労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成26年(不)第57号及び第63号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年10月14日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①新聞社の新聞の別刷りを別の新聞社の専売所に誤配送したA3及び人損事故等を繰り返し起こしたA2を解雇したこと、②A3の解雇を議題とする団体交渉申入れに応じなかったこと、③A2及びA3の解雇に係る団体交渉に応じた後に、当該団体交渉において不誠実な対応を行ったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
組合
執行委員長 A1様
会社 代表取締役B

 平成24年11月から同25年1月までの間の、同24年11月22日付け、同月29日付け、同年12月11日付け、同月15日付け、同月21日付け、同25年1月7日付け及び同月11日付けの、貴組合員A3氏の解雇を議題とする団体交渉申入れに対する当社の対応は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(平成24年11月20日付けA3組合員の解雇は不利益取扱いに当たるか。)について
① 会社が、24.10.26誤配により、会社にとって最大の顧客の信頼を大きく失墜させる結果となったとともに、会社に大きな損害が発生したと判断したことは首肯できるところである。また、24.10.26誤配は試用期間中に発生したものであるから、会社が、24.10.26誤配を起こした従業員を試用期間中又は試用期間満了までに従業員として不適格と認められるとして、普通解雇処分としたことは不合理であるとまではいえない。
② 会社が、会社の最大の顧客のC新聞社の姿勢を鑑みて、誤配については誤卸し等の他の商品トラブルに係るものよりも重い処分を選択しても無理からぬことであるといえる。これに加え、上記①のとおり、24.10.26誤配をもって普通解雇処分としたことは不自然であるとまではいえず、また、A3組合員が試用期間中であったことを踏まえると、会社が、試用期間中であったことを踏まえ普通解雇処分が相当であるとして、A3組合員を解雇したことは、不自然であるとまではいえない。
③ 会社は、24.10.26誤配は、24.4.21就業規則第50条第4号所定の懲戒解雇事由に該当すると判断しているのであるから、同条により、本人に弁明の機会が付与することが求められていると解するのが相当であり、24.10.26誤配から1か月に満たない期間で弁明の機会を付与することなくA3組合員を解雇した会社の対応は、些か拙速であり、解雇手続に問題がなかったとまではいえない。
④ 会社が、23.10.3団交における対応及び23年8月頃から同24年10月頃の賃金減額に係る組合活動を嫌悪して、A3組合員を職場から排除しようとするなら、A3組合員を正社員として採用しないのが自然であるところ、平成24年8月21日に、A3組合員を正社員として採用していること等からすると、会社が、A3組合員の組合活動や組合を嫌悪して、A3組合員を職場から排除しようとしていたとまではいえない。
⑤ 以上を総合すると、A3組合員の解雇手続に問題がなかったとまではいえないが、当該解雇は不利益取扱いに当たらない。
2 争点2(平成24年12月20日付けA2組合員の解雇は不利益取扱いに当たるか。)について
① A2組合員は、平成22年2月21日に正社員として雇用された後に、2年間で人身事故とトラック全損事故を発生させ、会社が、23.11.1覚書により注意喚起を促したにもかわらず、23.11.1覚書を取り交わした約10か月後に、再度、人身事故である24.9.18事故を起こしており、このような経緯を踏まえれば、自動車運転業を業として行っている会社が24.9.18事故を重大視するのは無理からぬことであるから、会社が解雇を選択したことは不自然であるとまではいえない。
② 会社が、A2組合員に対し24.12.19解雇通知書を手交するまでの間に、23.11.1覚書に基づく、組合、A2組合員及び会社との間で、協議が行われていないのは、23.11.1覚書に基づく協議が団交であるか否か等について、組合と会社の間で争いがあった結果としてそうなったものであり、そのことについて、会社のみに責任があるとはいえない。
③ 自動車運送業を業として行っている会社が、A2組合員が24.9.18事故を起こした経緯を重大視して、解雇処分を選択したこと自体は、不相当であるとまではいえない。
④ A2組合員の解雇が組合活動をけん制するために行われたのであるなら、組合結成通知から約1か月半後であり、かつ、組合が賃金減額に対し反対姿勢を取っていた最中である23.9.2事故を問題視しても不自然でないところ、会社は、A2組合員及び組合と23.11.1覚書を交わし、同23年11月5日にはA2組合員を運転手として復帰させていること等からすると、会社が、組合や組合の活動を嫌悪して、平成24年12月20日付けでA2組合員を解雇し、職場から排除しようとしたとまではいえない。
⑤ 以上を総合すると、A2組合員の解雇は不利益取扱いに当たらない。
3 争点2(平成24年11月から同25年1月までの間におけるA3組合員の解雇を議題とする団体交渉申入れに対する会社の対応は不誠実団交及び支配介入に当たるか。)について
① 平成24年11月から同25年1月までの間におけるA3組合員の解雇を議題とする団体交渉申入れに対する会社の対応には、職場規律等に関する組合の見解が表明されていないことをもって組合の要求する団交に応じられないとしたり、当委員会のあっせんの場で対処したいとの意向を示す等、積極的に団交を開催する意思を欠いたり、団交開催を引き延ばしたものといわざるを得ないものがあり、さらに、団交申し入れから団交開催までの期間が、長期間であったことからすると、25.2.4団交における会社の対応が不誠実団交でないこと(下記4)を考慮しても、平成24年11月22日付け団体交渉申入れ等(注:命令主文参照)に対する会社の対応は、団交拒否に当たる。
② また、これにより、組合活動が妨害されたというべきであるから、かかる行為は支配介入にも当たる。
4 争点4(25.12.4団交における、A3組合員及びA2組合員の解雇の議題に係る会社の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
(1)A3組合員の解雇に関する団交について
①会社が組合に対して、A3組合員の解雇に至った経緯及び理由について説明しており、会社の対応が不誠実であるとはいえない。
②A3組合員の解雇に至る経緯の説明に関する会社の発言に問題がなかったとはいえないが、会社は、団交での組合の要求次第では、会社は自らの方針を変更する可能性があることを言及しているのであるから、会社が、譲歩の意思を有していなかったとまではいうことはできない。
(2)A2組合員の解雇に関する団交について
①組合がA3組合員の解雇理由について尋ねたところ、会社は、A3組合員の解雇理由について説明したといえる。
②23.11.1覚書きによる協議が行われなかった経緯やそれに係る会社の見解内容が組合の見解と異なるからといって、それをもって議論をすり替えたともはいえず、組合が指摘する日程調整に係る発言のみをもって、組合嫌悪の表れともみることはできない。 (3)したがって、25.2.4団交における会社対応は不誠実に当らない。  
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