労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成25年(不)第40号、同26年(不)第17号及び同26年(不)第29号
鎌倉市社会福祉協議会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成28年11月2日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要  ① 神労委25(不)第40号事件は、平成25年3月20日に開催された法人バザーの実施に伴う休日の振替え及び「法人事務局職員の勤務方法等に関する要綱」(以下「法人要綱」という。)に基づく勤務時間の繰上げ・繰下げ(以下「スライド勤務」という。)に関して組合が申し入れた団体交渉に対する法人の対応が、労働組合法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとともに、法人が法人要綱に基づき休日の振替及び祝日勤務を実施したことが、同条第3号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
② 神労委26(不)第17号事件は、平成26年4月1日付けで組合員6名を配置転換したことが、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件で、組合は、当該事件申立後、A6組合員を除く組合員5名について、労働組合法第7条第1号の申立てを撤回している。
③ 神労委26(不)第29号事件は、平成26年1月6日の仕事始め式における法人のB1会長の発言が、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるとして救済の申立てのあった事件である。
 本件は、上記3事件の審査を併合した事件で、神奈川県労働委員会は、法人に対し、誠実団交応諾、組合員5名の原職復帰及び文書の掲示を命じ、その余の申立てを棄却する。  
命令主文  1 被申立人は、休日振替勤務及びスライド勤務を交渉事項とする申立人との団体交渉について、十分な説明を行うなどして誠意をもって対応しなければならない。
2 被申立人は、平成26年4月1日付けで行った申立人組合員であるA1、A2、A3、A4及びA5に対する配置転換をなかったものとして取り扱い、同人らを配置転換前の職場に復帰させなければならない。
3 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交するとともに、同文書の内容を縦1メートル、横2メートルの白色用紙に明瞭に認識することができる大きさの楷書で記載した上で、被申立人職員の見やすい場所に毀損することなく、10日間手交・掲示しなければならない。
(略)

 
判断の要旨  1 法人のバザーの実施に伴う休日の振替えに関して組合が行った団体交渉申入れに対する法人の対応が、団体交渉拒否又は不誠実団体交渉及び組合に対する支配介入に当たるか否か。
① 法人のバザーの勤務形態を休日振替えとすることは過去の休日出勤に関する運用を変更する可能性があった。
② しかるに、法人は、事前の協議に応じていないばかりか、法人のバザー実施後に開催された団体交渉において団体交渉の前提となる資料の提出要求に応じず、事前協議を要する新規事業ではない旨の自己の主張に固執するばかりであったことなど、全体としてみれば、一貫して不誠実なものであることが認められる。
③ したがって、法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当するが、組合の自主的な運営が阻害されたとまでは認められないから、同条3号には該当しない。
2 スライド勤務に関して組合が行った団体交渉申入れに対する法人の対応が、団体交渉拒否又は不誠実団交及び組合に対する支配介入に当たるか否か。
① スライド勤務は、そもそも組合員の労働条件に関わる義務的団体交渉事項である。
② 加えて、数年間運用されていなかったスライド勤務を再開しようとするものであるにもかかわらず、法人は、スライド勤務は法人要綱に規定があり、要綱どおりに運用するのだから協議事項に当たらない旨の主張を団体交渉の最中も一貫して主張し続けるなど、自己の主張に終始するばかりで組合からの提案を検討すらもしておらず、およそ誠意をもって交渉に当たったものと評価することはできない。
③ したがって、法人の対応は労働組合法第7条第2号に該当するが、組合の自主的な運営が阻害されたとまでは認められないから、同条3号には該当しない。
3 法人が、法人要綱に基づき、休日の振替及びスライド勤務を実施したことは支配介入に当たるか否か。
① 休日の振替及びスライド勤務の再開にあたっては、9.1.31確認書及び13.6.4労働協約に基づき、団体交渉等において制度運用についての事前協議が求められている。
② 制度運用前に十分な協議を行わず、法人要綱及び法人就業規程の規定に基づき休日振替勤務の実施及びスライド勤務の再開を行い、組合員らに対し、その実施についての働きかけを行った法人の対応は、労使間の過去の合意を否定し、組合の存在をも否定するに等しいものといえる。
③ したがって、法人が、法人要綱に基づき休日の振替及びスライド勤務を実施したことは、組合に対する支配介入に当たる。
4 平成26年1月6日の法人で行われた仕事始め式におけるB1会長の発言は、支配介入に当たるか否か。
① 法人のトップであるB1会長が、仕事始め式の年頭挨拶において述べる発言は、法人内部に浸透しやすく、影響力を伴うものである。
② (組合から不当労働行為事件の申立てがあった等の)組合に対する牽制や批判が含まれた一連のB1会長の発言は、法人における組合の印象や立場を悪化させ、組合員の脱退につながるおそれがあるなどその自主活動を阻害するおそれがある。
③ したがって、B1会長の発言は、組合の運営に対する支配介入に当たる。
5 法人が、平成26年4月1日付けで行ったA1からA6組合員に対する人事異動が支配介入に当たるか否か。
① 本件配置転換は、法人本部内に在籍する組合員数を減少させ、組合の役職につく組合員を別々の勤務地に配置することにより、組合の結束力の低下を招く等、組合の弱体化に直ちにつながるおそれのあるものである。
② 本件配置転換の時期が、25年40号事件の申立て等により労使間の緊張が高まっていた時期であること、法人が過去5年間のうちに実施されたことのない多数の組合員を配置転換していることを考え併せると、本件配置転換は組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。
6 法人が、平成26年4月1日付けで行ったA6組合員に対する人事異動が組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。
① B2荘で業務内容、執務環境その他の待遇は、(社会福祉士の資格及び法人における10年以上の勤務経験を有する)A6組合員にとって自らの資格及び能力を活用できないという業務上の不利益及び精神上の不利益があったと認められる。
② 法人は、B2荘は入浴施設を有し、女性利用者が多いことから女性職員が望ましかったと主張するが、A6組合員以外の女性職員を配置することができたものと考えられ、A6組合員を優先して配置すべき必要性や理由は認められない。
③ 法人は、新たな老人福祉センターの開設計画に、近接するB2荘の法人職員を設計段階から参画させる必要があったところ、A6組合員は高度な調整能力を有していたことから適任であったと主張する。
 しかしながら、本件人事異動当時、A6組合員は勤務年数が最も短く、保有する資格が最も少なく、他の女性職員の方が適任であると考えられる等、法人の主張は信憑性を欠く。
④ したがって、法人がA6組合員をB2荘に配置転換したことは、労働組合法第7条第1号に該当する。  
掲載文献   

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