労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成24年不第92号
多摩共同配送センター不当労働行為事件 
申立人  X1組合、X2組合、(X1組合及びX2組合「組合ら」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社、Y3会社、(Y1会社及びY2会社「会社ら」、Y1会社、Y2会社及びY3会社「グループ3社」) 
命令年月日  平成28年10月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①平成24年11月9日、組合らが、パート社員への残業代の未払いに抗議してグループ3社の本社前でビラ貼りと抗議行動(以下「11月抗議行動」という。)を行ったところ、会社らが、同日及び同月15日、全従業員宛てに、申立外C1社から受託している業務について、「緊急メッセージ」と題する文書を掲示したこと及びC1社へ業務委託契約の返上を申し出たこと、②A2~A7を含む、組合員ら十数名が、会社らの代表取締役B1の自宅を訪れて、Y2会社の幹部従業員による不正行為の疑惑への対処を要求したところ(以下「社長宅要請」という。)、その後、会社がA2の給与を減額するなど、A2ら組合員7名に対して不利益な取扱いをしたこと、③一時金の支給等を交渉議題とする、平成24年1月19日及び同年11月8日の団体交渉において、会社が不誠実な対応をしたことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 緊急メッセージの掲示及びC1社への業務委託契約の返上について(争点1)
(1)第1回及び第2回緊急メッセージの掲示について
① 11月抗議行動は、グループ3社の本社の前で行われ、抗議行動の約1時間後に第1回緊急メッセージが掲示されており、従業員が緊急メッセージと11月抗議行動とを関連づけて捉えたであろうことは否定できないが、11月抗議行動の直後、C1社から業務委託契約の形を見直す可能性に言及された会社らが相当の危機感を抱き、そのような状況が生じていることを従業員に知らせようとしたとしても無理からぬところがある。
② また、第1回及び第2回緊急メッセージは、組合らによる社前抗議や組合活動について一切触れられておらず、その内容も多分に抽象的でもあったのであるから、会社らが、直接、組合らに対する批判や意見を表明したものとみることはできない。
③ そして、組合らは、第1回及び第2回緊急メッセージについて抗議を行っているが、これら緊急メッセージが意味のわからない抽象的な内容であり、組合に対する圧力や嫌がらせである等の抽象的な抗議にとどまっている。
④ さらに、第1回及び第2回緊急メッセージを見た従業員が、組合らの抗議活動がC1社との関係悪化を招いたなどとして、支部執行部や組合員らを批判した等の事実もなく、第1回及び第2回緊急メッセージの掲示が、組合活動に具体的な影響を与えたとも言い難い。
⑤ 加えて、会社らと組合らとは、労使関係が緊張化した事態の収拾を図り、業務委託契約の維持に向けて労使で努力することに合意するとともに、会社らは緊急メッセージを撤回しており、そして、会社らと組合らは、労使連名の文書にてC1社に契約維持を要請するなどした結果、業務委託契約は現状が維持されるに至っている。
⑥ 以上から、第1回及び第2回緊急メッセージの掲示が、組合活動に具体的な影響を及ぼすものであったということはできず、また、会社らは、組合らと事態収拾を図るとともに、労使双方の合意により緊急メッセージの撤回をしていることも考え併せると、会社らが第1回及び第2回緊急メッセージを掲示したことが、組合運営に対する支配介入に当たるということはできない。
(2)C1社への業務委託契約解除の申出について
 (C1社元事務部長C2が語った内容の正確性や真実性を裏付ける具体的な事実の疎明はないこと等から)会社らが、ストライキ対策のために、C1社との業務委託契約の解除を企図したとする事実を認めることはできず、(それに関する)組合らの主張を採用することはできない。
2 A2の給与の減額について(争点2)
  Y2会社が、仮に、A2が社長宅要請に参加したことを契機として同人の給与減額を行っていたとしても、同社が、社長宅要請を組合活動と認識し、反組合的意図をもって同人の給与減額を行ったと認めることはできず、同社がA2の給与を減額したことが、組合員であること若しくは正当な組合活動をしたことを理由とした不利益取扱い、又は組合運営に対する支配介入に当たるということはできない。
3 A5の定年後再雇用における給与について(争点3)
  Y1会社がA5の嘱託再雇用の給与を同人の定年退職時の実際の給与額を基準として決定したことは、同社が保管する覚書の内容に従って決定したものであり、労使で合意していた内容を隠蔽したり、同人を意図的に不利益に取り扱おうとしたとは認められず、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入であると認めることはできない。
4 A7に対する特別職能給の支給拒否について(争点4)
