労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年(不)第81号
丸名工芸不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年1月24日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 平成24年5月(以下「平成」の元号を省略)、A2は会社に入社し、業務に従事していたが、27年2月20日付けで、自己都合にて退職した。
 しかし、A2は、残業代が支払われなかったことや、社会保険に未加入であったために厚生年金の脱退一時金を受給できないことなどから、3月12日申立人組合に加入した。
 3月13日組合は、会社にA2の組合加入を通知するとともに、同人の未払い残業代や社会保険未加入の問題を協議事項として、団体交渉を申し入れた。
 その後、労使間の文書のやり取りの結果、会社は、A2の残業代を支払うことで組合と合意し、同人に残業代を支払った。しかし、組合は、A2の社会保険未加入の問題等が未解決であるとして、同年6月20日、再び団体交渉を申し入れた。
 同月30日、団体交渉が開催され、組合が会社にA2以外の外国人従業員がいるのか等を質問すると、会社の代理人であるC弁護士はその質問に答える必要はないなどと述べて明らかにしなかった。その後、交渉は進展せずに、組合が団体交渉を途中で退席し、団体交渉は開始から約20分で終了することとなった。
2 本件は、24年6月30日の団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事件で、東京都労働委員会は申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団体交渉において代理人弁護士が専ら発言したことについて
(1)  団体交渉において、会社から交渉権限を与えられた代理人弁護士が出席し、その権限に基づき組合と交渉を行うこと自体は、特段問題となるものではない。
 そして、組合がA2の組合加入を通知して以降、C弁護士は、一貫して会社の代理人であることを明示した上で組合とのやり取りを行っており、同弁護士が会社から団体交渉における交渉権限を与えられていたことは明らかである。
(2)  さらに、団体交渉において、C弁護士が組合からの質問に即答できない等の場面があったわけではなく、また、B社長も必要に応じて発言しているのであるから、会社が実質的な交渉に応じていなかったということはできない。
(3)  以上のことから、団体交渉において、C弁護士が専ら発言したことが誠実交渉義務に反するということはできない。
2 組合の質問に対して、会社が回答を拒んだことについて
(1)  団体交渉において、組合は、会社に対して、A2以外の社会保険未加入者の存否、社会保険未加入が法令違反であるかの会社の認識、会社の社会保険手続の事務担当者氏名、及びA2以外の外国人従業員の存否を質問したが、会社は、答える必要がないなどとして、それらの回答を拒んだことが認められる。
(2)  しかしながら、会社は、団体交渉開催までの間に、組合に対して、A2の社会保険の加入手続をしなかった理由を説明して、具体的な解決案を提示するとともに、団体交渉においても同様の説明と解決案の提示をしており、また、その内容が不合理なものであるということもできない。
 さらに、団体交渉において、会社がA2を社会保険に遡及加入すること以外には、組合の要求に応じる意思がない旨を明言すると、組合は、直ちに協議を打ち切り、交渉開始後わずか20分ほどで自ら退席している。
(3)  そして、団体交渉申入書に記載された協議事項のうち、「社会保険・雇用保険等未加入について」の具体的内容は、団体交渉に至るまでの労使のやり取りからすれば、会社がA2の社会保険加入手続をしていなかったために、同人が脱退一時金を受給できなかったことと考えられるところ、団体交渉において組合が行った前記(1)の質問は、同人が社会保険未加入により脱退一時金を受給できなかったこととの関係を直ちに見いだし難いものであり、また、組合は前記(1)の質問をする趣旨や理由などについても何ら言及していない。
 それ以外の「外国人差別について」等の協議事項についても、組合は、会社に対して、A2が差別的取扱いを受けていた等の具体的な事実や、それに伴う要求事項を示しておらず、組合が団体交渉において会社に協議を求める具体的な内容は必ずしも明らかであったとはいえない。
 そのような状況の下では、会社が、組合からの前記(1)の質問はA2の社会保険未加入問題などの未清算の労働条件等とは無関係であると判断したとしても無理からぬところであり、会社がそれらの質問に回答しなかったからといって、同人の未清算の労働条件等にかかる協議を拒んだと評価することはできない。
(4)  以上のことから、団体交渉において、会社は、A2の社会保険未加入の問題について必要な説明を行うとともに、解決に向けた提案を行っており、また、会社が回答しなかった組合からの質問があったとしても、そのことをもって、社会保険未加入の問題を含めた同人の未清算の労働条件等に係る協議を実質的に拒んだと認めることはできない。
3 以上のとおりであるから、27年6月30日の団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるということはできない。  
掲載文献   

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