労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成24年不第36号
奥井組不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y([会社」) 
命令年月日  平成28年6月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、未払い残業代をめぐる会社の対応(下記1(1)~(3))、就業規則・給与規定改定及び基本給を巡る会社対応(下記2(1)~(4))及び25年冬季一時金を巡る会社対応(下記3)が不当労働行為に当たるかが争われた事案で、東京都労委は、会社に対し、給与制度改正に関する誠実団交応諾、文書交付等を命じ、その余の申立ては棄却した。
1 未払い残業代をめぐる会社の対応
(1) 未払い残業代をめぐる団体交渉における会社対応
(2) 運転日報を「改ざん」したこと
(3) 未払い残業代について時効を援用したこと
2 就業規則・給与規定改定及び基本給を巡る会社対応
(1) 24年4月25日、未払い残業問題に関する解決金を支払う条件として新就業規則及び新給与体系を施行する旨、記載した解決案を手提示したこと
(2) 改正給与規定の実施通告等をしたこと
(3) 基本給の公平化に関する団体交渉を打ち切ったこと
(4) 25年4月16日付けの時間外労働調整金算出方法の変更通知書を出したこと、
3 25年冬季一時金を巡る団体交渉において組合が提出を求めた経営資料を提出しなかったこと  
命令主文  1 会社は、申立人組合が給与制度改正の問題に関する団体交渉を申し入れたときは、誠実に応じなければならない。
2 会社は、組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に下記内容の文書を交付しなければならない。
年 月 日  X組合
   執行委員長 A1殿
株式会社Y   
代表取締役B
 当社が、基本給の公平化に関する団体交渉に誠実に応じなかったことは、不当労働行為であると東京都労働委員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 未払残業代を巡る会社の対応について
(1) 未払い残業代に関する団体交渉について
① 未払い残業代の推計方法について、組合は、A1分会長についての計算結果を基にして未払い残業代を推計することを想定していたが、未払残業代の総額をどのように計算するかについて、労使間で合意があったわけではないから、会社が、待機・積込み・荷卸しの平均時間を算出して残業時間を推計する方法を提案したことが、組合の想定と相違するところがあったとしても、そのことをもって会社を非難する理由とはならない。
 そもそも、これは、会社は、一つの方法として提案したものであって、その方法に固執したわけでもない。
 したがって、会社が、それまでの交渉経過を覆したとか、交渉の引き延ばしを図ったとまではいえず、不誠実な対応があったとはいえない。
② 平成24年1月10日になって、会社が、未払残業時間の評価について、組合と細かい突合わせを行うことを提案したことについて
ア 労働時間の評価については、労使間で大きなかい離があった。そして、そのかい離は、単にデータの誤りを修正するような事務的なすり合せで埋められるような性質のものではなく、労働時間の評価について、個別に議論を行う必要のあるものであったといわざるを得ない。確かに、会社は、1年以上の長期にわたってそのような主張を何ら行っておらず、作業が前向きかつ迅速に進められていたとは評価し難いが、とはいえ、会社がこの間意識的に作業を懈怠したような事実は認められず、主張するのが遅かったことのみをもって、会社の対応が不誠実であったとまでいうことは困難である。したがって、会社が細かい突合せをしたいと提案したこと自体が、不誠実な対応であったとまでいうことはできない。
イ 組合は、B1社長が、細かな突き合わせを提案し、これまでの交渉経過を覆したのは、会社側の出席者に交渉権限を与えていないことの表れであると主張するが、会社提案の時期が遅れたのは、労働時間の評価について労使間にかい離があることに気づくのが遅れたことが原因とみられ、状況を認識するのに時間を要したことに問題がないとはいえないが、組合の主張は採用できない。
③ 歩合給(乗務手当)が残業代に相当するかについては労使間で、決着済みの問題であるとの共通理解があったとみられず、会社が残業代に相当するという考えをもっていたことが、直ちに問題解決を図る姿勢を持っていなかったことにはつながらない。
④ したがって、会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるとはいえない。
