労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成27(不)第3号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社({会社」) 
命令年月日  平成28年12月22日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社は、平成22年の春闘交渉において、職能給の引上げと併せてローコストオペレーション(乗務員の終業点検を従前の10分間から5分間に短縮し、当該日に乗務する最終バスの入庫時刻の5分後を退勤時刻とするもの)の実施を提案し、ローコストオペレーションの実施に合意したC労組とは春闘交渉を妥結し、それに合意しない組合とは春闘交渉を妥結しなかった。
 その後の春闘交渉においても、会社は、ローコストオペレーションの実施に係る会社提案に合意することを交渉妥結の条件とし、組合がそれに応じず、会社と組合は交渉を妥結していない。
 本件は、会社が、①平成26年及び27年の春闘交渉において、組合には、ローコストオペレーションの実施に係る提案に合意することを賃金の引上げの条件とする一方、C労組に対しては条件を付していないこと、②申立人組合の組合員に対し、平成26年及び27年のC労組との妥結内容と同様の内容で平成26年4月1日以降の職能給及び臨時給を支払わないことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、兵庫県労働委員会は、会社に対し、バックペイを命じた。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合の組合員であるA2、A3、A4及びA5の平成26年4月1日以降の職能給について、1人当たり500円及び各人の考課ごとの加算額(S評価又はA評価は500円、B評価は300円、C評価又はD評価は100円)を増額し、既支払額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合の組合員であるA2、A3、A4及びA5の平成27年4月1日以降の職能給について、1人当たり700円及び各人の考課ごとの加算額(S評価又はA評価は500円、B評価は300円、C評価又はD評価は100円)を増額し、既支払額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、申立人組合の組合員であるA2、A3、A4及びA5の平成26年及び27年の臨時給について、各人の基本給の4か月分相当額から既に平成26年及び27年の臨時給としてそれぞれ支払われた額を差し引いた額を支払わなければならない。  
判断の要旨  1 使用者が同一の労働条件を提示している場合であっても、一方の労働組合にとって受け入れがたいような労働条件であることを認識し、その労働組合からの説明の要求にも十分な応答をしないなどその労働条件に固執する態度をとることによって、一方の労働組合が交渉の妥結に至ることができず、他方の労働組合の組合員が得た利益を受けることができないことによって動揺が生じ、労働組合が弱体化することを予測できるにもかかわらず、使用者がそうした労働条件に固執する場合には、組合嫌悪の意図があるとして、支配介入の成立が認められる場合があると解すべきである。
2 本件について
① 平成22年の春闘交渉以降の交渉結果からすると、被申立人会社は、少なくとも平成22年から25年までの春闘交渉において申立人組合に提示したローコストオペレーションの実施という条件を、平成26年及び27年の春闘交渉の賃上げの条件にしても、申立人組合が受け入れる可能性がないことについて認識していたということができる。
② それにもかかわらず、平成26年及び27年の春闘交渉において、被申立人会社は、申立人組合に対して、ローコストオペレーションの実施の受諾を平成26年及び27年の職能給増額の条件とする一方で、平成22年春闘交渉で行った説明に加えて別の理由を付加するなど申立人組合の納得を得るような説明をした事実は認められない。
③ また、被申立人会社は、申立人組合が終業点検を5分間で実施することは困難であると主張し、時期は定かでないものの平成23年以降の春闘交渉において申立人組合から被申立人会社に対し、終業点検が5分間で可能か否かについて現地で確認したいと申入れをしたにもかかわらず、5分間で実施が可能なことについて作業手順を示すなど具体的な根拠を示して説明したり、申立人組合の申入れに応じて現地での確認作業をしたりして、申立人組合の納得を得るような説明をしようとした事実も認めることができない。
④ そうすると、被申立人会社は、申立人組合にとって受け入れがたいような労働条件であることを認識しながら、申立人組合からの説明の要求にも十分な応答をせず、ローコストオペレーションの実施を職能給の増額の条件とすることに固執する態度をとっていたと評価できる。
⑤ また、平成26年及び27年において職能給が増額されないことからすると、被申立人会社は、申立人組合が交渉の妥結に至ることができず、C労組の組合員が得た利益を受けることができないことによって動揺が生じ、申立人組合が弱体化することを予測できていたというべきである。
⑥ 以上のとおり、被申立人会社は、ローコストオペレーションの実施を職能給の増額の条件とすることは、申立人組合にとって受け入れがたいような労働条件であることを認識し、申立人組合からの説明の要求にも十分な応答をしないなどその労働条件に固執する態度をとり、そのことによって、申立人組合が交渉の妥結に至ることができず、C労組の組合員が得た利益を受けることができないことによって動揺が生じ、申立人組合が弱体化することを予測できるにもかかわらず、上記の条件に固執していたのであるから、組合嫌悪の意図が認められる。
⑦ したがって、被申立人会社が、申立人組合の組合員に対し、平成26年及び27年の春闘交渉におけるC労組との妥結内容と同様の内容で平成26年4月1日以降の職能給及び臨時給を支払わないことは、申立人組合の組合員であること故のあるいはその組合活動をしたことの故の不利益な取扱いであり、同時にこれによって申立人組合の組合員を動揺、混乱させ、申立人組合の弱体化を企図した支配介入であるから、労組法第7条第1号及び第3号に該当する。
3 なお、被申立人会社は、被申立人会社と申立人組合との間では、ローコストオペレーションの実施について妥結していないため、申立人組合の組合員の労働時間は、被申立人会社の他の従業員よりも5分長くなり、労働時間の短縮なく、賃上げを実施すると、申立人組合の組合員は、他の従業員よりも多額の賃金を受け取ることとなり、申立人組合の組合員を他の労働者よりも厚く待遇することになると主張する。
 しかしながら、被申立人会社は、平成22年の春闘交渉において、ローコストオペレーションの実施により減額となる時間外勤務手当の相当額は820円であり、増額する職能給1,200円との差額の380円が賃上げになると説明したことからすると、それから4年も経過した平成26年春闘交渉において、C労組と同様の内容で賃上げをしたからといって、申立人組合の組合員は、他の従業員よりも多額の賃金を受け取ることになるとはいえず、被申立人会社の主張には理由がない。  
掲載文献   

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