労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  高労委平成28年(不)第1号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y事務組合(「事務組合」) 
命令年月日  平成29年2月2日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要  1 組合は、法人が、法人が運営する特別養護老人ホームを民間移譲する方針を表明し、職員の身分に関する話をしたことが契機となって結成された労働組合である。
 平成25年10月15日、組合は、B3荘の移譲先の決定を契機に、事務組合を相手方として、「交渉権限がある者が出席すること」、「労使合意に向けた交渉を行うこと」、「交渉での確認事項を反故にせず、責任をもって履行すること」などについて、高知県労働委員会にあっせんを申請した(高労委平成25年(あ)第5号事件)。
 平成25年11月18日、高知県労働委員会は、「組合及び事務組合が、民間委譲に当たり、双方が誠意をもって交渉を行うこと」、「事務組合は、分限免職の回避に向けて努力すること」を内容とするあっせん案を提示したところ、組合及び事務組合は、それを受諾し、あっせんは成立した。
2 本件は、
① 高知県労委の平成25年11月28日付けのあっせん案の提示以降の団体交渉において、事務組合側の決定権者の出席がないこと及び事務組合側の交渉出席者の対応
② 組合が要求する分限免職の回避に向けた努力についての事務組合側の回答及び回答に至るまでの交渉の経緯
③ 事務組合が平成27年3月10日付けで「単労職員の給料表の改正について」とした通知を発出するに至るまでの交渉の経緯
④ 「分限免職の回避に向けた努力」についての協議が継続している中で、事務組合が平成27年7月31日付けで「老人ホームB2園の民間移譲先法人の決定」とした通知を発出したこと、
が、不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件で、高知県労働委員会は、事務組合に対し、誠実団交を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人から申入れのあった団体交渉に実質的な交渉権限を付した者を出席させ、誠意をもって応じなければならない。
2 申立人のその余の申立ては棄却する。  
判断の要旨  1 争点①(当労働委員会の平成25年11月28日付けのあっせん案の提示以降の団体交渉において、事務組合側の決定権者の出席がないこと及び事務組合側の交渉出席者の対応が法第7条第2号の不当労働行為に該当するか)について
(1) 事務組合においては事務局長が交渉の窓口になっていたことから、事務局長(平成27年10月1日からは常勤副管理者)が一定の交渉権限を与えられて団体交渉に出席していたと認められる。
(2) 常勤副管理者については一定の裁量が与えられていたものの、その他の交渉の際に裁量を与えられていなかったことを証言していることからすれば、その権限は限定的なものであったことがうかがえる。
(3) 事務局長は、交渉内容や要求等を幹事会及び正副管理者会の指示を受けて交渉する立場であったと事務組合は主張している。
 この主張に基づけば、団体交渉ごとに幹事会又は正副管理者会を開催する必要があったと考えられるが、当委員会のあっせん案の提示以降、平成25年12月25日から平成26年11月20日までの間に正副管理者会が開催されておらず、幹事会においても具体的な話合いが行われていなかったことがうかがえる。こうしたことから、少なくともこの間において事務組合内部での検討がされていたとは言い難く、事務局長が交渉に対応するための必要な指示を受けていなかったことが認められる。このため、交渉に出席した事務局長が団体交渉の担当者としての責務を果たすことができる状況にはなかったものと認められる。
(4) 以上の諸点を総合的に勘案すれば、事務局長又は常勤副管理者が実質的な交渉権限を持って交渉に出席していたとは言い難く、事務組合全体として団体交渉に臨む態度は、誠実交渉義務に違反するものであり、法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
2 争点②(組合が要求する「分限免職の回避に向けた努力」についての事務組合側の回答及び回答に至るまでの交渉の経緯が法第7条第2号の不当労働行為に該当するか)について
(1) 事務組合は、組合に対し、平成25年5月21日に「本人の意思に反した分限免職は行わない」と回答している。一方、事務組合は、当委員会のあっせん案を受けて「本人の意思に反した分減免色は行わない」という方針を「分限免職回避に向けて努力する」という方針に変更した旨を常勤副管理者が証言している。これは、当委員会のあっせん案を奇貨として、組合に対する回答内容を反故にしたことにほかならず、また、方針を転換したことを、組合に明らかにしないまま交渉を継続していたことからも、事務組合の対応は不誠実であったと受け止めざるを得ない。
