労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成25年(不)第41号
オーロ等不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年8月8日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   平成25年12月1日、組合は、会社の作業中に負傷し、その後組合に加入した組合員Aの労働災害等労働問題を議題とする団体交渉要求書等を会社に提出し、同月18日の午前10時30分から、組合事務所において、団体交渉を行うよう申し入れた。これに対し、会社は、平成25年12月16日付け回答書を,同月17日組合に送信したが、当該回答書において、組合の団体交渉申入れへの対応について記載することなく、同月18日の交渉を欠席した。
 なお、本件審査手続中に、Aは会社を自主退職し、労働災害に係る障害補償給付を受けている。
 また、Aの労働問題について当事者間で,団体交渉が実施されている。
 本件は、上記の組合の申し入れに対する会社の対応が、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるかが争われた事案であり、神奈川県労委は、不当労働行為の成立は認めたものの救済の必要性がないとして、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合の本件団体交渉申入れに対する会社の対応が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かについて
(1)会社は、組合に対し、平成25年12月16日付け回答書を送ったものの、回答書の中で本件団体交渉申入れへの対応について、一切触れることなく、組合の指定した交渉日を欠席した。
(2)この点に関して会社は、本件団体交渉要求書を受け取る前に、組合から電話でAに係る団体交渉の申入れを受けており、応諾するつもりであったものの、交渉場所の調整が不調に終わったことによって、団体交渉が実施されなかったものであり、正当な理由なく団体交渉を拒否したことはない旨主張する。
 ① 確かに、団体交渉の日時や場所は労使の合意によって決められるものであって、会社が組合の指定どおりの日時や場所で団体交渉に応じなければならないわけではない。
 しかし、組合が本件団体交渉要求書を送付するよりも前に電話で団体交渉を申し入れたことを認めるに足りる証拠はない。
 ② また、仮に電話による団体交渉申入れがあり、その時点で交渉場所について労使間で合意できなかったとしても、会社は、組合事務所を交渉場所と指定した本件団体交渉要求書を受け取った後に、例えば本件回答書に交渉場所に関する会社の希望を記載するといった調整を全く行うことなく、組合指定の交渉日を徒過していることからすると、会社の上記主張は採用できない。
 ③ したがって、組合の本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否(労組法第7条第2号)に当たる。
2 救済の必要性
 ① 本件申立て後、Aと会社との間の雇用関係がなくなり、本件団体交渉申入れにおける主な議題であった同人の労働災害に関して本件負傷の治癒により障害補償給付がなされた状況において、組合が本件結審日に至るまで新たな労使交渉の機会を求めていないことからすると、会社に団体交渉の応諾を命ずるまでの必要性は認められない。
 ② また、会社は、本件審査手続において団体交渉に応じる意思を表明しただけでなく、組合による本件団体交渉申入れ及び別件団体交渉申入れのいずれも応諾しており、将来において同種の団体交渉の拒否が繰り返されるおそれがあるとはいえないことから、会社に陳謝文を掲示させる必要性も認められない。
 ③ したがって、本件においては、組合による本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められるものの、そのことについて救済を命じるまでの必要性はないものと判断する。 
掲載文献   

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