労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第12号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「会社」) 
命令年月日  平成29年2月3日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人が、①平成26年3月12日の団体交渉において賃金改定に合意しなければ大阪営業所を閉鎖する旨の発言(以下「3.12発言」という。)をしたこと、②組合員らに対し手当の増額が可能な配車をせず、業務を傭車に発注し、組合員らに経済的不利益を被らせたこと、③平成26年12月15日年の団体交渉において、平成25年冬期一時金並びに平成26年夏期一時金及び冬期一時金について、誠実な対応を行わなかったこと、④当該団体交渉において、平成25年及び26年の大阪営業所の営業実績に係る資料を提示しなかったこと、⑤組合員らに対し、平成26年夏期一時金及び冬期一時金を支払わなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、誠実団交応諾、バックペイ及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成26年11月18日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人の組合員A2、同A3、同A4、同A5に対し、平成26年夏期一時金及び冬期一時金として、それぞれ本社営業所に所属する申立人組合員らと同等職種の従業員らに支給した一時金と同等の一時金を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
(省略)

4 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(26.3.12団交において、会社が、組合に対し、大阪営業所を閉鎖潤する趣旨の発言をしたことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 3.12発言は、組合員らに危機感を抱かせるものであったとしても、組合員らに対し、威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼしたとまではいえないから、組合に対する支配介入には当たらない。
2 争点2(平成26年5月から同年12月までの会社の組合員らに対する配車は、組合員故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
(1) 組合は、26.3.12団交において、会社は、組合に対し、賃金改定によって賃金が下がっても生活できるよう仕事を増やすと約束したにもかかわらず、組合員らが従事できる業務も傭車に発注するなどして組合員らへの配車を極端に減らしており、この配車は組合員故の不利益取扱いであるとともに組合に対する支配介入の不当労働行為に当たると主張する。
 26.4.30団交では、会社があとは仕事を増やす努力するということだけである旨、それを絶対仕事を増やせとなったら話がおかしくなる旨の述べていることが認められるのであるから、会社が、組合に対して仕事を増やす約束をしたとはいえず、そのほかに、会社が組合に仕事を増やす旨の約束をしたとの疎明はないのであるから、これに係る組合の主張は採用できない。
 また、純売上高に占める傭車売上高の比率を見ると、平成25年及び同26年に会社が組合員らの配車を大幅に傭車に切り替えたとはいえない。
(2) C1代理人弁護士は、分会に対し疑わしい傭車があれば、同弁護士あてに都度ファックスしてもらえば調査する旨の回答書を郵送する等しているが、本件審問において、A2分会長及びA3組合員が、組合はC1弁護士に対し納得できない配車についてファクシミリを送信していない旨陳述していることが認められ、そのほか組合がこれらについてファクシミリを送信したと認めるに足る事実の疎明もない。
(3) したがって、平成26年5月から同年12月までの会社の組合員らに対する配車は、組合員故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たらない。
3 争点3(26.12.15団交での、平成25年冬期一時金並びに平成26年夏期一時金及び冬期一時金に係る会社の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