(2) 平成27年3月5日付けで分限免職を回避するための対応として示した内容を見てみると、事務組合内部での異動は職員の定年退職に伴う補充に留まるものであるなど、限免職を回避するための対応として十分なものとは評価できない。
(3) 当委員会のあっ前案の提示以降、事務組合は組合から団体交渉の際に再三にわたって分限免職の回避に向けた努力について具体的な回答を求められていたが、事務組合が組合に対して分限免職の回避に向けた努力についての具体的な回答を示したのは、あっせん案の提示から約1年3ヶ月も経過しており、その間、事務組合は事務組合内部の異動について説明していると主張しているが、具体的な回答といえるものではなかった。
(4) しかし、本件救済申立て後に、事務組合は退職時特別昇給及び通常の勧奨制度の対象者の拡大を実施することとしている他、事務組合内部での異動等により、正社員17名中13名について分限免職が回避される見込みとなっている。このため、平成27年3月5日付けの回答では十分な対応とはいえないものの、最終的に一定の成果が出る見込みとなっていることから、少なくとも事務組合の対応に効果がないとは評価し難い。
(5) 以上の諸点を総合的に勘案すれば、事務組合の対応に不誠実なところはあるものの、一定の職員については分限免職が回避される見込みとなっていることから、「分限免職の回避に向けた努力」についての事務組合側の回答及び回答に至るまでの交渉の経緯は、法第7条第2号の不当労働行為とまではいえない。
3 争点③(事務組合が平成27年3月10日付けで「単労職員の給料表の改正について」とした通知を発出するに至るまでの交渉の経緯が法第7条第2号の不当労働行為に該当するか)について
(1) 給料表の改訂について、改訂前に交渉で取り上げられたのは平成24年12月26日の団体交渉のみであり、また、事務組合は、給料表の改訂に関して、説明のための資料は提示していなかった。
(2) しかし、単純な労務に雇用される一般職に属する職員の給与は、地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)附則第5項の規定により準用される地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第38条第3項において、国及び他の地方公共団体の職員の給与等を考慮して定めなければならないとされている。
 給与表の改定は分限免職を回避するための対応に当たるものではないものの、事務組合が主張するように行政(1)表と同水準であった行政(2)表を本来の水準とするよう給料表を改定することには一定の必要性、合理性があったものと認められる。また、こういった改定の趣旨からすれば、早期実施が必要であることもうなずける。加えて、給料表の改定による不利益を緩和する措置も一定設けられている。
(3) さらに、平成24年12月26日の団体交渉で、給与表の改定について取り上げられた際には、平成25年に施行する予定とされていたが、平成26年にB3荘を民間移譲することから、実施を猶予していたという経緯もある。
(4) 以上の諸点を総合的に勘案すれば、事務組合の交渉態度は問題がなかったとまでは言えないにしても、この交渉経緯をもって法第7条第2号の不当労働行為とまではいえない。
4 争点④(「分限免職の回避に向けた努力」についての協議が継続している中で、事務組合が平成27年7月31日付けで「老人ホームB2園の民間移譲先法人の決定」とした通知を発出したことが法第7条第2号の不当労働行為に該当するか)について
(1) 地方公営企業等の労働関係に関する法律第7条ただし書において、管理運営事項は団体交渉の対象とすることができないとされている。
(2) 管理運営事項であっても、職員の労働条件に関連するものは、その範囲において団体交渉の対象となると解すべきである。しかし、管理運営事項はあくまで労働条件に関する範囲で団体交渉の対象となるものであるから、B2園の民間移譲先法人の決定そのものについては、団体交渉の対象となるものではない。
 また、平成25年4月5日付けの確認書において、労使合意を基本としてすすめると確認したのは労働条件等の事情についてであり、民間移譲先法人の決定はこれに含まれないものと認められる。
(3) 以上の諸点を総合的に勘案すれば、「分限免職の回避に向けた努力」についての事務組合側の回答及び回答に至るまでの交渉継続している中で、事務組合が平成27年7月31日付けで「老人ホームB2園の民間移譲先法人の決定」とした通知を発出したことは、法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。  
掲載文献   

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