労働委員会命令データベース

(こ の命令は、労組法に基づく和解の認定により失効しています。)
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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成26年(不)第80号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年12月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合が休憩時間等に組合ニュースを配布し、又 は郵送するのを妨害したこと、②会社のマネージャーが組合加入を妨害する発言をしたこと、③組合の分会長をマネージャーの職 から、副分会長を工場長の職から解く配置転換をしたこと、④当該分会長及び副分会長の組合員資格について疑義をただし、見解 を求めたこと、⑤当該配置転換に係る団体交渉において不誠実な対応をしたこと、⑥開店準備及び閉店後作業が労働時間に当たる かが団体交渉で議題になっていたにもかかわらず、平成26年8月26日付「業務時間の厳守について」を店舗に対し発出し、そ れらを労働時間として取り扱わない旨通知たこと等が不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会 は、会社に対し、組合ニュースの配布妨害の禁止、A3及びA4の現職復帰、バックペイ並びに文書の交付・掲示及びその履行に 係る報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が休憩時間等に配布し、又は郵送し た組合ニュースについて、これを回収するなどの妨害をしてはならない。
2 被申立人会社は、申立人組合のA2分会の分会長A3及び同副分会長A4に対して行った平成26年9月16日付配置転換命 令をなかったものとして取り扱い、A3に対し、同日から原職に復帰するまでの間、原職に従事した場合に得られたであろう賃金 相当額と既支払額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に配布するとともに、同一内容の文書を 55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、就業規則を備え置いている場所など 被申立人会社の各工場内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日
 組合
 委員長 A1殿
会社         
代表取締役 B1