(1) 平成25年冬期一時金並びに平成26年夏期一時金及び冬期一時金に係る26.12.15団交において、会社が、①経営改善ができなければ一時金の支払は無理である旨回答し、一時金を支払えない状態について大阪営業所が恒常的な赤字と説明しながら、組合が大阪営業所の月次の実績等の開示するよう求めたところ、データを一切出さないのが慣例で、出だすことはできない旨述べて応じず、②会社の経営状態について、「会社全体で営業利益マイナスの状態で、今手を打たなければ先々会社が危うくなる」と説明しながら、組合が会社全体の損益計算書の閲覧を求めても、出来ないものはできない旨述べ会社の方針である旨述べてこれに応じなかったのであるから、会社は組合に対し、具体的な説明を行ったとはいえない。③また、会社は、会社全体で営業利益がマイナスである旨説明しながら、ほかの営業所で一時金が支払われている理由について、賃金体系が違うと述べるものの、賃金体系を見せるよう求める組合に対し、受け入れを前提とする等条件を付けてもらわないと生の情報を出すわけにはいかない旨述べて説明しなかったのであるから、こうした会社の対応は結局、単に会社の決定した事項を一方的に組合に伝えていたものにすぎない。
(2) したがって、平成25年冬期一時金並びに同26年夏期一時金及び冬期一時金に係る26.12.25団交において、会社が、自らの主張の根拠を具体的に説明し、必要な資料を提示するなど誠意のあとは到底いえないから、会社の対応は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
4 争点4(26.12.15団交において、会社が、組合に対し、平成25年及び同26年の大阪営業所の営業実績に係る資料を提示しなかったことは、不誠実団交及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 本件審問において、A2部長が大阪営業所の平成25年及び26年の経営状況に係る資料について、26.12.15団交で出そうと思えば出せる状況であった旨陳述していることが認められ、そのほかに事情があったとの事実の疎明もないのであるから、そのほかに支障があったとの事実の疎明もないのであるから、会社が、同団交で上記資料を提示しなかったことに合理的理由があったとはいえない。
 したがって、26.12.15団交において会社が平成25年及び26年の大阪営業所の営業実績に係る資料を提示しなかったことは、自らの主張の根拠を具体的に説明し、必要な資料を提示するなど誠意のある対応を行ったとはいえず、不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する。
 また、会社は、組合を軽視し、ひいては組合の弱体化を意図したものといえるから、組合に対する支配介入にも当たる。
5 争点5(会社が、組合員らに対し、平成26年夏期一時金及び冬期一時金を支払わなかったことは、組合員故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
(1)平成26年夏期一時金及び冬期一時金不払いの合理性について
① 大阪営業所の業績は、平成26年夏期一時金及び冬期一時金の算定期間は、前年の同期間に比べむしろ赤字額は減少していたと推忍され、その後、同営業所の赤字が急激に悪化したとの疎明はない。しかるに、会社の大阪営業所の一時金支払状況をみると、平成25年夏期一時金は全額を、同年冬期一時金は前年度の半額を支払い、平成26年夏期一時金及び冬期一時金については支払わなかったことが、それぞれ認められる。
 そうすると、平成25年夏期一時金以降において、大阪営業所の実績と一時金の支払に関連性があるとは言い難く、平成26年夏期一時金及び冬期一時金が同営業所の実績に応じ、その結果支払われなかったとみることはできない。
② 会社は、大阪営業所以外の営業所の社員には一時金を支給しているが、いずれも組合員らとは賃金体系が異なる旨等主張するが、一時金の金額は、賃金体系と関係なく決定されており、一時金が支払われない理由に賃金体系の違いを挙げること自体相当でないといえるから、会社の主張は採用できない。
③ したがって、会社が、大阪営業所の組合員らに平成26年夏期一時金及び冬期一時金を支払わなかったことについて合理的な事情は認められない。
(2)組合嫌悪の意思
 ①平成24年6月27日、会社は、非組合員に対し、組合との賃下げの話合いが折り合わずこれ以上話をしても無駄である旨、賃下げを飲んでもらったら仕事もしてもらうし、一時金も出す旨発言したこと、②26.12.15団交で、大阪営業所は十数年前から赤字で、生き残りをかけて全ての営業所で賃金のベースダウンの話を毎年やってきたが、大阪は組合があったからなかなかできなかった旨述べたこと、が認められ、平成26年夏期一時金及び冬期一時金に係る26.12.15団交において、会社は、組合からの大阪営業所の実績を示す資料の提示要求や会社全体の経営状況の閲覧要求に応じないなど不誠実な態度で団交を行っていることを併せ考えれば、会社の組合に対する嫌悪の情を推忍せざるを得ない。
(3)会社が、組合員らに対し、平成26年夏期一時金及び冬期一時金を支払わなかったことについて合理的な事情は認められず、会社の組合に対する嫌悪の情は認められるのであるから、会社が、組合に対し、平成26年夏期一時金及び冬期一時金を支払わなかったことは組合員故の不利益取扱いに当たる。
 また、会社がこのような対応を行ったことにより、組合員らの心理的な不安を誘い、ひいては組合の組織的混乱や弱体化を招くことを意図したといえるから、当該行為は、組合に対する支配介入にも当たる。  
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