労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成24年(不)第84号
川崎近海汽船不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年11月1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合と会社は、会社から会社指定医師の復職可能の診断がでない限り、平成23年12月16日(以下「平成」の元号を省略)の休職期間満了をもって退職とする旨通知をされた後に組合に加入した組合員A2の「解雇問題」について、同年12月7日及び同月15日に団体交渉を行ったが解決せず、会社は、同月16日、A2を休職期間満了による退職扱いとした。
 組合と会社は、24年7月3日にもA2の解雇問題について団体交渉を行ったが、依然として解決しなかった。
 この間、組合は、23年12月15日及び24年7月20日、金銭による解決案を提示したが、会社は、いずれも拒否した。
 本件は、組合が申立人適格を欠いているか否か、上記3回の団体交渉における会社の対応が、団体交渉拒否、支配介入に当たるか否かが争われた事案であり、東京都労働委員会は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 却下を求める被申立人会社の主張について
 組合が、C1労組から分裂したか否か、あるいは分裂前のC1労組を受け継いでいるか否かにかかわらず、組合が、労働組合法上具備すべき要件を備えた規約を有し、独自の決議機関・執行機関等を有するなど、労働組合としての組織の自主性及び民主性を持つ独立した労働組合であると認められるのであるから、組合が、申立人適格を有することは明らかである。
 したがって、本件申立ては申立人適格を欠き、却下されるべきであるという会社の主張は採用することができない。
2 本件団体交渉について
① 第1回及び第2回の団体交渉経過をみると、まず、第1回団体交渉で、A2が会社指定のC2医師の診断を受けることが合意され、A2が、会社指定医師であるC2医師と面談した結果、C2医師は、23年12月16日の復職は困難であるとの診断を行い、この診断に基づいて、会社は、第2回の団体交渉において、A2を12月16日付けで退職とする旨を述べた。
 これに対して、組合は、解決金として年収5年分相当額の支払を提案したが、会社は12月21日に、組合の解決案は受け入れられない旨を回答した。
 ここまでの経緯をみると、会社は、労使合意に基づいてA2をC2医師に受診させ、その結果を踏まえて同人を退職とする旨を述べたのであって、結果として、組合の提出した主治医による診断書を採用しなかったものではあるが、その対応に問題があるとまではいえない。
② 第3回団体交渉では、組合が、12月16日付けで退職とする旨の会社の判断は早すぎたのではないか、A2の病気の原因は会社にあると考えているので一言謝罪してほしい、訴訟も準備しているなどと述べたのに対して、会社は、A2の病気は、気の毒であるが、その原因が会社にあるとは考えていないなどと述べ、組合は、23年12月の解決金年収5年分の要求は撤回し、近く円満解決に向けた具体案を示す旨を述べた。
 組合は、24年7月20日、A2の21年度年収を基準として解決金3か年相当分、19年の仕事納め社内懇親会における当時のB6社長の暴言について、解決合意中に謝罪の意を盛り込むことを解決案として提案したが、会社は、8月20日、いずれも拒否する旨を回答した。
  以上の経過をみれば、組合は、A2の病気の原因は会社にあると考えている旨の主張をしたものの、これを否定する会社の回答に具体的な反論を行うことなく解決案の提案を行い、これを会社が拒否したのであるから、会社の対応が不誠実であったということはできない。
③ したがって、平成23年12月7日、同月15日及び24年7月31日の団体交渉における会社の対応は、労働組合法第7条に該当しない。  
掲載文献   

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