労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  長崎県労委平成27年(不)第1号
九州旅客鉄道不当労働行為審査事件  
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年1月23日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社は、C1労組、組合に対しB2駅構内において、それぞれ、組合事務室を貸与していた建物を、C2市のB2駅周辺土地区画整理事業及びC3県のJR長崎本線連続立体交差事業(以下「両事業」という。」)施行に伴い、逐次、移転・撤去した。
 その際、会社は、先に建物の移転・撤去のあったC1労組には、B2駅構内において引き続き組合事務室を貸与したが、その後、建物の移転・撤去のあった組合には、平成27年4月1日以降、B2駅構内において組合事務室を貸与しなかった。
 本件は、会社が、C1労組に対しては、平成27年4月1日以降も組合事務室をB2駅構内において貸与しながら組合に貸与しないことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、長崎県労働委員会は、会社に対し、組合へのB2駅構内での組合事務所の貸与及びその具体的条件について組合と協議し合理的な取決めをすることを命じた。  
命令主文  1 被申立人は、申立人に対して、B2駅構内に組合事務所を貸与しなければならない。
 また、貸与にあたって、被申立人は、組合事務所の場所、広さ等の具体的条件について、申立人と誠意をもって速やかに協議し、合理的な取決めをしなければならない。  
判断の要旨  1 組合がB2駅構内に事務所の貸与を受けられなったことは両事業に起因するということに関する会社の主張について
(1) 組合事務所の移転・撤去について折衝を行った時期について
 会社は、両事業の進捗に伴う建物群の移転・撤去時期は、B4支社は概ね決まった後にその内容を知ることから、それぞれの組合事務所の移転・撤去時期を認識した時期が異なったため、折衝時期が異なることとなった旨主張する。
① 両事業の実施に伴いB2駅構内の各施設の移転・撤去が行われることからすると、各施設に係る具体的な利用計画を作成する必要性が認められるが、当該利用計画を作成するのは、各施設の使用状況を最も把握しているB4支社であると考えられる。
 本件組合事務所問題について組合と実際に折衝するのもB4支社である。
② そうであれば、何らかの問題発生の懸念がある場合には事前にB4支社が本社に上申することも十分考えられるが、B4支社は単に本社から決定事項の通知を受けるだけというのである。
③ そうすると、会社が主張するように、両組合への対応の違いが、B4支社が「知った時期」の違いにより生じても、会社内部の問題にすぎず、合理的な理由と認めることは困難であり、当該不当労働行為責任は、会社が負わなければならない。
(2) C1組合に対しては組合事務所を貸与するスペースがB2駅構内にあったが、組合に対してはなかったことについて
 会社は、C1組合に対して組合事務所を貸与した時点には駅第二運転掛詰所に空きスペースがあり、組合に対しても当該建物に貸与できると考えていたが、組合への貸与を検討した時点では、移転先の建物が新設されず、業務として使用するスペースを既存の建物で確保しなければいけなかったことにより空きスペースがなくなった旨主張する。
① しかしながら、スペースを確保しなければならないという「業務」について、何ら具体性を見出すことはできず、具体性がない以上、空きスペースの有無についての検討が会社において真摯に、かつ的確になされたと認めることは困難である。
② また、移転先の建物を新設するかどうかについて、会社は、建物を使用している部署が本社施設部と協議して決定するものであり、B4支社が決定できるものではないと主張するが、この点は、上記(1)と同様、会社内部の問題にすぎず、合理的な理由と認めることは困難である。
③ さらに、会社は、C1組合と折衝を行った25年11月の時点で、(組合事務所のある)出区検査掛詰所もいずれ撤去になることは分かっており、加えて、組合の組合事務所の移転先として駅第二運転掛詰所を想定したというのである。このとき、組合と折衝を行うことができない理由も十分見出せないことからすると、折衝を行うことも十分可能であったということができる。しかしながら、会社は、組合とは折衝を行わなかった。
④ また、会社においては、全ての労働組合の組合事務所の貸与期間を統一しており、23年8月までは、会社に存する労働組合に対しては、ほぼ同じ時期に同じ説明を行うなど平等な取扱いに努めていたことが認められるが、このとき組合に対してC1労組と同じような対応を取らなかったことについて合理的な説明がない。
⑤ したがって、会社の主張を採用することはできない。
(3) 会社は、B2駅構内に組合に事務所として貸与できるスペースが存在しないとして、駅第二詰め所、①、②、③、⑤の部屋、潤滑油の保管場所等について、施設ごとの使用状況についても主張を行っているが、空きスペースが存在しないとの主張の立証があったとは認められない。
 加えて、空スペースの有無についての検討が、会社において、真摯に、かつ的確になされたとは認めがたいことを考え合わせると、組合に対し、組合事務所として貸与することができる20㎡前後のスペースがB2駅構内に存在しないとのとの疎明がなされたとは認めがたい。
3 組合差別意思について
(1) B4支社は、C1組合の要望に応じて、平成26年2月から11月までの間、B2駅第二運転掛詰所の部屋を暫定的に事実上使用することを認めている。
 労働協約では、一時的利用の場合においても、書面による手続が必要とされているのに、本件においては口頭のみである。
 また、当該部屋にはエアコンが設置され、暫定的に机等を置く当初の目的から逸脱し、使用期間が長期にわたるのではないかとの疑念を強く生じさせる。
 さらに、当該期間は、組合とB4支社が本件組合事務所問題で折衝を行っていた時期と重なるうえ、B4支社が、B2駅構内に組合事務所として貸与できる場所はないので他の駅の構内に移転してもらいたいとの話をしていた時期であり、これらのことからすると、B4支社は、C1組合に対して特別な便宜を図っていたと評価することができる。
(2) B4支社は出区検査掛詰所の撤去時期を27年4月以降に繰り下げるよう要請している。
 この点、会社は、期間満了までは組合事務所として使用できるよう組合に配慮したと主張する。
① B4支社は出区検査掛詰所が26年度中に撤去される予定であることを26年5月21日に知ったにもかかわらず、その時点では組合に説明していない。当該繰下げ要請は組合の意向を確認したうえのものではなく、B4支社独自の判断によるものである。
② また、撤去の時期が確定しない中で説明し、混乱を招くよりも確定してから説明をしたほうがよいと考えたと主張するが、どのような混乱が危惧されたのかについて何ら明らかにされていない。
③ さらに、当該繰下げ要請が行われた26年6月頃、組合は、B4支社に対して、「C1労組は組合事務所を移転したが、自分たちはいつなのか」と再三問い合わせていたが、「まだ計画は何もわかることはない、計画自体がC2市のものなので会社としてどうこうできるものではない」旨の回答を受けていたというのである。
 そうすると、B4支社は出区検査掛詰所の撤去時期に関する情報を秘匿していたといわざるをえない。
④ したがって、当該繰下げ要請は、組合に対する配慮とは到底いえず、かえってB4支社が組合との折衝の開始時期を遅らせるために行ったと推認され、B2駅構内に組合事務所として貸与するスペースがないという状況を作り出そうとする意図があったのではないかと強く疑われる。
 これは、組合に対してはB2駅構内における組合事務所の貸与を回避しようとする意図と同視でき、会社には、組合とC1組合とを差別する意思(組合差別意思)があったと認めるのが相当である。
3 C1組合に対して組合事務所を貸与しながら組合には貸与しなかったことについて、会社の主張は合理的な理由とは認められず、C1組合に対して特別な便宜を図っているなど、組合差別意思の存在が認められる。
 したがって、当該行為は、労組法第7条第3号の支配介入に該当すると判断するのが相当である。  
掲載文献   

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