  Y2会社がA7に特別職能給を支給しなかったことは、同人が健康上の理由により、大型車両に乗務して配送業務に従事することができず、フォークリフト業務に配置転換されていたことから、同社が理解していた支給要件に基づき同人を扱ったものであり、反組合的意図をもって、組合らと締結した協定書の解釈を事後的に曲解したり、急遽、特別職能給を変更したとみることはできない。
  よって、Y2会社がA7に特別職能給を支給しなかったことが組合運営に対する支配介入に当たるということはできない。
5 A3及びA4に対する会社らの扱いについて(争点5)、
(1)A3が、社長宅要請以降、自らの権限や与えられた役割を剥奪や制限されたなど、具体的な不利益を受けたといえる事実を認めることはできず、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入があったと認めることはできない。
(2)会社らが、A4がX2組合に加入したことに対する報復として、同人の仕事外しを行い、精神的な嫌がらせをしたとの組合主張を採用することはできず、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入があったと認めることはできない。
6 A6の骨折に対する対応について(争点6)
 Y2会社が、A6の骨折後に直ちに労災申請を行わなかったことには相応の理由が認められ、また、面談記録を労基署に提出したことが労災認定を妨害したものとみることはできず、これらが、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入に当たるということはできない。
7 24年1月19日及び11月8日の団体交渉について(争点7)
(1)24年1月19日の団体交渉について 
 会社側弁護士が団体交渉において「聞けや、ボケ」と発言したことは認められるが、上記発言は、団体交渉の場が騒然となる中で、突発的、偶発的に出た発言というべきであり、団体交渉を紛糾させたり、組合員らを威嚇することを意図して発したとまでは認められず、その後、会社らが謝罪していることも考慮すると、この一言の発言のみをもって、誠実交渉義務に反するとまではいうことはできない。
(2)24年11月8日の団体交渉について
ア ロータリークラブ会費開示要求について
 団体交渉にて、会社らが、いささか唐突に回答を求められたロータリークラブ会費について、詳細な金額や内訳を回答しなかったとしてもやむを得ないというべきであり、また、その後の団体交渉等において、組合らが改めて正確な金額の回答を求めた事実もないのであるから、会社が、ロータリークラブ会費を概算で回答し、詳細な金額を回答しなかったことが不誠実な団体交渉に該当するということはできない。
イ 弁護士費用及び詳細な費用項目の開示要求について
 会社らは、一時金を支給できる原資がないことについて具体的に説明するために、その根拠として必要な範囲の財務資料を開示していたというべきであり、一方、組合らが要求した「経費の細目」の具体的内容やその開示の必要性が十分に説明されていたとはいえないのであるから、会社らの対応が不誠実な団体交渉に当たるということはできない。
8 A8の配置転換等について(争点8)
(1)A8の配置転換について
 Y2会社は、A8の公然化前の事情に基づき、同人の公然化前に業務変更することを決定し、実行していたということができ、また、同人の公然化後に正式に業務変更を指示する際に、班長の職位や基本給も変更しておらず、さらに、公然化後のY2会社の対応に不自然な点も認められないことから、公然化を契機として同人を殊更に不利益に扱ったと認めることはできない。
 よって、A8の配置転換に伴う業務変更が、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入であると認めることはできない。
(2)会社備品の共用使用の指示等について
  A8に対するノートパソコンの共用使用及び携帯電話の返却の指示は、配置転換により変更された業務における必要性に応じたものであり、他の従業員との不合理な差異が認められる事実も認められないのであるから、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入と認めることはできない。
9 A5の雇止めについて(争点9)
  Y1会社が、A5を雇止めとしたことは、雇用契約が満了するまでに、同人が労務提供が可能な健康状態であることを確認できなかったことを理由とするものであり、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入に当たるということはできない。
10 雇用主以外の2社ないし1社の使用者性について(争点10)
  争点1ないし9における雇用主の行為は、いずれも不当労働行為に当たらないのであるから、仮に、組合らの主張するとおり、Y1会社、Y2会社及びY3会社の三社が実質的に一体であったと評価したとしても、争点1ないし9において、雇用主以外の2社ないし1社が雇用主と一体となって不当労働行為を行ったということはできない。  
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