労働委員会命令データベース

(こ の命令は、労組法に基づく和解の認定により失効しています。)
(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)


[命令一覧に戻る]

概要情報
事件番号・通称事件名  京労委平成27年(不)第1号 
申立人  X1組合(「組合」) 
申立人  X2(個人)、X3(個人) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年7月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、申立人組合の組合員であるX2及びX3(以下、両者を併 せて「X2ら」という。)に対して会社が行った下記①~④の行為(以下「本件不支給等」という。)が、労働組合法(以下 「法」という。)第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、京都府労委は、会社に対し て、下記の各賃金及び賞与に係るバックペイを命じた。
① 平成26年7月の賃金改定において、X2は昇給させず、X3は500円のみの昇給としたこと。
② 平成26年の夏季賞与をX2には支給せず、X3には3万円のみ支給したこと。
③ 平成26年の年末賞与を、X2らに支給しなかったこと。
④ 平成27年4月の決算賞与をX2らに支給しなかったこと。  
命令主文   被申立人会社は、申立人X2及びX3に対し、平成26年7月支給 分以降の賃金並びに同年の夏季及び年末賞与並びに平成27年の4月決算賞与について、次により得られる額と実際に支払った額 との差額を、支払わなければならない。
1 平成26年7月の賃金改定における昇給額について、査定表の社是・経営理念に係る評価を他の従業員の平均値を用いて再査 定することにより、算定し直して得られる賃金の額
2 上記各賞与について、査定表の社是・経営理念に係る評価を他の従業員の平均値を用いて再査定することにより、算定し直し て得られる賞与の額 
判断の要旨  1 本件不支給等は、法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか。
(1) 組合に加入したことを被申立人に通知した後のX2らの昇給及び賞与の取扱いと他の従業員及びそれまでのX2らの昇給 及び賞与の取扱いには明らかな差異が認められ、これに加えて、分会結成直後から被申立人には組合を嫌悪し、又は軽視する態度 が認められることから、本件不支給等はX2らが組合に加入した故をもってなされたものと、一応推忍することができる。
(2) 上記(1)のとおり、本件通知前後の事実経過から不当労働行為意思が推認されるとしても、本件のような昇給及び賞与 に係る取扱いについては、それが、合理性な査定の結果であると認められれば、不当労働行為とはなることはないので、以下、検 討する。
① 被申立人は、本件不支給等は総労働時間を重要な考慮要素とした合理的な査定に基づくものと主張し、確かにX2らは本件不 支給等の各査定期間において、総労働時間が他の従業員に比べて少ないことが認められる。
② しかしながら、まず、被申立人の昇給及び賞与に係る査定は、査定表による、社是・経営理念、勤務姿勢、休務日数及び貢献 度等の項目の5段階評価により行われており、総労働時間は社是・経営理念の重要な考慮要素とされていると認められるが、その 根拠となる個々の査定表等の資料は一切示されていない。
③ その点は措くとしても、総労働時間という客観的な指標を用いた査定であっても、その運用において公正さを欠き、そのた め、特定の者に不利益が生じるような場合は査定の合理性は否定されるものと考えるべきである。
 本件において、被申立人は、長時間労働が必然的な印刷オペレーターであったX2らを本件配転により本件通知直後に他の部署 に異動させていること、さらに、その後も上司がX3に帰宅を促していること、元工場長が「わざと残業なくされてるんだぞ」と 発言していること等から、そもそも、被申立人は、本件通知後、X2らの時間外労働を減少させ、ひいては総労働時間が少なくな るような措置を講じていたものと認められる。
④ その後の団体交渉等の経過を見ても、被申立人は、当初は、X2の「自分の時間を持ちたい」との文書を見てX2は時間外労 働をしたくないものと判断し、時間外労働を軽減した旨説明していたが、組合から、X2らは時間外労働を拒否しているわけでは なく時間外労働を命じないのは意図的なものではないかとの旨の質問をされると、直接、X2らに、時間外労働に対する意向を尋 ね、これに対し、X2が業務上必要な時間外労働はルールの範囲内で行うが事情があってできないこともあり強要はされたくない 旨回答したところ、被申立人は、こういう場で質問されたら「やりますよ」と答えるのが普通である旨発言したり、X2のスタン スは、権利を盾にして残業しないというものであり、被申立人の社是に反しているから残業させるに値しない旨発言して、時間外 労働は指示しない旨表明したことなどが認められる。
⑤ 上記のとおり、被申立人は、まず、X2らに対して時間外労働を削減させる措置を講じ、その後もX2らの時間外労働につい て説明や対応を二転三転させながら、結局、時間外労働を行わせないようにし続けているものと認めざるを得ず、そうすると、そ のような被申立人の対応の下で、総労働時間を重要な考慮要素として行われた査定は公正さを欠き、合理的なものとはいえない。
(3)本件不支給等はX2らが組合に加入したことの故をもってなされた法第7条第1号の不利益取扱いに該当する。
2 本件不支給等は、法第7条第3号の支配介入に当たるか。
 本件不支給等は、法第7条第1号の不利益取扱いに該当するところ、そこで説示した内容によれば、X2らの組合活動の制限及 び組合の弱体化を意図して行われたものと認められ、したがって同条第3号の支配介入にも該当するというべきであ る。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全 文情報] この事件の全文情報は約157KByteあ ります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダ ウンロードが必要です。