概要情報
事件番号・通称事件名 |
栃労委平成25年(不)第2号 日祥運輸倉庫(株)不当労働行為審査事件
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申立人 |
X1組合 |
申立人 |
X2(「個人」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成28年11月2日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、
① 会社の賃金等の労働条件に不満を募らせていた従業員6名がX1組合に個人加入し、X1組合A1支部結成に向けて準備を進めていたところ、会社が支部執行委員長に就く予定であったX2を解雇したこと、
② A3組合員及びA4組合員に対して重労働である業務ばかりを割り当てる配車差別を行い、組合の弱体化を図ったこと、
③ 会社が、従業員C1を介して、A3に対して、組合からの脱退を働きかけたこと、
④ 会社が従業員の組合敵視の雰囲気を醸成し、その結果、会社従業員がA4に対して組合脱退慫慂及び退職勧奨を行ったこと及び会社のB2営業所長がこれを了知しながら制止しなかったこと、
⑤ 会社が、組合脱退慫慂により精神疾患を発症したA4が申請した特別休暇を不承認としたこと、
⑥ 平成25年11月14日の団体交渉において、直前に提起された訴訟で審理する内容と団体交渉事項が重複しているとして、議題の一部に回答しなかったこと、
が、それぞれ、不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、栃木県労働委員会は、上記④及び⑥の申立てについて、会社に対し文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人会社は、下記文言を記載した文書を速やかに申立人組合に手交しなければならない。
記
当社が、平成25年10月7日に当社従業員が貴組合の組合員A4氏に行った言動に対して適切に対応しなかったこと、平成25年11月14日に開催された第4回団体交渉において一部の議題について回答をしなかったことは、それぞれ労働組合法第7条第3号、第2号に該当する不当労働行為であると栃木県労働委員会において認定されましたので、貴組合及び組合員に対し、深く謝罪するとともに、今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
平成 年 月 日(注:交付する日を記載すること)
組合
執行委員長 A1様
会社    
代表取締役 B1
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件解雇について(争点1)
本件解雇においては、その処分の重さや手続きなど合理性及び相当性において問題があるものの、本件解雇の時点において会社が組合支部結成の動きを察知していたと断ずることはできないというべきであり、本件解雇は労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当しないと判断する。
2 配車差別について(争点2)
A3とA4に対する配車の偏りには業務の内容に係る不利益性は認められず、それぞれに対する配車の偏りにはそれぞれ個別にやむを得ない事情があったと認められる。また、A3への配車がなかったことについては、A3と配車係の感情的な対立によるものと認められ、会社が、意図的にA3に配車しなかったと言うことはできない。したがって、労組法第7条第1号の不利益取扱い及び3号の支配介入には該当しないと判断する。
3 A3に対する組合脱退慫慂について(争点3)
平成25年4月22日の件について、C1がA3に対して組合脱退慫慂を行った事実が認められないほか、同月27日の件については、C1のA3への組合脱退慫慂行為は認められるものの、会社の指示があったことを示す事実はなく、C1の個人的意思による行動であると認められる。したがって、当該組合脱退慫慂行為は労組法第7条3号の支配介入には該当しないと判断する。
4 A4に対する組合脱退慫慂等について(争点4)
会社は、平成25年10月7日におけるC1も含めた従業員によるA4に対する発言について、A4及び組合に対する従業員の反感や嫌悪感を知りつつこれを利用したものと認められ、このことは、会社内唯一の組合員であるA4の組合脱退又は退職により組合の弱体化若しくは組合運営の阻害を企図した、労組法第7条3号の支配介入に該当するものと認められる。
5 本件特別休暇不承認について(争点5)
A4の抑うつ神経症発症は業務上によるものと言うことはできず、会社がA4の特別休暇申請を不承認としたことについては、会社の裁量権を濫用したものとは言えないから、労組法第7条第1号の不利益取扱い及び3号の支配介入には該当しないと判断する。
6 第4回団体交渉について(争点6)
第4回団体交渉における会社の対応は、訴訟内容との重複を理由として交渉を行えない旨を明言しており、誠実な団体交渉を行おうとする意思に欠けており、また会社が主張する「行き詰まりの状態」は認められないことから、会社が、平成25年11月14日に開催された第4回団体交渉において、他の運転手とA4の配車実態等の議題について回答を差し控えたことは、労組法第7条第2号の団体交渉拒否ないし不誠実団体交渉に該当すると判断する。
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掲載文献 |
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