労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  香労委平成27年(不)第4号
善通寺市不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合 
申立人  X2組合 
被申立人  Y市(「市」) 
命令年月日  平成28年10月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   X1組合は市の設置する保育所の保育士、調理員等を組合員とする労働組合であり、X2組合は市の学校給食センターの調理員を組合員とする労働組合であり、X1組合及びX2組合(以下「X1組合ら」という。)の組合員である保育士、調理員は市の臨時・非常勤職員である。
 市は、平成27年8月18日付け通知書(以下「8月18日付け通知書」という。)により、X1組合らに対し、団体交渉での確認事項等の平成27年度末での廃止及び 組合員の任用根拠は地方公務員法の一般職である旨を通知した。
 X1組合らは、当該通知は、労働組合法の適用を除外し、地公法を適用することにより、X1組合らの消滅、弱体化を図るものであるとして、その後開催された3回の団体交渉において、これに反対をしたが、市は応じなかった。その後、当該任用替えに関する条例が制定され、平成28年4月1日から施行された。
 本件は、①市が8月18日付け通知書により、X1組合らの団結権を侵害し、その弱体化を図ったことが支配介入に当たるとともに、②本件申立てまでの市の対応が不誠実団交に当たるとして救済申立てのあった事件で、香川県労働委員会は、当該通知が支配介入に当たることを確認し、その余の申立ては棄却した。  
命令主文  1 被申立人が申立人らに対し市長名通知(平成27年8月18日付27Y市第1976号)を発した行為は、労働組合法第7条第3号に規定する不当労働行為あたることを確認する。
2 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 X1組合の申立人適格について(争点1)
(1)臨時・非常勤職員の任用根拠の変更は、その旨を文書又は口頭で明確に当該職員に通知することにより効力が生じるというべきところ、平成27年4月1日の時点では、特別職から一般職への変更について、市による明確な意思表示があったとは到底認めがたい。
 したがって、本件救済申立時(平成27年10月7日)において、X1組合の組合員は特別職であり、X1組合は労働組合法の適用をうける労働組合に当たる。
(2)平成28年4月1日以降、X1組合の組合員38名は、地公法第17条の一般職員として任用されているが、その中の6名の調理員と1名の用務員は現業職であるから労働組合法の適用を受ける。
 X1組合は、地公法が適用される職員と労組法が適用される労働者の双方を構成員とする混合組合であり、労組法の適用を受ける組合員に関する事項については、労働組合として労組法上の権利を行使することができる。
2 8月18日付け通知書が支配介入にあたるかについて(争点2及び争点3)
① 市が、8月18日通知書により、職員の任用替え及び確認書の廃止を通知したことは、26年総務省通知の趣旨に沿って、市の臨時・非常勤職員の任用を適正化するという点で一定の合理性・正当性がある。
② しかし、市が、職員の任用替え及び確認書の廃止について、事前の説明や協議を行わないまま通知書を発出したことは、特に、新条例案の上程が27年12月に迫っていたことを考慮すれば、申立人らが、それまでの期間、市に要求事項を申し入たり、市と団体交渉を実施するなどの対応策を取る十分な機会を奪う結果となったものであるから、市によるこれら対応は、申立人らの組合活動を著しく制限する干渉行為となることは明らかであり、申立人らに対する支配介入といわざるを得ない。
3 団体交渉の拒否又は不誠実な団交の成否について(争点4)
 8月18日付け通知書に基づき本件任用替え及び確認書等の廃止がなされた場合の申立人らがこうむる不利益を考慮すれば、申立人らが同通知書の撤回にこだわったことには一定の合理的な理由があるが、8月18日付け通知書から27年12月の新条例案の上程という限られた交渉期間を考慮すれば、市が同通知書の撤回を拒否せざるを得ない状況であったことも一定の合理的な理由がある。
 その他本件の経過に鑑みれば、両当事者の各主張の隔たりが大きく、その結果、団体交渉が円滑に進まないまま終了するに至ったものであり、3回の団体交渉における市の一連の行為は、団体交渉の拒否又は不誠実な団交拒否にはあたらない。  
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約273KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。