労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年不第2号-1
せたがや白梅不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合」) 
被申立人  特定非営利活動法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成28年8月2日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   東京都労委平成27年(不)第2号事件は、下記①~④について救済申立てがあった事件で、東京都労委は、下記①及び②の申立てを分離して本件とし(東京都労委平成27年(不)第2号-1事件)、審査のうえ、法人に対して、誠実団交応諾並びに文書交付及び文書交付の履行に係る報告を命じた。
 ① 法人が、平成26年12月9日の団体交渉において、組合Y法人分会(以下「分会という。」)の組合員A2の雇止めび副分会長A3の解雇に係る交渉が行き詰まったとして、これ以上の交渉に応じないとしたこと等が正当な理由のない団体交渉の拒否及び組合に対する支配介入に当たる。
 ② 組合が、平成26年12月29日、同月31日付けで解雇された分会長A4の解雇撤回を要求し、同27年1月7日に団体交渉を行うよう申し入れたのに対し、法人が、同月5日、業務繁多として応じなかったこと等が正当な理由のない団体交渉の拒否及び組合に対する支配介入に当たる。
 ③ A3及びA4の解雇が組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たる。
 ④ 平成28年3月1日に、法人が、組合員A5を雇止めにし、同A6の就業時間を削減し、分会書記長A7に始末書の提出を求めたこと等が組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たる。  
命令主文  1 被申立人法人は、申立人組合が申し入れた組合員A2の雇止め並びに同A3及びA4の解雇を議題とする団体交渉を、事実認識の隔たりを理由として拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。

年 月 日
組合
執行委員長 A1殿
法人   
理事長Y

 当法人が、貴組合が申し入れた、貴組合員A2の雇止め並びに同A3及びA4の解雇を議題とする団体交渉に応じなかったことが東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

2 被申立人法人は、前項を履行したときは当委員会に文書で報告しなければならない。  
判断の要旨  ① 法人は、A2の雇止め及びA3の解雇について、交渉が尽くされていない状況にもかかわらず、第4回団体交渉直前に裁判所等第三者の判定に委ねるほかなく、団体交渉としてはデッドロックの状況にあるとの「回答書」を送信し、団体交渉において双方の主張する事実に食い違いがあるので、行き詰まり、デッドロックに乗り上げた、団体交渉はしないなどと回答した。よって、法人は、事実認識の違いを理由として団体交渉に応じなかったものといえる。
② A4の解雇について、12月29日、組合は法人に対して団体交渉を平成27年1月7日に行うよう申し入れたが、同月5日、法人は、「業務繁多につき、お受けいたしかねます」と回答した。この法人の対応は、申入れや団体交渉期日が年末年始であることから、多忙であって日程調整がつかなかったにすぎないとも考えられなくもない。しかし、法人がA4の解雇を撤回する意思はないことも回答していること、本件申立て後の第5回団体交渉において、事実認識が違えばそれは法廷で決めるしかないと述べていること、前記のとおり、A2の雇止め及びA3の解雇について交渉を尽くしていない状況でありながら、事実認識の隔たりを理由として団体交渉を拒否したことを考えれば、法人は、A4の解雇について当初より事実認識の隔たりを理由に団体交渉に応じなかったというべきである。
③ 以上のとおり、A2の雇止め並びにA3及びA4の解雇について、法人と組合の間に事実認識の隔たりがあるところ、法人は、雇止めや解雇に至る経緯の詳細な説明をするなど事実認識の隔たりを埋めるための努力をしておらず、交渉が尽くされていない状況であるにもかかわらず、デッドロックに乗り上げた、裁判所など第三者に委ねるほかないなどとして、事実認識の隔たりを理由に団体交渉に応じなかったもので、法人の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。
④ 支配介入について
 組合は、法人の組合敵視・嫌悪の姿勢は露骨であり、団体交渉の拒否も組合員を法人から排除しようとして行ったものであり、支配介入にも該当するという。しかし、法人は、A2の雇止め並びにA3及びA4の解雇以外の議題については、団体交渉に応じており、法人が、およそ組合を否認したり、組合員を法人から排除するために、上記議題に係る団体交渉を拒否したものとはいえないので、支配介入に当たるとまではいうことはできない。  
掲載文献   

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