労働委員会命令データベース

(こ の命令は、労組法に基づく和解の認定により失効しています。)
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概要情報
事件番号・通称事件名  埼労委平成27年(不)第1号 
申立人  Xユニオン(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年7月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成27年5月8日に開催された団体交渉において、会社の従業員 であり申立人組合の組合員であるA2が、会社の労働者代表挙が民主的に行われておらず、当該選挙で選出された労働者代表と会 社の間で締結された労働基準法36条に関する協定が無効であるとして、残業はできない旨、述べたところ、被申立人会社は、 A2に対し、①同年5月11日以降時間外労働を命じず、②同月25日以降運送業務を命じなかった、
 本件は、会社による上記①及び②の行為が、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で あり、埼玉県労委は、会社に対して、②の行為のその一部期間について、組合への文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。  
命令主文  1 被申立人会社は、下記の文書を本命令書受領の日から15日以内 に申立人組合に手交しなければならない(下記文書の中の年月日は、手交する日を記載すること)。

平成 年 月 日
   組合
   執行委員長 A1様
会社          
代表取締役 B1

 当社が行った下記の行為は、埼玉県労働委員会において、労働組合法第7条第1号の不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにします。

 当社が、貴組合の組合員であるA2氏に対して、平成27年6月23日から平成28年3月31日までの間、運送業務に一切、 就かせなかったこと。

2 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。  
判断の要旨  1 会社が、A2に対し、平成27年5月11日以降、時間外労働を 命じなかったこと(以下「本件残業差別」という。)について
(1)不利益取扱いについて
① A2は、本件残業差別が開始されまでの1年間、平均すると毎月約8万円の残業手当を受領している。
② 組合は、会社が36協定が適法に締結され、労基署に届出済である旨主張するのであれば、A2を時間外労働の配車も含めた 通常業務に戻すよう要求しているにもかかわらず、会社が時間外労働を命じていない。
③ したがって、本件残業差別は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに該当することは明白である。
(2)不当労働行為意思について
① 平成27年5月8日の第3回団体交渉等におけるA2の発言について
ア A2が、平成27年5月8日の第3回団体交渉において、「残業できないよ」等の発言を繰り返し行っており、当該発言を もって、A2が残業拒否宣言を行ったと認識した旨の会社の主張は肯定できる。
イ 平成27年5月25日及び6月11日の社長との話合いにおけるA2の発言を受け、会社が、A2に対して時間外労働を命じ た場合、後で労基署に対して、労基法違反である旨申告されることによるトラブルが起こり得ると認識して、当該トラブルを避け るために時間外労働を命じなかったことには合理性が認められる。
(2)平成27年5月22日のA2の業務命令拒否について
 会社が、当該A2の拒否を受け、A2に対し、時間外労働を命じた場合に、A2が当該命令に従わずに、運送業務が実施されな いことにより、顧客に迷惑を掛け、会社の営業上生じるリスクを回避するために、A2に対し、時間外労働を命じなかったことに は合理性が認められる。
(3)本件残業差別は、組合員であるが故になされたものとは認められず、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには当たらな い。
 2 会社が、A2に対し、平成27年5月25日以降、運送業務を命じなかったこと(以下「本件配車差別」という。)につい て
(1)不利益取扱いについて
 A2が、その意に反して運送業務を命じられずに専ら構内業務を行うことを余儀なくされたのであるから、本件配車差別は労働 組合法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。
(2)不当労働行為意思について
① 平成27年5月25日から同年6月19日の第4回団体交渉までの会社対応について
ア A2が本件36協定の無効を主張している中で、5月22日にB2の指示に従わずに午後5時に退社したことを考慮すれば、 社長が、5月25日にA2に対して、就業時間の繰上げ又は繰下げを行った場合、会社の指示に従うかどうかを確認しようとし、 その意思が確認できるまで、配車をしなかったとしてもそれが不合理であるとは言えない。
イ しかも、A2は、平成27年5月25日の話合いにおいて、5.25打診に回答するまでは、構内業務を行うことに同意し、 その後の平成27年6月1日付け文書では、就業時間の繰上げ又は繰下げに対して明確には回答せず、平成27年6月11日の話 合いにおいて、団体交渉で話し合うことを提案している。
ウ また、この間、A2が午前8時から午後5時までに配車を行うことを要求したことはなく、組合が、そのような配車を求めた のは、平成27年6月19日に開催された第4回団体交渉においてである。
エ したがって、この間の会社の対応には合理性が認められる。
② 平成27年6月19日の第4回団体交渉から平成28年3月31日までの会社対応について
ア 会社は、本件配車差別は午前8時から午後5時までの運送業務の受注はまれであったことによるもので、配送効率を考えれ ば、A2に配車できなかった旨主張する。
(ア)A2に配慮してもなお、Cに対して配車しているように午前8時以降に会社を出発して午後5時までに会社へ戻って来られ る運送業務があった。
(イ)また、会社が就業時間を繰り下げてA2に配車しようとした運送業務は、そもそも午前8時から午後5時までの業務とそれ 以外の業務とを分けて配車を組むことは可能であった。
(ウ)しかも、本件配車差別以降も、午前8時から午後5時までの業務が全くないわけではなく、平成27年9月11日の業務 は、A2に対して配車できたにも関わらず、会社はあえて配車をしなかった。
(エ)したがって、会社の主張は採用できない。
イ 第4回団体交渉において、組合は会社に対して、A2について、午前8時から午後5時までに配車をすることを要求し、それ に対して会社は収まるよう努力すると回答している。
ウ A2は、午前8時から午後5時までの運送業務を拒否したことはなかった。それにもかかわらず、平成28年3月31日まで A2に対して配車をしなかったことはすでにみたとおりである。
エ そして、上記アのとおり、会社が本件配車差別を行った理由には合理性が認められない。
オ 第4回団体交渉が行われた平成27年6月19日(金)以降に組んだ配車(6月19日(金)には、6月22日(月)までの 配車は完了していたことが認められる。)から平成28年3月31日まで、A2に対して、配車を一切しなかったことは、A2が 組合員であるが故になされたものと認められ、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当する。  
掲載文献   

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