労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  群馬県労委平成28年(不)第2号
群成舎不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年1月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社に平成27年11月2日(以下「平成」は省略する。)から雇用されていたA2は、同年12月3日、労働条件が入社前に説明されているものと違っているとして、これを組合に相談し、同日組合に加入した。
 組合は、27年12月20日付け「要求書」と題する文書(以下「12月要求書」という。)において、A2が組合に加入したこと、労働組合への加入に関する支配、介入等が不当労働行為として禁止されているので、A2への事情聴取を行わないよう申し入れるとともに11月分及び12月分の未払い残業代を請求した。
 本件は、27年12月29日、B1社長がA2と面談し、組合に関して発言したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、群馬県労働委員会は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件面談の実施が支配介入に該当するか否かについて
(1) 組合は、会社が組合の申入れに反して本件面談を行ったものであり、また本件面談が年末の忙しい時期にA2だけに特別に行われたので、本件面談の実施が支配介入に該当する旨主張する。
ア 一般的に、使用者が新入社員に対して入社から一定期間の後に、業務の内容、感想及び希望の確認等を目的として面談を行うことは珍しいことではない。労使間が激しく対立し緊迫した状況下において、労働組合が面談をしないよう求めるなど特段の事情があれば、面談実施自体をもって支配介入と評価する余地もあるが、本件面談は、労使間に激しい対立状況はなく、上記特段の事情は認められない。
イ さらに、A2と同期の2名に対しても同時期に面談が行われていること、また、新入社員面談は入社後1、2ヶ月以内に設定されるのが定例であり、その定例に従って設定された結果、年末の時期に行われたに過ぎないことからすると、本件面談はA2だけに特別に実施されたものとはいえない。
ウ そうすると、本件面談が組合の申入れに反して行われたとしても、その実施は社会通念上相当な範囲内の行為であり、組合の運営や活動を妨害する等の行為とはいえず、支配介入に該当するとは認められない。
2 B1社長の言動が支配介入に該当するか否かについて
(1)「どんないきさつでここに入られたのですか」、「いつ頃入られたのですか。」(以下「本件発言①」)、及び所属する労働組合について「特にはこだわっていないのですか」(以下「本件発言②」)について
 本件発言①及び本件発言②は、事実確認の域を超えるものではなく、A2の組合脱退を促すなど、同人に対して萎縮的効果を与え、組合の組織、運営を弱体化させるものであるとはいえないことから、支配介入に当たるものとはいえない。
(2)「コミュニケーションの取り方からすると、ちょっと順番が違う」(以下「本件発言③」)及び「ただ、今、お見合い中だから、A2さんもうちの会社が一生勤めるのに値するかどうかよく見てください。私もA2さんとずっとお付き合いできるか見定めたいと思います。」(以下「本件発言④」)について
ア 本件発言③及び本件発言④の前後の発言を含めて見ると、これらの発言は、B1社長が、コミュニケーションを相互にとって信頼関係を築き、A2には会社に貢献できるようになってもらいたいとの思いを有していたことを示しており、社員との直接的なコミュニケーションを通じ、信頼関係の構築を目指すことは、使用者として逸脱した態度であるとはいえず、むしろ自然な対応といえる。
イ また、B1社長の一連の発言における言葉遣いからすると威圧的な発言はみられず、さらに、A2がB1の発言に対して抗議等をする場面もなく、本件面談が平穏に終了したことが認められる。
ウ 加えて労使間に厳しい対立状況がないことや本件面談が新入社員面談として実施されたことも併せ考えると、組合員に対して萎縮的効果を与え、組合の組織、運営を弱体化させる発言であるとまではいえない。
(3) 組合は、本件面談でのB1社長の発言について、直接的な表現はみられないが、支配介入の意図がA2に伝わるものであったと主張するので、本件発言①から本件発言④以外の発言について、労働組合からの脱退を促すなど組合員に対して萎縮的効果を与え、組合の組織運営を弱体化させるものであったか否か検討する。
 本件面談の中で、B1社長が、「ざっくばらんな話は人から聞くと何かできそうにもない」、「うちの看板もほとんに大事な仕事とかするとき、もう僕はちょっと怖いなと思う部分がありますので」(以下「本件発言⑤」)、「会社の考えですけど、身の安全は逆にこういう守り方をするというのは勘違いされてしまうと思う」(以下「本件発言⑥」、「僕はA2さんと信頼関係をつくっていくに当たっては、第三者の介在が必要だとは思っていない」(以下「本件発言⑦」)、「どうしても無理やりA2さんがそういうふうにしたいとするならば、それはそれなりに社会的なルールがあるでしょうから、そのルールには従わなければいけないだろうけど、ただこの時期でそうなのかなと」及び「その辺をよくお考えください」(以下「本件発言⑧」)と発言したことが認められるが、
 本件面談は全体を通して社員との直接的なコミュニケーションを通じ信頼関係の構築を目指すことを目的として行われたとみるのが相当であるから、仮にこれら一連の発言の中に組合加入を批判したものと受け取られかねない発言があったとしても、A2に組合からの脱退を促すなど、組合員に対して萎縮的効果を与え、組合の組織、運営を弱体化させるものであったとまではいえない。
3 反組合的意図及び動機について
 組合は、会社が組合に反組合的意図及び動機を持つ余地があったと主張する。
ア 残業代の支払いについては、12月要求書で組合が求めていたものであるが、会社は同要求書到達直後に、A2に対して12月分給与で残業代を支払ったことが認められ、これは組合の要求に対する対応であった可能性も否定できない。
 しかし、この対応は、組合の要求に応じ、会社として適法な手続を速やかに行ったものに過ぎず、また、労使間に厳しい対立状況が認められないことからすれば、要求に応じて残業代の支払いをしたことをもって会社が反組合的意図及び動機を持つに至ったとまではいえない。
イ そして、本件面談が実施された時点では12月要求書の回答期限は到来しておらず、この期限後であればともかくとして、この時点で12月要求書の対応がないことをもって、会社に反組合的意図及び動機があったとする組合の主張は採用することができない。
4 以上のとおり、B1が本件面談を行い、またその中で組合加入に関する発言を行ったことは、いずれも労組法第7条第3号の支配介入に該当しないと判断する。  
掲載文献   

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