないこと、
② 仮に組合がA2の本件和解条項違反に深く関与していた場合であっても、A2名義のホームページの掲載が団体交渉を実施するための客観的障害になるといった事情は認められず、憲法及び労組法で組合に保障された団体交渉権に基づく要求を拒み得るほどの理由になると認めることができず、組合の要求がいわゆる「禁反言の法理」に反するということもできないこと、
③ A2名義のホームページの記載が本件和解条項違反か否かについては組合及びA2と法人との間で見解の相違がある上、仮にA2に和解条項違反があったとしても法人自体が義務的団体交渉事項に関する団体交渉を拒める合理的関係(いわゆる同時履行の抗弁権)のような関係は認められないこと、
等から、法人の主張は採用できない。
3 要求事項2が義務的団交事項でないことを理由とする団体交渉拒否の正当性について
法人に勤務する常勤職員の組合員はA2以外には認められず、A2は定年までの雇用が確定していること、要求事項2がA2の労働条件に影響を及ぼすとの疎明がないことから、要求事項2が義務的団交事項とはいえないが、法人は、6.10申入れ及び7.5申入れに対し要求事項2が義務的団交事項とはいえないことを団体交渉に応じない理由として組合に回答していない。
組合に回答せず、本件審査手続の中で初めて主張しても、団体交渉に応じない正当な理由とはなり得ない。
4 6.10申入れ及び7.5申入れに対する法人の対応は正当な理由がなく団体交渉を拒否するものであったと認められるので、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
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掲載文献 |
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