労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委26(不)44号及び74号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年11月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①会社が、組合に対し、退職金規定を手交することを規定した平成26年3月4日の確認書(以下「26.3.4確認書」)に調印したが、26.3.4確認書の別条項の解釈に違いがあるとして、その後の団体交渉等において26.3.4確認書の履行に応じなかったこと、②平成26年2月28日付けで、会社の経営する飲食店の店長をしていた組合員A2を譴責の上、店長を解任して降格とし、別の飲食店への異動を命じたこと、③平成26年8月12日、組合員に対して会社が営業を終了する旨の業務連絡(26.8.12業務連絡)を交付したこと、④平成26年9月1日付けで組合役員ら5名を譴責の懲戒処分としたこと等が不当労働行為に当たるか否かが争われた事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、誠実団交応諾、懲戒処分の取消し及び文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成26年3月26日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、平成26年9月1日付けで、申立人組合員であるA3、同A4、同A5、同A6、同A7に対して、月次の報告がなされていないこと並びに会議及びミーティングをしその議事録を提出することをしていないこを理由に、また、同A8に対して、平成26年5月22日に被申立人の会計顧問に苦情の電話を入れたことを理由にそれぞれ行った譴責の懲戒処分がなかったものとして取り扱わなければならない。
3 被申立人は、下記の文書を申立人に手交しなければならない。
(省略) 
判断の要旨  1 争点1(26.1.14要求書及び26.3.26抗議・団交申入書に記載の要求事項を議題とする団体交渉における会社の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
① 26.1.14要求書には、団交を申し入れる要求事項として退職金規定の組合への提示、退職金規定についての協議・協定等の項目が含まれ、団体交渉での協議を経て、26.3.4団交において退職金規定を組合に手交する旨記載した26.3.4確認書に調印されたのであるから、少くとも26.1.14要求書に記載の要求事項を議題とする団交における会社対応は、不誠実団交に当たらない。
② 26.3.26抗議・団交申入書に記載の要求事項を議題とする団体交渉における会社の対応について
ア 退職金規定を平成26年3月7日までに組合に手交する旨記載した26.3.4確認書第1項を、(退職金の支給に関しては2年間凍結する旨規載した)同確認書第2項についての独自の解釈を理由として履行しようとしない会社の対応は不合理である。
イ 会社は、26.3.4確認書調印後の、26.4.11団交において、26.3.4確認書について組合と会社に思いに違いがある旨述べたことが認められるが、このように団交において一旦合意した事項について、別の条項の解釈の違いを口実として、その効力を疑問視し、議論を蒸し返そうとする会社の対応は不誠実なものといわざるを得ない。
ウ したがって、26.3.26抗議・団交申入書に記載の要求事項である退職金規定の提示を議題とする団体交渉における会社の対応は不誠実であるといわざるを得ず、労働組合法第7条第2号に該当する。
2 争点2(A2組合員に対する本件降格処分を行ったことは不利益取扱いに当たるか。)について
 本件降格処分の理由には一定の合理性が認められ、本件降格処分の手続に不合理な点は認められないことから、A2組合員の組合活動を理由とした不利益取扱いに当たらない。
3 争点3(会社が、組合に対し、26.8.12業務連絡を交付したことが組合に対する支配介入に当たるか。)について
 26.8.12業務連絡は、会社の経営状況が直ちに自己破産等の営業終了の手続きを取らなければならないほど切迫した状況にはない中で、26-44号事件が申し立てられたわずか6日後に、全従業員を対象にすることなく、組合及び組合員に向けて発せられたものとみるのが相当であり、会社の売上・財務状況等に起因するもので、組合に無関係なものであるとの会社の主張は採用できない
 したがって、26.8.12業務連絡は、組合に対する支配介入に該当する。
4 争点4(会社が組合員役員ら5名に対して本件譴責処分を通知したことは組合に対する支配介入に当たるか。)について
 本件譴責処分は、組合役員ら5名に対して将来的な降格を示唆する内容のものであり、しかも、会社は、26.8.12業務連絡を交付してから3週間足らずのうちに本件譴責処分を組合役員ら5名に通知している。
 26.8.12業務連絡の交付が組合に対する支配介入であることを考え併せると、本件譴責処分は、26.8.12業務連絡の交付と併せて組合の活動をけん制するものであり、組合に対する支配介入であると言わざるを得ない。  
掲載文献   

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