労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成28年(不)第3号
不当労働行為救済申立審査再開事件 
申立人  X1組合 
申立人  X2(個人) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年1月12日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   兵庫県労委平成21年(不)第14号事件は、会社の行った下記①~④の行為が、不当労働行為に当たるかが争われた事件で、兵庫県労働委員会は、下記④の申立てについて、会社に対し、誓約文の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
① 平成20年度冬季賞与(以下「本件賞与」という。)において、従業員の業務の評価を行い、「収益改善協力金」という名目で、5万円を上限として賞与の加算を行った際、C1労組の組合員及び非組合員には、その上限となる5万円の支給しながら、X1組合の組合員には恣意的な評価をして差をつけた額を支給したこと
② 平成21年度夏季賞与について、申立人組合の組合員に対し、C1労組の組合員及び非組合員と差をつけた額を支給したこと
③ X2に対して、申立人組合の組合員であるが故に譴責処分を行ったこと
④ 申立人組合との平成21年度春闘及び夏季賞与に係る会社の対応
 本件は、原命令のうち、大阪高裁の取消判決が確定した、上記①の救済申立てについて、兵庫県労働委員会が審査を再開した事件で、同労委は、バックペイを命じた。  
命令主文   被申立人会社は、別紙目録記載の申立人X1組合の組合員に対して、平成20年度冬季賞与について、5万円と収益改善協力金として既に支給した金額との差額を支払わなければならない。  
判断の要旨  1 収益改善協力金の支給において、C1組合の組合員は、高い評価を受けられないことが客観的に明らかと思われる少数の者を除いては、全員が上限額を支給されているのに対し、申立人組合の組合員のうちで上限額を支給されている者は同組合員の1割にも満たず、C1組合の組合員と比較して支給額に顕著な差があり、全体として相当に低く評価されていた。
2 収益改善協力金に係る一次評価の評価項目は、各従業員の業務に対する従業員と管理職それぞれの認識を明らかにし、それらを踏まえて会社が全体的な見地から従業員の被申立人会社に対する貢献度等を評価するものと認めることができるから、これ自身、不合理であるとは認められない。
 しかしながら、二次評価は、B2が行ったものであるところ、二次評価の具体的基準は本件全証拠によっても明らかでなく、B2自身も原命令に係る行政訴訟での尋問において、二次評価における個々の従業員に対する評価の理由、根拠につき合理的な説明をしたとはいえない。
 一般に個々の従業員の勤務実績や日頃の仕事ぶりに関しては、B2よりも、日常的に従業員と接している現場の管理職の方が正確に把握しているものと考えられるから、管理職が行った一次評価を二次評価で修正するには、それなりの合理的理由及び根拠があったはずであると推測されるが、B2がこの点につき首肯できる説明をできていないことからすれば、二次評価における評価内容の修正が従業員の勤務実績や日頃の仕事ぶり以外の理由に基づくものではないかとの疑いを抱かせる。そして原命令に係る行政訴訟において新たに提出された証拠によると、二次評価において、同一営業所内で他の従業員より一次評価における評価が低かったり、他の従業員と評価が同程度であったC1組合の組合員に対して、不自然に高い評価がされたと考えられる例が見られる。
3 また、B2は、収益改善協力金の評価に当たり、各営業所長に対してメールを送信し、B4からきた給料やボーナスでC1組合や非組合員と大きな比較ができる様に追い込みましょうなどという内容のメールを転送するとともに、これに「皆さんは組合を離れ、よくやってくれた人に良い点をつけてください。」と付記している。
 B2の行為は、B4のB2に対する個人的な発言を照会する形をとりながら、収益改善協力金の支給に係る評価に当たり、各営業所長に対して、暗に申立人組合の組合員の評価を低くするよう促す一方、申立人組合を離脱した者には高い評価をつける方向で調整を図ろうとするものであったということができ、たとえそうでないにしても、少なくとも、内容を閲読した各営業所長の側でそのような指示をされたものと理解することを予期してメール送信がされたものとみるのが相当である。
 そうすると、二次評価を行ったB2には、収益改善協力金の支給に当たり、申立人組合を嫌悪し、申立人組合の組合員に対する支給額を低くしてC1組合の組合員及び非組合員との間に明らかな差異を設けようとする意図があったことがうかがえる。
4 上記1ないし3の各事情を考慮すると、申立人組合の組合員とC1組合の組合員との間に生じた収益改善協力金の支給額の格差は、被申立人会社の申立人組合の組合員に対する不利益取扱いによって生じたものと推認するのが相当である。
 他方、申立人組合の組合員とC1組合の組合員とは従事する業務において同質性が認められるところ、本件全証拠によっても、申立人組合の組合員の勤務実績や成績あるいは日頃の仕事ぶりが、C1組合の組合員と比較して全体的に劣っていたことを推認させる事情は見当たらない。
5 以上によれば、被申立人会社が、多くの申立人組合の組合員に対して支給額の上限である5万円を大きく下回る額の収益改善協力金を支給したことは、申立人組合の組合員を申立人組合に所属することを理由として不利益に取り扱ったものと認めるのが相当であって、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。また、そのことによって申立人組合の組合活動等の弱体化を意図して支配介入を行ったものとして、同条第3号の不当労働行為にも該当する。  
掲載文献   

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