(2)運転日報の「改ざん」について
① 第一次運転日報改ざん問題
 組合に改ざんされた運転日報を提出したことには問題があるが、会社が組合との関係で自ら有利な結論を導く意図で行ったとは認められない。また、会社は、組合の指摘を受けて運転日報の元データを提出して、それを基に交渉を進めているのであるから、支配介入とまで評価することは困難である。
② 第二次運転日報改ざん問題
 会社が、労働基準監督暑の調査に対して修正後の運転日報を提出した第二次運転日報改ざん問題は、書類の取り違えによる単なる事務的ミスとみるのが自然であり、会社は、後日、修正前の運転日報を労働基準監督署に提出し直し、組合にも謝罪しているのであるから、支配介入に当たるとまではいえない。
(3) 会社が、未払い残業代について時効を援用したことについて
 未払残業代の交渉が長期にわたっているのは事実であるが、この過程で会社が意図的に作業を懈怠したような事実は認められず、交渉の経過においても、会社に不誠実な対応があったとはいえない。
 また、会社は、平成24年4月25日解決金を含む解決案を提案し、6月22日に解決金を積み増しするなど、解決に向けた努力を行ってきたことが認められる。
 したがって、会社が時効を援用したことが、不当労働行為に当たるということはできない。
2 就業規則・給与規定改定及び基本給を巡る会社対応について
(1) 24年4月25日の解決案について
 24年4月25日の解決案には、未払残業問題に関する解決金を支払う条件として、まだ提案もされていない新就業規則及び新給与体系が施行されることが記載されており、組合が不信感を持つことも無理からぬものがあるが、この提案は、5月末までに施行できるよう労使双方協力して協議していこうという趣旨であるとの会社主張も、表現の適切さはともかくとして、理解できないものではなく、また、会社は上記対応について謝罪した上で、5月19日及び同月25日には、上記の条件を削除した協定案を提案しているのであるから、会社が、上記の提案をしたことをもって不誠実な対応であるとまではいえない。
(2)改正給与規定の実施通告等について
 (改正給与規定の実施通告等に関して)組合の主張する個々の事実は、全体の交渉過程の一部たるにとどまり、組合の主張は、一旦は合意に至った交渉過程の一部を全体交渉の流れから切り離して殊更に非難するものであるといわざるを得ず、こうした会社の個々の対応を捉えて不誠実な団体交渉ないし支配介入に当たるとまでいうことは困難である。
(3) 基本給の公平化に関する交渉について
 会社は、基本給テーブルの運用の内規ないし基準やそれを組合員に適用した場合の試算結果について、度々組合に提案する意向を表明しながら結局それを行わず、なぜ、そのような結論に至ったのかについても十分な説明を行わないまま、25年6月21日、経営状況が厳しさを増していることを理由に基本給の検討は見送る旨を組合に通知し、9月27日の団体交渉では、基本給の検討の延期期限については、見通しが示せない旨を述べている。24年3月以来、基本給の公平化が労使間の共通課題となり、24年12月6日の労使合意により、会社としてこれを前向きに検討した上、具体的な会社案を組合に示すことを求められていたことを踏まえると、このような対応は、労使合意の内容を実行しないまま、実質的に交渉を打ち切ったものとみざるを得ない。
④ したがって、会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たる。
(4) 25年4月6日付け時間外調整金算出方法の変更通知について
 組合と会社は、24年12月6日、残業問題に関する就業規則・給与規定の改正の暫定合意をした。この合意は、文言からみて改正後の給与規定に定める取扱いを組合が暫定的に承認したものとみざるを得ない。したがって、給与規定に反する誤った運用がなされていた本件にあっては、会社が、それを改めるのはやむを得ない措置であったというほかはなく、会社が上記通知をしたことが不当労働行為に当たるということはできない。
3 25年冬季一時金の団体交渉に当たり会社が経営資料を提出しなかったことについて
 25年冬季一時金の交渉に当たり、会社が、組合の求めた経営資料の交付を拒否したのは、組合の要求した経営資料が25年冬季一時金の対象期間と一致していなかったためであり、対象期間が誤っていることを告げずに経営資料の提出を拒んだ会社対応は、いかにも不親切であるといわざるを得ないが、団体交渉等の経過をみると、不誠実な交渉態度とまでいうことはできない 
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