労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  栃労委平成26年(不)第1号 
申立人  X組合(「組合」) 
申立人  X2(個人) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年8月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社は、申立人組合の組合員であるX2に対し、同人が、会社の取 引先の従業員であるC氏の作業中に同人を繰り返し組合に勧誘したとして、平成26年11月1日から同月10日までの10日間 を出勤停止処分とする同年10月31日付け懲戒処分を行った。
 本件は、当該懲戒処分が、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たるとして、組合及びX2から救済申立てがあった事件 で、栃木県労委は申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 X2の行った行為について
 ① X2が、平成26年6月~8月の間、何回もC氏に対して勧誘行為を行ったと認めていること、C氏がXの勧誘を迷惑に感 じなければ上司にX2の行為によって仕事に生じ困っている旨を訴える動機がないこと等から、少なくともC氏が迷惑に感じるほ ど相当程度頻繁に(執拗に)勧誘行為が行われたと認めざるを得ない。
② X2の勧誘は雑談程度に行われた会話ではなく、勤務時間内、それも多忙な時間帯に、誤配送の危険を認識しながらも、取引 先の従業員に対して執拗に行われた勧誘であり、正当な組合活動であったとは認められない。
2 本件処分について
 ① 処分の必要性、相当性
 会社が、本件処分に当たって、X2の過去の非行を情状として考慮して、懲戒処分の量定を決定することは差し支えない。
 本件処分においては、これに加えて、取引先から文書をもってX2の行為に対して改善措置の要請が強くなされていることか ら、会社としては、取引先の信用を失うことのないよう対応を示す必要があったと言える。
 したがって、本件懲戒処分は、その相当性において不当に過重だったとは言えず、本件処分の必要性も認められる。
② 本件懲戒処分に係る手続きについて
ア 会社からの事実確認に対し、X2は、「ちょっと言っただけ」と認めており、C氏に話しかけた内容については否定する発言 をしていないことから、X2が勧誘の事実を認めたと会社が判断したことに特段の問題はないと認められる。
イ 会社が、X2の聴取前に処分の方針を決めているが、会長等の証言から本件処分の最終決定はX2の聴取後に留保していたと 認めることができ、結果的にX2も処分事由となったC氏への勧誘を認めていることから、会社が、X2の聴取前に処分の方針を 決めていたことをもって本件処分が直ちに不当であると言うことはできない。
ウ したがって、本件処分において、処分が違法不当とされるような事実は認められない。
3 不当労働行為意思について
 ① 会社が、平成26年8月22日、会長宅に行った要請活動に抗議するファクシミリを組合に送信したこと、同年9月27日 の会議において、会社社長が、組合の街宣活動に批判的と受け取られる発言をしていることから、本件処分を行う頃には、会社が 組合に対して何がしかの嫌悪感を持っていた可能性が考えられる。
② 一方、X2は、組合に加入する前から、同僚従業員の母親に関する発言をしたことにより、当該従業員とトラブルになり、会 社から厳重注意とされ、また、調整手当について、勤務態度の不良等を理由に、平成23年7月分から1万円の減額、能力査定に より平成24年7月分から1万6,000円の減額とされている。
 また、X2は、組合に加入した後も、アジを詰める際に使用していた手袋が裂け、その一部を商品に混入したまま納品して会社 から厳重注意とされ、会社の女性従業員に対してセクシャルハラスメントを行ったとして「訓戒」の懲戒処分を受け、加工場で床 に落とした紅鮭の切身をそのまま真空包装しようとしたことから、再び、厳重注意とされている。
④ このように数々の問題等を起こしていたところ、X2は、平成26年6月から8月までの間、何回も、C氏が迷惑と感じるほ ど相当程度頻繁に(執拗に)勧誘行為を行っていたのである。しかも、この勧誘は、勤務時間内に、ピッキング作業が一番忙し く、集中を要する時間帯に、仕分けを間違うと誤配送が発生する危険を認識しながら行っていたと言わざるを得ない。
 その結果、C氏から「大変迷惑した」として会社に対して文書で改善要請があったのみならず、大切な取引先であるD運送から も文書で改善申入れがあり、会社としては、信用を失う問題となった。これらの事態を踏まえ、会社は、10日間の出勤停止とす る本件懲戒処分を行ったのである。その量定は、懲戒の種類が訓戒、減給、出勤停止(10日以内)、諭旨解雇、懲戒解雇とある 中で、その相当性において、不当に過重であったとは言えない。
⑤ 結局、本件処分の決定的動機は、X2が数々の問題等を引き起こしていたところ、更にまた、会社にとって大切な取引先から 信用問題に関わる文書申入れをされるほどの非違行為を行ったことによるものであったと認められる。こうした状況においては、 会社は、X2が組合員であるか否かに関係なく、本件処分を行うのが相当であった、すなわち、仮に、X2が組合員でなかったと しても、同じ懲戒処分を行うのが相当であったと認められる。
⑥ したがって、会社が組合の要請活動、街宣活動等により、組合に対して何がしかの嫌悪感を持っていたとしても、それをもっ てX2に対する本件処分について不当労働行為意思の存在を認めるのは相当ではない。
4 したがって、本件処分は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当しない  
掲載文献   

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