概要情報
事件番号・通称事件名 |
徳労委平成28年(不)第1号 不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成28年12月22日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
組合は、平成27年4月10日、会社を相手に団体交渉の早急な開催を求めて、徳島県労働委員会に労働争議のあっせん申請を行い、会社が応じたことから、同労働委員会において7回にわたるあっせん(以下、7回にわたるあっせんを「あっせん」という。)が行われた。
徳島県労働委員会は、当該あっせんにおいて、団体交渉の開催手続きや交渉の進め方など、団体交渉ルール(以下「団交ルール」という。)の策定を目指すとともに、給与体系、ETC二重引き問題及びA2の懲戒解雇問題等を中心に、労使双方の主張の整理を行ったが、平成28年2月24日、結局、当該あっせんは、打ち切った。
本件は、会社が、組合から、平成28年3月2日以降、5回にわたって、申し入れられた、、団交ルール及び上記あっせんで主張の整理を行った給与体系等の事項(以下、これらの事項を「あっせんでの要求事項」という。)並びにそれ以外の組合員の労働条件等に関する事項に係る団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、徳島県労働委員会は、会社に対して、誠実団交応諾、文書の交付及び掲示等を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人から平成28年3月2日付け、同月19日付け、同年4月2日付け、同年5月14日付け、同年6月2日付けで団体交渉の申入れがあった事項について、申立人との間で、速やかに日程を調整し、団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、前項の団体交渉において、必要に応じ、関係資料などを用いて自らの主張や回答の根拠を具体的に説明し、また申立人の要求に対し対案を提示するなど、誠実に団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、本命令公布後10日以内に、申立人に対し、次の文書を交付し、併せて縦1メートル、横2メートルの白紙に次のとおり明瞭に記載して、会社内の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
(注 文書を掲載した日を記載すること。)
組合
執行委員長 A1様
Y会社
代表取締役 B1
当社が、組合から、平成28年3月2日付け、同月19日付け、同年4月2日付け、同年5月14日付け、同年6月2日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、徳島県労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
4 被申立人は、第1項ないし第3項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
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判断の要旨 |
1 義務的団体交渉事項に当たるか。
(1) 使用者が団体交渉に応じるべきは、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や、当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの、いわゆる義務的団交事項についてである。
このことを、本件団交申入れに係る団交事項についてみると、あっせんでの要求事項のうち、団交ルールについては、組合と会社との団体的労使関係に関する事項であること、給与体系やETCの二重引き問題、A3の懲戒解雇問題は、組合員である労働者の労働条件であることに疑いはない。
さらに、A2分会長の物損事故、安全衛生員会の設置、配車差別、無事故手当についても明らかに組合員である労働者の労働条件であるといえる。
本件団交申入れにより組合が求めた、これら団交交渉事項の全ては、会社に処分可能な事項であるから、いずれも義務的団体交渉事項に該当することは明白である。
(2) 義務的団体交渉事項について、団体交渉の申入れを受けた会社は、団体交渉を拒否する正当な理由がない限り、書面の交換や電話などによる協議ではなく、直接話し合う方式により団体交渉に応じなければならない。
この点について、会社は、団体交渉にそぐわない議題、理由がない議題等については、団体交渉の必要がないと考えているとした上で、組合の申入れ議題は、団体交渉が必要でないと判断しており、団体交渉が必要であると会社が理解し、判断した場合は団体交渉を開催する旨を述べ、義務的団体交渉事項かどうかについて、会社が判断できるかのような主張をしているが、そのような主張は、団体交渉を拒否する正当な理由として、到底認めることはできない。
2 その他団体交渉を拒否する正当な理由があるか否か。
① 会社は、これまでの団体交渉が必要なものについては誠実に応じてきたと主張しており、あっせんでの要求事項については、過去の団体交渉やあっせんにより、交渉や話合い(以下「交渉等」という。)が行われた事実がある。
② あっせんでの要求事項について過去の団体交渉やあっせんにより、交渉等が尽くされたか否かについて検討すると、
ア まず、過去の団体交渉においては、、会社は、A3の解雇理由を明らかにせず、燃料費の調整やETCの二重引き問題について、資料等による具体的な説明を行っておらず、交渉等が尽くされたとは全く認められない。
イ また、その後に行われたあっせんにおいては、団交ルールの策定を初めとして、あっせんでの要求事項について、労使双方の主張を整理するなど、団体交体交渉を行う上での前提事項が話し合われたに過ぎない。
したがって、あっせんでの要求事項について、団体交渉を継続する余地がないほど、交渉等が尽くされたとはいえず、上記会社の主張は、本件団交申入れに応じない正当な理由としては認められない。
3 本件団交申入れに、会社が応じないことに正当な理由はなく、このような会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
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掲載文献 |
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