概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪労委平成27年(不)第21号 不当労働行為審査事件
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申立人 |
X1組合(①X2組合、X3組合と併せて言う場合、②X1組合、X2組合、X3組合のいずれかを含む場合、いずれも組合ら」という。) |
申立人 |
X2組合 |
申立人 |
X3組合 |
被申立人 |
Y1会社(「会社」) |
被申立人 |
Y2(個人) |
命令年月日 |
平成29年1月20日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①労働条件の変更、解雇、休業等について事前に協議する旨の協定をX1組合と結んでいたにもかかわらず、事前協議することなく破産手続を開始し、X1組合の支部のX2組合の分会であるX3組合の分会長を解雇したこと、②当該分会長の解雇等を議題とする平成27年4月9日の団体交渉において、組合らの要求に対し誠実に対応せず、交渉を一方的に打ち切ったこと、③同月10日、組合らが当該議題について引き続き団体交渉を申し入れたのに対し、これを拒否したことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人会社は、申立人X3組合が平成27年4月10日付けで申し入れた団体交渉に、従業員を解雇するに至った経緯を説明するなどして誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、申立人らに対して、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X1組合
執行委員長 A1様
X2組合
執行委員長 A2様
X3組合
分会長 A3様
Y1会社
代表取締役B1
当社が行った次の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為をいたしません。
(1) 平成27年4月9日に開催された団体交渉において誠実に対応しなかったこと。
(2) 貴分会が平成27年4月10日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと。
3 被申立人会社に対するその他の申立てを棄却する。
4 被申立人破産者会社破産管財人Y2に対する申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 争点1(会社が、平成27年4月1日付けでA3分会長を解雇したことは、組合らに対する支配介入に当たるとともに、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるか。)について
(1) 会社に対する申立てについて
① 本件解雇に当たり、会社が組合と26.2.21協定に基づく事前協議を行わなかったことについて当事者間には争いはない。
② しかしながら、本件解雇の態様、目的等についてみると、会社は、本件破産申立ての準備のため組合員以外の者を含め従業員を一律に解雇しており、組合員のみを殊更不利益に取り扱ったとは認められないこと、また、大阪地方裁判所岸和田支部が、本件破産手続開始決定を行っており、会社に破産原因があること、が認められる。
③ さらに、本件解雇後に会社の経営陣が、組合員以外の従業員を雇用して別企業において従前と同様の事業を継続したとの疎明もないことからすれば、本件解雇は組合らを壊滅する意図でなされたとは認められない。
④ また、会社は遅くとも平成26年5月28日以降、組合らに経営状態が悪化していることを伝え、組合らに対し、賃金ダウン等の協力を求めており、組合らに対する嫌悪の念やこれを敵視する意思をもって唐突に本件解雇に至ったとも認められない。
⑤ したがって、事前協議を行わなかった事実を考慮に入れたとしても、会社が、A3分会長を組合員であるが故に不利益に取り扱ったとみることはできず、組合らを壊滅させることを目的にA3分会長を含む全員を解雇したともいえないのであって、組合らに対する支配介入にも当たらないといわざるを得ない。
(2)破産管財人に対する申立てについて
本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、労働組合法第7条第1号には違反しないと判断されるのであるから、会社から破産管財人に引き継がれる不当労働行為に係る債務はなく、破産管財人に係る申立ては棄却する。
2 争点2(27.4.9団交における会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとともに、組合らに対する支配介入に当たるか。)について
解雇という極めて重大な事柄に対し、解雇に至る事情を聞きたいという組合らの要求は理解できるところ、会社弁護士は、一定の説明を行っているものの、いまだ破産申立てを行っていない段階であるのに破産手続開始決定を前提とする回答を行うのみで、B1社長の発言を許さず、また、B1社長は、実質的な内容を伴う回答を行っていないのであって、いずれも会社の対応として不誠実であったといえる。
したがって、27.4.9団交における会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとともに、組合らを軽視するものであって、組合らに対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(27.4.10団交要求書に対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとともに、組合らに対する支配介入に当たるか。)について
会社は、団交に応じなかった正当な理由として、27.4.10団交要求書の団交事項は、27.4.9団交の際と同じく、本件解雇及び労働債権(賃金)であり、既に組合らと会社との間で交渉の余地はない状況にあったからである旨主張するが、そもそも会社は、27.4.9団交に誠実に応じていなかったのであるから、交渉の余地はあり、会社の主張は失当である。
したがって、会社には団交に応じる義務があるといわざるを得ず、27.4.10団交要求書に対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であって、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとともに、組合らを軽視するものであって、組合らに対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
ところで、平成27年6月17日、会社は本件破産手続開始決定を受け、会社の財産の管理・処分に関する権限は破産管財人に引き継がれていることを踏まえると、27.4.10団交要求書で分会が団交を要求した解雇及び労働債権について、原則として会社は既に団交に応じる地位にないといわざるを得ない。
しかし、破産手続開始決定以降もその終結決定までは、会社に破産管財人の専権事項以外の権限は存続しているとみるべきであり、会社は、その範囲内において労使関係の当事者であると解せられる。
また、27.4.9団交において、組合らがなぜこんな状態になったのか説明を聞きたい旨述べたことに対し、会社は答えていないことが認められることから、組合らは本件解雇に至った経緯について会社に説明を求めているとみるのが相当であり、会社は今なお、このことについて誠実に団交に応じる義務があるというべきである。
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掲載文献 |
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