労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  静労委平成27年(不)第2号 
申立人  X1組合、X2組合 
被申立人  Y1会社、Y2会社、Y3会社、Y4会社 
命令年月日  平成28年10月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   Y1会社は、Y2会社の親会社であり、Y2会社は、静岡県C市に 本社を置きタクシー事業を営むY3会社及び同県D市に本社を置きタクシー事業を営むY4会社の株式の100%を保有する持株 会社である。
 Y4会社が平成22年2月8日、解散し、従業員全員を解雇したことから、X1組合及びX2組合は、平成26年12月3日付 けでY1会社及びY3会社に対し、平成27年1月15日付けでY2会社及びY4会社に対し、「労働者の救済、雇用確保など争 議の全面解決」に関する団体交渉を申し入れたが、Y1会社らは、いずれも団体交渉に応じなかった。
 本件は、Y1会社らが団交交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、静岡県労働委員 会は、Y4に対し、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 Y4会社は、申立人から平成27年1月15日付けで申入れが あった「労働者の救済、雇用確保など争議の全面解決」に関する団体交渉に速やかに応じなければならない。
2 申立人らのその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 申立人らからの本件団交申入れに関し、被申立人らが、それぞれ 団交応諾義務を負うべき使用者に当たるか。
(1)Y2会社の使用者性について
① 資本関係、人的関係等の面から見た支配力の有無
 Y2会社は、Y4会社の株式の100%を保有し、役員を派遣するとともに、Y4会社との「覚書」に基づき経営方針の策定等 の経営指導を行っており、Y4会社の経営に対して一定の支配力を有していたことが認められる。
② 雇用労働条件の決定等の面からみた支配力の有無
ア Y2会社は、Y4会社の求人、面接業務等を実施しており、新人教育についてもY2会社が、Y4会社と共通の新人教育マ ニュアル等を使用して行っている。
 しかし、Y2会社が、Y4会社の従業員の募集の時期や人数、採用者の決定についてまで具体的な支配力を有していた事実は認 められない。
 また、「覚書」の取り決めに従い、Y2会社が事業子会社であるY3会社及びY4会社の新任社員に共通する基礎的教育を実施 することは契約の範囲内であるとともに、グループ会社として合理的なものであり、Y2会社の支配力が採用面まで及んでいたと はいえない。
イ 「覚書」では「労務管理上必要と思われる事の指導」についてもY2会社の業務とされているが、「覚書」に基づいてY2会 社が事業子会社に対し純粋持株会社の立場から労務管理上の必要事項を指導することが、直ちにY4会社の従業員の労働条件を左 右することを意味せず、労務管理に関してY4会社に独自の決定権がないとはいえない。
ウ Y4会社の設立から本件解散に至るまでの間に、X2組合は、Y4会社に賃金改正等の労働条件や就業規則の変更等に関する 団体交渉を申し入れ、確認書を作成するなど一定の成果を残しているが、X2組合がY2会社に団体交渉を申し入れたり、団体交 渉にY2会社が関与した事実は認められない。
エ その他、Y4会社の雇用・労働条件の決定にY2会社が関与し、現実的かつ具体的な支配力を有していたことを証する事実は 認められない。
③ 本件団交事項に対する支配力の有無
 本件解散の判断やX2組合の組合員の雇用確保及び経済的保障への対応については、あくまでY4会社が主体的に行っていたも のと認められ、本件団交事項についてY2会社が純粋持株会社としての方針決定以上に現実的かつ具体的な支配力を及ぼしていた と認められない。
④ したがって、Y2会社は純粋持株会社としてY4会社の経営に対し一定の支配力を有していたと認められるが、X2組合の組 合員らの基本的労働条件に関して雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたとまでは認められないことか ら、労働組合法第7条の使用者であるとはいえない。
(2)Y3会社の使用者性について
 Y2会社はY4会社を現実的に支配していたと認めることはできないことから、Y2会社がY4会社及びY3会社を支配して3 社一体の経営をしていたという申立人らの主張は、前提を欠き採用できない。
 2 Y4会社が団交に応じなかったことに正当な理由があるか。
① Y4会社が、申立人らの本件団交申入書に概括的に記載されている団交項目が同じであるからといって要求内容が同じである と判断することは早計であったといえる。
 雇用促進の努力に関しても、グループ会社である他のタクシー会社、特にY3会社の求人状況について(Y3会社の代表取締役 を兼務する)E清算人は十分把握出来る立場にあったのだから、解散直後の団体交渉でY3会社に雇用の余裕がないとしたまま、 その後の団体交渉に応じなかったことは誠実性に欠けるといえる。
② 訴訟では解雇有効との判断が確定されてはいるが、本件団体交渉の申入れ事項が解雇のみを協議事項とするものと解すること はできない。
 また、職を失った元従業員の生活保障や雇用確保は解雇の有効性とは直接関係なく、地位確認訴訟が終結したからといって本件 団交渉に係る団体交渉事項が消滅したことにはならない。
③ したがって、申立人らによる平成27年1月15日付け団体交渉申入れを被申立人Y4会社が拒否したことは、労働組合法第 7条第2号の正当な理由のない団体交渉の拒否に該当する。  
掲載文献   

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