労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  三労委平成27年(不)第3号
齋木運送不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年6月27日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、平成27年4月7日、X2組合(X2組合は本件申立て後解散し、X1組合が本件申立人の立場などを含むX2組合のすべての法的地位を承継している。)、Z1組合及びZ2組合(Z1組合及びZ2組合はX2組合の上部団体)から「組合結成のお知らせ」、「団体交渉申入書」及び「要求書」を手交され、①労働基準法に基づいて改善せよ、②運賃・月の売り上げを明確にせよ、③給料体系を明確にせよ、④最低賃金の保証をせよ、⑤個人の能力にあった配車をせよとの要求事項についての団体交渉を申し入れられたが、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件で、三重県労委は文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、本命令書受領の日の翌日から起算して7日以内に、下記内容の文書を申立人に手交するとともに、縦42センチメートル×横29.7センチメートルの白紙に楷書で明瞭に記載し、被申立人本社玄関の見やすい場所に1ヶ月間掲示しなければならない。
年 月 日
X1組合
Y分会分会長  A1殿
Y会社      
清算人B1

1 当社が、X2組合(承継人はX組合)から、平成27年4月7日付けで申し入れられた団体交渉に応じなかったことは不当労働行為であると、三重県労働委員会において認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
            (注:年月日は文書を記載した日を記載すること。)
2 申立人のその余の申立てを棄却する  
判断の要旨  1 却下事由の該当性
 労働組合が救済申立人となる場合は、労組法第2条及び第5条第2項の要件に適合するとの資格審査を受けなければならないとされており、その他に格別の要件を満たす必要はない。申立人は当委員会の資格審査において適格と決定されたものであり、本件申立ては、労委規則第33条第1項第2号所定の却下事由には該当しない。
2(1) 被申立人は、本件団体交渉申入れによる団体交渉を拒んだか。
 平成27年4月7日付けで申し入れた団体交渉につき、被申立人がこれに応諾しなかったため、Z1らは、同年5月13日及び6月8日に抗議したが団体交渉は応諾されていない。
 申立人及び被申立人から、団体交渉が誠実に開催されたとの主張・立証はなく、また、労組法第7条第2号の要件事実を考えれば、被申立人が「正当な理由」を主張している以上、団体交渉に応じていないことが前提と解するしかない。
 よって、被申立人は、同年4月7日付けのZ1らからの団体交渉を拒んだといえる。
2(2) 被申立人が、本件団体交渉を拒んだと認められる場合、その拒んだことに正当な理由がなかったか。
① 交渉事項の義務的団交事項該当性
 平成27年4月7日付け要求書に記載された要求事項は、いずれも労働条件に関するものであることは明らかであり、その交渉事項は、労働条件その他の待遇や団体的労使関係の運営に関する事項として義務的団交事項に該当する。
② 組合結成通知・団体交渉申入れの態様
 Z1らは、平成27年4月7日、自宅にいたB2代表取締役及びB3取締役を被申立人事務所に呼び出し、労働組合の結成を通知し、団体交渉を申し入れた。被申立人は、突然のZ1らからの団体交渉申入れに当惑したとしても、そのことのみをもって、被申立人が誠実に交渉する義務を負わないということにはならない。
③ 組合規約・組合名簿不提出
 平成27年4月7日、Z1らは、「X2組合結成のお知らせ」、「団体交渉申入書」及び「要求書」をB2代表取締役及びB3取締役に手交したが、いずれの文書にもZ1らの代表者名が記載され、「団体交渉申入書」には議題が、要求書には要求事項が記載されていた。
 また、同日、A1らが直接B2代表取締役及びB3取締役に団体交渉を申し入れており、同人らは、X2組合の組合員をほとんど把握していた。これらのことから、交渉の当事者も交渉事項も特定されている。
 確かに、団体交渉が進展するなかで、被申立人がX2組合や申立人に対して組合員規約及び組合員名簿の提出を求めることがあるとしても、X2組合が労働組合を結成し、はじめて団体交渉を申し入れる時点においては、組合規約及び組合員名簿の提出がないことをもって、団体交渉を拒否することはできないし、当該交渉事項につき、組合規約及び組合員名簿が必要な特段の事情は認められない。
④ 連絡先が不明確であること
 被申立人は、Z1らの連絡窓口が不明確であると主張するが、Z1らは、役員を明示したうえで、団体交渉を申し入れており、被申立人は、当該役員に開催日時及び場所などの連絡をすればよいことになる。
 そして、A1らは、被申立人の従業員であるから、被申立人は、当然、その連絡先を把握していたはずである。
⑤ 外部での団体交渉の提案
 被申立人は、被申立人事務所で団体交渉を実施すれば、Z1らの要求を承諾しない限り、被申立人事務所に軟禁される虞があったといえると主張するが、Z1らが被申立人を軟禁した事実は認められず、被申立人が一方的に就業場所以外の場所を指定した合理的理由は認められない。
 以上のことから、被申立人が、本件団体交渉を拒んだことに正当な理由がなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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