事件番号・通称事件名 |
兵庫県労委平成27年(不)第5号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成28年8月18日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①平成27年1月のトレーナー乗務員の選定に際
し、申立人組合の組合員であるAをトレーナー乗務員に選定しなかったことが、同人に対する不利益取扱いに該当するとともに組
合に対する支配介入に該当する、②Z組合の役員であるC1及びC2が取得した組合休暇を欠勤扱いにしなかったこと及び③非組
合員であるD1及びD2を業務改革プロジェクトのメンバーに選出したことが組合に対する支配介入に該当する、④業務改革プロ
ジェクトの実施及びD1を同プロジェクトのメンバーに選出したことの適否を交渉事項とする平成26年6月23日の団体交渉に
おける会社対応が不誠実な団体交渉に該当する、⑤本社の新社屋への移転に際し、Z組合には組合事務所を貸与しながら、申立人
組合には貸与しなかったことが、組合に対する支配介入に該当するとして、救済申立てのあった事件であり、兵庫県労働委員会
は、会社に対し、組合事務室の貸与について、申立人組合とZ組合とを差別することなく、公平に取り扱うよう命じ、その余の申
立ては、棄却した。 |
命令主文 |
1 会社は、組合事務室の貸与について、組合とZ組合を差別するこ
となく、公平に取り扱わなければならない。
2 その余の申立ては棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人会社がAをトレーラーの乗務員に選定しなかったことは
同人に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するか。
① 申立人組合は、トレーラー乗務員の選定においては、従来トラック乗務年数が長く、事故等の少ない乗務員を選ぶのが慣例で
あったと主張するが、本件全証拠によるも、その疎明があったとは言えない。
② また、申立人組合は、平成27年1月のトレーラー乗務員の募集について、Aが所属する班のB1班長には知らせていなかっ
たと主張するが、B2部長がB1班長に希望者の有無について確認したところ、B1班長は、Aについては推薦に至らなかった旨
回答したことからすると、B1班長はトレーラーの乗務員の募集の事実を知っていたと言うことができる。
③ これらの事実に加え、Aにも平成24年から26年までに複数回の事故・違反が認められることを総合すれば、申立人組合が
主張する被申立人会社の不当労働行為意思を推忍する事実を認めることはできない。
④ したがって、Aをトレーラー乗務員に選定しなかったことは、同人に対する不利益取扱い及び申立人組合に対する支配介入に
該当しない。
2 被申立人会社が、Z労組の役員であるC1及びC2の取得した組合休暇に対し、欠勤扱いしないことは申立人組合に対する支
配介入に該当するか。
① 被申立人会社は、団体交渉において、申立人組合に対し、Z労組と同様に(労働協約に基づく)届出があれば、事実上の組合
休暇として認める旨を伝えているのであるから、申立人組合の組合員が組合休暇を取得せず、年休を取得して組合活動をしている
のは、結局のところ、申立人組合の判断ないし選択によるものであると言わざるを得ない。
② 確かに、Z労組の役員らが本部大会に出席するに当たっても組合休暇を取得していることや、C1の組合休暇の取得状況をみ
ると、被申立人会社とZ労組の間の労働協約は、その運用の面において、労組法上、経費援助の観点から全く疑義がないとは言え
ない。
③ しかしながら、そのような点を考慮するとしても、被申立人会社とZ労組との間の労働協約が、Z労組役員の組合活動を自由
に行わせるための優遇策であるとまでは認められず、また、被申立人会社がZ労組にそのような優遇策を講じ、結果として申立人
組合の勢力をそぐこととなっているとの具体的な疎明はなく、結局のところ申立人組合の主張には理由がない。
3 被申立人会社が(非組合員である)D1及びD2を業務改革プロジェクトのメンバーに選出したことは、申立人組合に対する
支配介入に当たるか。
① 被申立人会社がD1及びD2を業務改革プロジェクトのメンバーに選出したことについて、同人らが適任ではなかったとの疎
明はないことに加え、同プロジェクトの実施後、被申立人会社が平成26年12月の賞与を増額し、平成27年のベースアップも
実施したことを考え併せると、被申立人会社が同人らを同プロジェクトのメンバーに選出したことは、直ちに不合理であるとまで
は言えない。
② 申立人組合は、D1らが同プロジェクトのメンバーに選出された際、旧給与規程の下では、乗務員から事務員になると必ず賃
金が下がるはずであるが、被申立人会社が、同プロジェクトに合わせて給与規程の改訂を行い、同人らをトレーラー乗務員のとき
の高額な賃金のまま事務員に就け、他の事務員よりも優遇していると主張するが、そのことについて具体的な疎明があるとは認め
られない。
③ したがって、被申立人会社が、D1らを同プロジェクトのメンバーに選出し、他の事務員とは異なり優遇を行ったとする申立
人組合の主張には理由がない。
4 業務改革プロジェクトの実施及びD1を同プロジェクトのメンバーに選出したことの適否を交渉事項とする平成26年6月
23日の団体交渉における被申立人会社対応は、不誠実な団体交渉に該当するか。
① 業務改革プロジェクトの目的、目標は、業務の効率化として運行往復便の効率化を図るとともに、運行応援態勢を構築するこ
となどであることからすると、少なくとも同プロジェクトの実施は、乗務員の労働条件に直接関係すると言うことができるので、
義務的団交事項に該当すると判断する。
② 同日の団体交渉において、申立人組合がD1が業務改革メンバーに選出されたことを繰り返し追求したのに対し、被申立人会
社が個別の人事の適否は経営権・人事権に属することであると主張したことには一応の理由があり、また、業務改革プロジェトに
おける個別人事以外の要求事項については、被申立人会社は、申立人組合と時間を掛けて協議していることが認められる。
③ さらに、同日、被申立人会社は、申立人組合が文書による回答を要求したのに対し、同年7月1日の団体交渉で、申立人組合
の要求どおり(業務改革プロジェクトの実施に伴う)同年6月16日付け人事異動及び申立人組合の組合員の不安払拭について文
書回答したことも勘案すると、被申立人会社の対応が不誠実であるとまでは言えない。
5 本社の新社屋への移転に際し、被申立人会社がZ労組には新社屋近くに移転先となる組合事務所を貸与し、申立人組合には組
合事務所を貸与しなかったことは、申立人組合に対する支配介入に該当するか。
① 被申立人会社が当初はいずれの組合にも組合事務所として貸与する部屋がないと回答しておきながら、その後、申立人組合に
事前に説明することなく、Z労組にのみ組合事務所を貸与するに至った経緯からすると、被申立人会社が主張する、本社移転前か
ら継続して組合事務室を貸与していたZ労組に対して優先的に貸与したとの理由付けは説得力が乏しい。
② また、以前に申立人組合は、組合事務所の貸与について被申立人会社の提案を受け入れなかったことはあるが、その理由は、
駐車場がなく、組合員が利用しにくかったことにあり、E会館は、本社の新社屋に近く、本社の駐車場の利用が可能であるから、
被申立人会社が申立人組合に貸与の申出をしない理由にはならない。
③ したがって、被申立人会社が申立人組合に組合事務所を貸与しなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当す
る。 |
掲載文献 |
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