労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  群労委平成27年(不)第3号・平成28年(不)第1号
中央タクシー不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年3月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、
① 被申立人会社が平成27年6月13日に、申立人組合の組合員であるA4に運転業務を行わせないと通告し、同月14日に同人を運転業務から内勤に配置転換したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件(群労委平成27年(不)第3号事件)、
② 被申立人会社が、組合の組合員であるA2及びA3に対する同年8月分以降の稼働手当を減額したこと、A4、A2及びA3に対する27年12月支給の賞与を減額したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件(同28年(不)第1号事件)、
の審査を併合した事件で、群馬県労働委員会は、被申立人会社に対し、バックペイ及び文書交付等を命じ、その余の申立てを棄却した。
 
命令主文  1 被申立人は、申立人の組合員A2及び同A3に対する平成27年9月分(同年10月9日支給)以降の稼働手当の減額をなかったものとして取り扱い、同人らに対し、この減額がなかったならば支給されるべきであった各月の稼働手当の額と既に支給した各月の稼働手当の額との差額及びこれらに対する年6分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人の組合員A4、同A2及び同A3に対する平成27年12月支給の賞与の減額をなかったものとして取り扱い、同人らに対し、この減額がなかったならば支給されるべきであった同賞与の額と既に支給した賞与の額との差額及びこれらに対する年6分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。
3 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人に交付しなければならない。
(略)
  
4 被申立人は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(本件配置転換等が、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するか。)について
 本件配置転換はA4の自殺未遂をきっかけとするものであり、A4の状況からして、一旦運転業務を担当させないようにすることは、運行の安全を確保するために必要な対応といえるから、本件配置転換等は、会社の不当労働行為意思によって行われたものとはいえず、労働組合法第7条第1号の不当労働行為には該当しない。
2 争点2(本件稼働手当減額が労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに該当するか)について。
(1) 本件稼働手当減額の合理性
 会社は、稼働手当は就業規則で時間外手当を含むものとされているところ、27年8月13日以降、A2及びA3以外のジャンボ部門乗務員は従前どおり時間外就労をしていたにもかかわらず、両名は時間外就労をしていないので、この場合に両名の稼働手当を減額する取り扱いは就業規則に反しないと主張している。
 会社が、稼働手当を減額したことの合理性及び減額後に支払われた金額の相当性を判断するためには、減額前後におけるA2及びA3の時間外就労時間等、手当別の就労時間や支払うべき金額の比較、他のジャンボ部門乗務員の就労時間と支払金額との関係などを確認する必要があるが、会社が稼働手当を減額したことについて、その合理性を認める足る証拠はなく、会社の主張は認められないことから、本件稼働手当減額には合理的な理由が存在しない。
(2) 不当労働行為意思
① 会社は、本件配置転換等の時点で、A4の組合活動を快く思っていなかったことが窺われる。その後開催された、7.16団交においても、会社には組合を軽視する態度が認められる。
② 8.12団交の後、A4とA2はB3副所長と面会し、8.12団交において36協定が無効でないかとの組合の主張に回答がなかったと問題を指摘し、そうした状況が改善されなければ9時間しか働かないなどと述べた。両名のこの発言の目的は、就労時間の正常な管理とそれに見合った時間外手当の支払いを求めることであり、併せて36協定の成立過程の問題を指摘したものである。
 会社にあっては、ジャンボ部門乗務員の就労時間の管理が十分にされていたとは認められず、時間外手当の支払も法律に従っているとは思えない状況にあり、更には7.16団交においてB4部長が36協定の労働者代表は同人が指名した旨述べていることから両名の指摘には相当の理由がある。
 それにもかかわらず、会社は、そのような会社自体の問題点には何ら対処することなく、両名の上記発言をとらえて稼働手当を減じたのであって、その対応は、組合に対する嫌悪感を背景に、その活動を妨げるためにしたものであり、本件稼働手当減額は不当労働行為意思に基づくものと判断することができる。
(3) 結論
 A2とA3に対し稼働手当を減額したことには合理性はなく、その動機は、会社が組合や組合員に対する批判的な感情の下、その活動を抑制するために行ったものと判断できる。
 したがって、本件稼働手当減額は、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(会社が本件賞与を減額したとされることが労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するか)について
(1) 本件賞与減額の合理性
 会社は7.16団交において、組合に36協定の是正について具体的な説明をすることもせずに、本件賞与の減額に結びつく配車の割当てを行っている。その上、組合が27年9月27日に配車差別をやめることを求めたにもかかわらず、会社はこれを無視したのである。
 したがって、本件賞与の減額は、会社の恣意的な判断に基づいて行われたものであり、就業規則に基づき合理的に決定されたものであるとはいえない。
(2) 不当労働行為意思
 本件賞与の減額は、不当労働行為であると判断した本件稼働手当減額が継続している最中に、組合員のみに対して行われているのであるから、会社が組合に対する嫌悪感を背景にその活動を妨げるためにしたものであり、不当労働行為意思に基づくものと判断することができる。
(3) 結論
 本件賞与を減額したことには合理性はなく、本件稼働手当減額と同様、その動機は、会社が組合や組合員に対する批判的な感情の下、その活動を抑制するために行ったものと判断できる。
  したがって、会社が本件賞与を減額したことは労組法第7条第1号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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