 当社が、貴組合が休憩時間等に組合ニュースを配布し、又は郵送することを一切認めずこれらを回収したこと、貴組合A2分会 のA3分会長をマネージャーの職から、A4副分会長を工場長の職から、それぞれ解く配置転換をしたこと、A3分会長及びA4 副分会長の組合員資格について疑義をただし、見解を求めたこと並びに開店準備及び閉店後作業が労働時間に当たるか否かが団体 交渉で議題となっていたにもかかわらず、平成26年8月26日付「業務時間の厳守について」を店舗に対し発出したことは、東 京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を掲載すること。)
4 被申立人会社は、第2項及び前項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合が組合ニュースを工場内で配布し、又は店舗に郵送したこと に対し、会社が施設管理権を理由として、これを認めず回収したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1) について
 組合ニュースの配布は、会社の許可を得ずに行われたものであるが、その発行は、約7か月の間に5号までと言う頻度であった こと、工場での配布については、休憩時間や作業終了後のごく短時間で行うよう配慮したこと、店舗では、従業員が顧客対応をし ていないのを確認した上で短時間に手渡しされていたこと等からすると、実質的にみて業務上の支障が生じるおそれがあったとま ではいえない。
 会社が、実質的にみて、業務上の支障が生ずるおそれがないにもかかわらず、組合ニュースの配布や郵送を一切認めずこれらの 回収を行ったことは、組合ニュースが従業員の手に渡ることを妨害する意図で行ったものとみざるを得ず、組合の運営に対する支 配介入に当たる。
2 B4マネージャー又はB5マネージャーが、26年8月1日にA4に対し、組合の活動等に係る発言を行ったか否か。行った とすれば、その発言が組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)について
 B4マネージャーがA4に対し、組合ニュースに目を通してどう思ったかと聞いたことについては当事者間に争いがないが、組 合の主張するその余の発言については、その事実を認めるに足りる疎明はなく、それらの発言があったと認めることはできない。
 第1回団体交渉直後であるこの日にB4マネージャーとB5マネージャーが立て続けにA4を訪れたという事情を踏まえても、 B4マネージャーが組合ニュースに目を通してどう思ったかを聞いたことのみをもって、B4マネージャーがA4に対し組合に加 入しないよう働きかけたとはいえないし、この発言が会社の意を体したものであるということもできない。
 したがって、B4マネージャーとB5マネージャーが、8月1日にA5に対して支配介入に当たる発言をしたとはいえない。
3 A3をマネージャーの職から、A4を工場長の職から、それぞれ解く配置転換が、組合員であること若しくは労働委員会に対 して不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とした不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3) について
(1)会社の主張について
 工場長やマネージャーがある程度の監督的権限を有していることは否定できないとしても、従業員のほとんどを占めるパート社 員について、半ば機械的に欠員を補充する権限しか有していない等を、上記程度の職務権限や工場長会議及びマネージャー会議の 実態をもってしては、これらの職務が組合員資格と両立し得ないもとのはいえない。
 A3及びA4が労働組合法第2条ただし書第1号に定める「使用者の利益を代表する者」に当たるとはいえないから、両人が利 益代表者であると誤解されるような職務につくことは適当でない等、会社の主張する本件配置転換の理由に合理性を認めることは できない。
 会社は、A4に対し、本件配置転換により工場長の職務を解いた後も、基本給に加え、工場長としての職務遂行に必然的に生ず る時間外労働に対するものとして支給していた固定残業代を引き続き支払い続けているのであるから、不利益はないと主張する が、A4に経済的な不利益がないとしても、工場長としての職務を剥奪され、工場の一作業担当職となったこと自体が不利益な取 扱いに当たることは明らかである。
(2)当時の労使関係について
 組合の公然化から2か月足らずの間に、労使間の対立は急速に先鋭化していたことが窺われる。そして、会社は、本件申立ての 直後、分会長であるA3及び副分会長であるA4がマネージャー又は工場長の職務を担うことを問題として、本件配置転換を実施 した。
(3)本件配置転換は、労使間の対立が先鋭化する中で、不当労働行為救済申立てを行うという組合の意思が書面や団体交渉の中 で示されるようになり、実際に申立てがなされたことが決定的な契機となって、会社が分会の中枢メンバーである分会長のA3か らマネージャーの職を、副分会長のA4から工場長の職をそれぞれ剥奪することとし、これを強行したとみるのが相当である。
 したがって、本件配置転換は、A3及びA4が組合員であること及び本件申立てがなされたことを理由とする不利益取扱いに当 たるとともに、分会長及び副分会長の配置転換により、組合の活動等に萎縮効果をもたらす支配介入にも当たる。
4 会社が組合に対し、A3及びA4の組合員資格について疑義をただし、見解を求めたことが、組合の運営に対する支配介入に 当たる否か(争点4)について
 8月16日付け質問書は、単に組合の見解を求めたものではなく、会社が、組合の回答のいかんにかかわらず、本件配置転換を 行う前提でA3及びA4の組合員資格に係る自己の見解を実質的に押しつけたものといえ、暗にA3及びA4の組合脱退を求めた ものとみられてもやむを得ないものであった。
 したがって、会社が、組合に対し、A3及びA4の組合員資格について疑義をただし、見解を求めたことは支配介入に当たる。
5 A3及びA4の配置転換について、会社が配置転換後の9月18日の団体交渉で交渉を行うとしたことが、正当な理由のない 団体交渉拒否に当たるか否か。また、団体交渉に代表取締役が出席しないことが、不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点5)に ついて
(1) B2専務は、組合が団体交渉を求めた時点で、既に第3回団体交渉の予定日である9月18日が目前に迫っている状況に おいて、その団体交渉で話をすると答えているのであるから、会社が、組合の求めに応じず第3回団体交渉で協議するよう回答し たことをもって、正当な理由のない団体交渉の拒否であるということはできない。
(2) B1社長が団体交渉に出席していなかったとはいえ、会社は、第2回団体交渉では、冒頭で第1回団体交渉の際に組合か ら要求のあった雇用契約書等のひな形を提示し、また、8月分からは毎月末日に時間外割増賃金を支払う旨を約し、労使間で一定 の合意形成ができたのであって、組合としては会社の回答内容等が満足し得る、あるいは納得し得るものではなかったとしても、 会社側の交渉員に交渉権限が与えられていなかったとみることはできない。
 したがって、本件団体交渉に代表取締役が出席していなかったことは不誠実な団体交渉には当たらない。
6 開店準備及び閉店後作業が労働時間に当たるか否かが団体交渉で議題となっていたにもかかわらず、会社が26年8月26日 付け「業務時間の厳守について」を店舗に対し発出したことが、不誠実な団体交渉又は組合の運営に対する支配介入に当たるか否 か(争点6)について
 会社が8月26日付け「業務時間の厳守について」を発出したことは、組合との議論、交渉が十分に尽くされるのを待たずに、 会社の方針に沿った運用を強行しようとするものだったといえるものであり、組合との交渉を軽視し、又は無視するものであると いわざるを得ず、不誠実な団体交渉及び支配介入に当たる。  
掲載文献   

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