事件番号・通称事件名 |
神労委平成26年(不)第1号・26年(不)第8号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y1会社 |
被申立人 |
Y2会社 |
命令年月日 |
平成28年12月14日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、Y1会社からY2会社への事業譲渡に際し、Y1会社が、
①組合員に対し、組合からの脱退がY2会社への採用条件であると告げたこと、②組合から脱退しなかった組合員11名に対し、
Y2会社への採用の推薦を行わなかったこと、③Y2会社に採用された場合に退職金を割り増すこととし、Y2会社に採用されな
かった当該11名の組合員に退職金の割増しを行わなかったこと、④Y2会社が、組合脱退を表明したY1会社従業員を全員採用
する一方で当該11名の組合員を採用しなかったこと等が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、神奈川県労働委
員会は、Y2会社に対し、組合員11名の採用、バックペイ及び文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人Y2会社は、別表1記載の11名の申立人組合員を平成
26年2月1日をもって採用したものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人Y2会社は、平成26年2月1日以降、別表1記載の11名の申立人組合員が採用されるまでの間について、被申立
人Y2会社における基準に従い、別表1記載の申立人組合員に対して、採用されていたならば支給されたはずの賃金相当額に、年
率5分相当額を加算した額の金員を速やかに支払わなければならない。
3 被申立人Y2会社は、本命令受領後速やかに、下記の文書を申立人に手交しなければならない。
記
(省略)
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判断の要旨 |
1 Y1会社が、組合員である従業員に対して、Y2会社に採用され
るためには組合からの脱退が条件であるなどとしたことがあったか否か。また、あったとした場合、そのようなY1会社の行為は
組合に対する支配介入に当たるか否か。
平成25年12月8日に開催された忘年会におけるB1社長の発言等から、Y1会社が、Y2会社に採用されるためには組合か
らの脱退が条件であるなどとして脱退勧奨を行った事実が認められる。Y1会社は、脱退勧奨には理由があり、不当労働行為意思
に基づいて行っていない旨を主張するが、Y1会社の意図がどうであれY1会社が行った脱退勧奨が組合の運営に影響を及ぼすこ
とは明らかであり、Y1会社の脱退勧奨は支配介入に当たる。
2 Y1会社のY2会社に対する事業譲渡に際し、Y1会社が組合員11名のみY2会社に対する採用の推薦を行わなかったこと
は、組合員であることを理由とした不利益取扱いか否か。また、同時に、組合に対する支配介入に当たるか否か。
Y1会社が組合員11名のみY2会社に対する採用の推薦を行わなかったことは、組合員11名が組合員であることを理由とす
る不利益取扱いである。そして、Y1会社のこのような行為は、Y2会社に推薦する従業員(船員)から組合員を排除することを
目的としていることが明らかであるから、組合に対する支配介入にも当たる。
3 Y1会社が組合員11名にのみ退職金の割増を行わなかったことは、組合員であることを理由とした不利益取扱いか否か。ま
た、同時に組合に対する支配介入に当たるか否か。
上記2及び下記4のとおり、Y1会社が組合員11名の推薦を行わなかったこと、Y2会社が組合員11名を採用しなかったこ
とがそれぞれ不利益取扱い及び支配介入に当たることからすると、Y1会社による推薦が行われなかった結果組合員11名がY2
会社で採用されず、そのことを理由としてY1会社が組合員11名に対して退職金の割増金を支払われなかったことも、当然、組
合員11名が組合員であることを理由とした不利益取扱い及び支配介入に当たる。
4 Y2会社は、労組法上の使用者に当たるか否か。Y2会社が労組法上の使用者に当たる場合、Y1会社が採用の推薦を行わな
かった組合員11名をY2会社が採用しなかったこと(以下「本件不採用」という。)は、組合員であることを理由とした不利益
取扱いか否か。また、同時に、組合に対する支配介入に当たるか否か。
(1) 本件事業譲渡においては、Y1会社の従業員は基本的にはその全員がY2会社に採用されることが予定されていたと考え
るのが相当である。そうであれば、Y2会社は、組合員11名にとって近い将来における労働契約の成立について現実的具体的可
能性があったとみることができるのであって、労組法上の使用者に当たる。
(2) Y1会社とY2会社は、組合員11名をY2会社から排除し、それを正当化するために事業譲渡契約書(Y2)を作成
し、その規定に基づいて推薦、選考を行ったと推忍できる。確かに、Y2会社は、Y1会社から推薦がなかったことから、組合員
11名の採用の可否の検討すら行っていないが、Y1会社と連携して組合員11名を排除したものであって、それはY2会社とし
て組合員11名を採用しなかったことに他ならない。そして、本件不採用は、従前、Y1会社と雇用関係にあった組合員11名に
対して解雇という深刻な不利益を与えたものに等しく、これによる組合運営への打撃は甚だしいと判断できる。よって、労組法上
の使用者であるY2会社が組合員11名を採用しなかったことは、組合員11名が組合員であることを理由とした不利益取扱いで
あり、同時に支配介入に当たる。 |
掲載文献 |
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