労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  群労委平成年28(不)第4号
ホテル1C不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年11月24日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社の経営するホテルに勤務していたA1が、平成27年10月27日、代表取締役B1に対し、申立人組合に加入していることを告げた途端に解雇を告げられ(以下「本件解雇通告」という。)、同年11月26日付けで解雇となったこと(以下「本件解雇」という。)が労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号に該当する不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 群馬県労働委員会は、会社に対し、本件解雇通告による解雇の取消し、バックペイ等を命じた。  
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合の組合員であるA1に対し、平成27年11月26日付け解雇をなかったものとして取り扱うとともに、同人との雇用契約が従前と同じ条件で平成28年1月1日に更新されたものとして取り扱い、解雇の翌日から更新した契約が終了する同年9月末日までの賃金相当額(略)及びこれらに対する年6分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
年 月 日

 組合
  執行委員長     A1様
会社         
代表取締役 B1
 当社が、貴組合組合員のA1氏に対して、平成27年11月26日付けで解雇したことは、群馬県労働委員会において、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前2項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。  
判断の要旨  1 本件解雇の合理的理由について
(1) 会社は、本件解雇はA1組合員の勤務態度不良や業務上のミス等を理由とするものである旨主張する。
① A1は他のスタッフよりも特別清掃を行った回数が少なく、何度か業務上のミス等があったことが認められる。
② しかし、B1社長の電話以外、会社が本件解雇通告の前にA1に対し注意・指導を行っていた事実は窺われず、A1のミス等が、度重なり行われ、他のスタッフに多大な負担や迷惑をかけていたものであったとはいえない。
③ また、会社は、これらのミス等により客からクレームが来ていたと主張するがその疎明はなく、A1のミス等が会社に金銭上の重大な不利益をもたらしたといった事情は認められない。
 さらに、B1社長から新人研修の指導を頼まれていることからしても、A1が全く仕事をせず、日常業務を覚えていない従業員であったとはいえない。
 そうすると、A1のミス等は、解雇につながるほど重大なものであったとまでは認められず、会社の主張は採用できない。
(2) 本件解雇に至るまでの手続について
① 会社の就業規則には解雇に関する規定があるが、本件解雇の通知にはその理由が記載されておらず、会社がいずれの規定に該当するとして解雇したのか明らかでない。
② 本件解雇通告までに、A1が会社から処分を受けた事実は認められない。さらに、会社はA1に対して弁明の機会を与えることもなく、本件解雇通告を行い、即日、本件解雇を書面で通知している。
③ そうすると、本件解雇が行われるまでの手続は性急に過ぎるものであり、手続的問題があったといわざるを得ない。
(3) したがって、本件解雇に合理的理由は認められない。
2 本件解雇は不当労働行為意思によるものかについて
(1)会社はA1が他のスタッフに組合に加入しないかと勧誘したことについて、迷惑だとスタッフから相談を受けていたと主張するが、相談時期に関する疎明はない。そうすると、会社がA1の組合加入を知ったのは、B1とA1の電話における組合加入通告のときであったこととなる。
(2) その電話では、B1はA1に対して業務上の注意を行い、A1が「わかりました」と述べたところ、B1社長は「がんばりましょう」と発言している。使用者が解雇しようとする者に「がんばりましょう」と発言するとは考え難く、この時点で、B1はA1に不満は持っていたもののA1を雇用し続ける意思を有していたといえる。
(3) それにもかかわらず、B1はA1が組合加入通告をした途端に解雇通告を行っており、本件解雇通告が同人の組合加入通告を発端として行われたことは明らかである。
(4) よって、本件解雇は、会社の不当労働行為意思によるものと認められる。
3 したがって、本件解雇の合理性は認められず、また、会社の不当労働行為意思が認められるので、本件解雇は労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であると判断する。  
掲載文献   

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