労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成25年(不)第82号・平成26年(不)第96号
松戸市(国保松戸市立病院)・同(配置転換)不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(X2組合と併せて「組合ら」) 
申立人  X2組合 
被申立人  Y市(「市」) 
命令年月日  平成28年12月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、
① 小児科病棟への2交代勤務導入に係る平成25年5月23日の団体交渉において、市の運営するB2病院(以下「病院」ともいう。)が、組合らの求める看護局職員を出席させず、職場実態等に関する質問に答えなかったこと及び既に多数組合であるC1組合と合意していた同病院が、当該団体交渉が合意に至らなかったにもかかわらず、2交代勤務を導入(試行)したこと、
② 平成26年7月1日、B2病院の看護局長が、患者対応に関して苦情があったとして、外科外来の看護師である組合員A2と面談したこと、
③ B2病院が、組合員A2を同年8月1日付けで、外科外来から中央採血室に配置転換(以下「本件配置転換Ⅰ」という。)したこと、
④ その後、外科外来に復帰したA2を、同年11月18日付けで、外来処置室に配置転換(以下「本件配置転換Ⅱ」という。)したこと、
が不当労働行為に当たるかが争われた事件で、東京都労働委員会は、市に対し、文書の交付等を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人市は、申立人X1組合及び同X2組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を交付しなければならない。

年 月 日
 X1組合
 執行委員長 A1殿
 X2組合
 分会長    A2殿
  
市             
病院事業管理者B1

 当市が、貴組合らとの間で、平成25年5月23日に開催したB2病院の小児科病棟への2交代勤務導入に係る団体交渉における当市の対応は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人市は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件団体交渉について
(1) 本件団体交渉の当日、看護局職員の出席はなく、病院側は、管理局職員の出席のみで、組合らが抗議する中、病院は、回答を看護局に確認しているので説明したいと述べた。そして、現状の勤務体制について、看護基準、病床数、看護師数、定数、夜勤回数等についてその数値を回答しているが、2交代勤務になったら夜勤は何回になるのかとの組合らの質問には明確な回答をせず、平均病床数(患者数)のうち付き添いは何床かとの質問にも、病院は誰も発言しなかった。また、病院は、付添いの実態について看護行為は行っていないと回答したものの、組合らから親が看護行為を行っているのを現認した旨指摘されても、沈黙するのみで何も答えず、事実関係を確認する等、組合らからの質問に対する対応を示すことはなかった。
 団体交渉は、事前の質問に一通り回答をすればいいというものではなく、それを基に更に踏み込んだ議論や意見交換を行い、合意に向けた交渉を尽くす必要があるが、上記の病院の対応をみると、病院がそのような交渉ができる準備や態勢を整えて団体交渉に臨んだとは認められない。
(2) 1月29日の団体交渉では、病院は、じっくり協議をした上で実施時期を考えていきたい、仮眠時間については協定を結びたいと思っていると発言していた。しかし、組合らが協議を尽くすために延期を求めても、病院は、延期ができない理由すら示さずに、ただ6月1日から試行することを繰り返すのみであったことからすると、結局病院は2交代勤務の実施に先立ち団体交渉を行えばよいという姿勢であったとみざるを得ず、組合らが「形式団交」と捉えたことにも相応の理由があるというべきである。
(3) したがって、病院には、自らの提案について組合らに説明を尽くそうとする姿勢がなかったといわざるを得ず、本件団体交渉における病院の対応は、不誠実であると言わざるを得ない。
(4) 病院は、2交代勤務導入について、組合らとC1組合の双方に対し、同時期に提案を行っているものの、5月に提案した2交代勤務についてC1組合と合意した内容で6月1日から施行するという姿勢を堅持して延期に応じないなど、結局、病院は、多数組合であるC1組合との合意さえ得られれば、組合らの理解を得られなくてもよいとの姿勢で、組合らと団体交渉を軽視していたとみざるを得ない、
  したがって、本件団体交渉における病院の対応は、組合の運営に対する支配介入にも当たるともいわざるを得ない。
2 本件面談について
 本件面談は、平成26年6月23日に、外科外来に通院している患者家族より本件苦情を受けたことから、当該患者家族の対応を行ったA2に対し病院が事実確認を行ったものであり、病院がこのような対応を執ることには何ら不自然な点はなく、面談の内容や態様も、事実確認の域を超えるものではない。
 病院は、A2が事実を認めたことから、その後、中央採血室への配転を打診しているが、組合らが主張するような、A2に対し大きな苦痛、恐怖、不安を与えるような言動があった事実は認められない。
 したがって、本件面談は、A2が組合員であるが故の不利益取扱い当たらず、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。
3 本件配置転換Ⅰについて
(1) 本件配転Ⅰは、本件面談において、A2が本件苦情の事実を認めた後にA2に打診したものであり、当該患者の予約が26年8月上旬に入っていたことから、病院が当該患者とA2が接触し、新たなトラブルが生じないよう、本件配転Ⅰを命じたことには、やむを得ない事情があったといえる。
(2) 病院は、25年12月20日の面談でA2に注意指導を行っていたのに改善がみられなかったことも理由に挙げているところ、この面談は、外科部長等により、A2を外科外来から配転してほしいとの要望書が提出されたことを受けて行われ、B2看護局長は、A2に対し、良好なコミュニケーションがとれていないことを指摘し、改善を求めて指導、注意し、これに対するA2の「改めるべきところがあれば改める。」との発言を受けて、同人の外科からの配転を思いとどまったとの経緯がある。
 こうした経緯に加えて、25年12月の要望書の後も、医師からA2を配転してほしいとの要望は引き続き出されていたことも踏まえると、本件面談の際にB2看護局長が、医師や看護師との調整を余りしなくてよいなどとして中央採血室への配転を打診したこともやむを得ない判断であったとみられる。
(3) A2が活発な組合活動をしていたとはみとめられず、他方、病院は業務上の必要性に基づいて本件配転Ⅰを行ったといえるから、本件配転Ⅰは、組合員であるが故の不利益取り扱いに当たらず、組合らの運営に対する支配介入にも当たらない。
4 本件配置転換Ⅱについて
(1) 本件配置転換Ⅱが命じられた当時、外科外来では医師や看護師とA2の確執が相当深刻化していたことが窺われ、外科外来の体制をいかに恒常的に確保するかは、正に病院における喫緊の課題であったということができる。
 加えて、25年12月の要望書の後も、医師からのA2を配転してほしいとの要望は引き続き出されていたことからすると、病院が、A2を外科外来から配転することを決めたことにはやむを得ない事情があったというべきである。そして、本件面談で、A2が中央採血室より外来処置室を希望していたことを踏まえ、本件配転Ⅱを命じたものである。
(2) 本件配転Ⅱは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。  
掲載文献   

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