労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第20号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(申立人組合) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年3月14日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要  1 会社が、申立外C1社に買収され、賃金制度の見直しを進める中で、会社に従前からあった唯一の労働組合(旧組合)のほかに、C2労組(以下「第二労組」という。)が結成された。また、旧組合は分裂し、申立人組合と申立外組合の双方が、旧組合の名前で活動するようになった。
2 本件は、被申立人会社が、①その賃金制度を変更し大幅な賃下げとなる新しい賃金制度の導入を進める中、申立人組合の弱体化を図るため、第二組合結成への関与したこと、②元申立人組合書記長を中心とした新たな団体の結成に関与するとともにこの新団体を正当な労働組合であるとして申立人組合との団体交渉を拒否したこと、③申立人組合員からチェック・オフした金員を新団体に渡したことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件であり、大阪府労働委員会は、会社に対し、会社が申立人組合の組合員らに行った組合費等のチェック・オフ手続の取消し、チェック・オフした金員相当額の金員の返還及び文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、平成27年2月及び同年3月の給与支給分から、申立人の組合員らに対し行った組合費等のチェック・オフ手続がなかったものとして取り扱い、チェック・オフした金員相当額を当該組合員に対し速やかに返還しなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日

 組合
  委員長     A1様
法人          
代表取締役 B1

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1) 平成26年10月28日、当社が、貴組合員に対し、「身元保証並びに誓約書 就業規則確認書 制服貸与保証金誓約書」及び「雇用契約書兼雇用通知書」(嘱託乗務員にあっては「定時制雇用契約書兼雇用通知書」)を示し、署名、捺印を求めたこと(3号違反)。
(2) 当社が、貴組合からの平成27年2月16日付け団体交渉申入れに応じなかったこと(2号違反)。
(3) 当社が、平成27年2月及び同年3月の給与支給にあたり、貴組合の組合員らの給与から組合費等をチェック・オフしたこと(1号及び3号違反)。
3 申立人のその他の申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 争点1-(1)(平成26年10月28日、会社が、旧組合の組合員に対し、就業規則等確認書あるいは雇用契約書を示し、署名、捺印を求めたことは、支配介入に当たるか。)について
 会社は、賃金改定に着手して以降、旧組合との合意に至っていなかったにもかかわらず、会社説明会において、平成26年12月16日から新賃金制度を導入する旨発言し、同年10月28日に、旧組合の組合員に対して、個別に、会社提案の新賃金制度に承諾する内容の書面に署名・捺印を求めたものであり、かかる会社の対応は、組合の交渉活動を阻害する支配介入に当たると認められることから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
2 争点1-(2)(平成26年12月、会社が賃金制度を変更したことは、申立人組合に対する支配介入に当たるか。)及び争点2(第二組合の結成は、会社により企図された申立人組合に対する支配介入に当たるか。)について
(1) 第二組合の結成について
① 第二組合の結成の経緯をみると、新賃率に反対していた旧組合の組合員が唐突に行ったようにもみえるが、第二組合が会社の指示または援助を受けて結成されたと認めるに足る疎明もないことから、その結成行為が会社の行為によるものであるとまでは認めることはできない。
② 申立人組合は、会社職員が旧組合からの脱退を強要したと主張するが、会社のいかなる職制により、いつ、どこで、どのような働きかけが行われたかについて、事実と認めるに足る具体的な疎明がない上、会社が旧組合の組合員に対して脱退を勧奨した事実も認められないのであるから、会社が旧組合からの脱退工作を行ったとまでは認めることができない。
③ したがって、第二組合の結成は、会社により企図された支配介入であるとまではいうことができない。
(2) 会社が賃金制度を変更したことについて
① 平成26年12月14日、会社と第ニ組合は就業規則の改定に関して団交を行い、会社と第二組合は、会社がスタート協力金を第二組合の組合員に支払い、第二組合は会社提案の賃金制度の変更を含む就業規則の改定について了承することで合意したことが認められるが、第二組合の結成が会社により企図された支配介入と認めるに足る疎明がないことから、第二組合が不当労働行為の産物であるため、第二組合と会社の間の合意は無効であるとする申立人組合の主張を認めることはできない。
② また、申立人組合は、第二組合と会社の合意が、旧組合からの脱退届が提出されるより前であったことを問題視し、このような合意は無効である旨主張する。確かに第二組合の結成に至る詳細については不明の部分があるが、第二組合の結成とその構成員の旧組合からの脱退の合意が前後したことをもって一概に当該合意が無効であるとはいえない。そのほかに、第二組合と会社の間の合意は無効であるとする申立人組合の主張を認めるに足る疎明はない。
③ したがって、会社が賃金制度を変更したことをもって、申立人組合に対する支配介入であるとまではいうことができない。
3 争点3(申立外組合の結成は、会社により企図された申立人組合に対する支配介入に当たるか。)について 
 会社が、A3に対し、26.12.24臨時大会の開催を働きかけ開催を強行させたとは認められない上、会社職員を使って、旧組合の組合員個々に対して、26.12.24臨時大会への参加あるいは委任状の提出を行うよう勧奨したと認めるに足る疎明もないことから、申立外組合の結成は、会社により企図された申立人組合に対する支配介入と認めることはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
4 争点4(27.2.16団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
(1) 遅くとも平成27年1月25日の時点で、会社は、旧組合が二分し事実上併存状態にあることを認識していたのであり、会社が、申立人組合から自らが旧組合であることの説明を受けていなかったとしても、そのことをもって、会社が申立人組合との団交を拒否する合理的な理由とはいえない。
(2) 同一企業内に複数の労働組合が併存している場合には、使用者は中立的な態度を保持するべきであり、会社は、旧組合が、二分し事実上併存状態にあることを認識していたのであるから、それぞれについて団交応諾義務を有しているというべきである。
 しかしながら、B2取締役はA1委員長に対し、申立外組合を旧組合と認めているので、組合名を変えるならあなた方との団交にすぐ応じる旨述べ、申立人組合との団交を拒否したことが認められる。
 このB2取締役の発言は申立人組合の存在を否認する発言であり、このような態度のもと申立人組合との団交を拒否したことをみると、会社は、合理性の見出し得ない理由に基づき申立人組合との団交を拒否したものと判断せざるを得ない。
(3) なお、現時点で、会社は、申立人組合が旧組合であるかどうかにかかわらず、申立人組合と団交を行う所存であり、救済の必要は現時点では存在しない旨主張するが、会社が団交に応じる意向を示しただけで、救済の必要性が消滅するとはいえない。
(4) したがって、27.2.16団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否にあたるというべきであって、労働組合法第7条第2号に該当する。
5 争点5(会社が、平成27年2月及び3月の給与支給分から、A1委員長を除く申立人組合員の組合費等をチェック・オフしたことは、申立人組合員であるが故の不利益取り扱いに当たるとともに、申立人組合に対する支配介入に当たるか。)について
 旧組合が二分し申立人組合と申立外合が事実上併存するに至った本件において、会社がこのことを認識していたにもかかわらず、申立外組合と締結したチェック・オフ協定に基づき、申立人組合員に対しチェック・オフに同意するかを確認するなどの対応を執ることなく、平成27年2月以降の申立人組合の組合員の給与から組合費等をチェック・オフしたことは、同組合の組合員の意に反して組合費等に相当する金員を控除したものであるから、申立人組合の組合員に対する不利益取扱いであるとともに、チェック・オフした組合費等を申立外組合に交付したことは、申立人組合の組合運営に対する支配介入であり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。  
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