労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第6号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年7月1日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   平成26年7月19日、会社は、組合の会計補佐であるA2に対し、D店海産部門からEセンター内に所在する生鮮センターにある精肉部門への、同月24日を着任日とする配置転換を命じた(以下「本件配転命令」という。)ところ、同月25日からA2が会社に出勤しなくなった。
 A2及び組合は、年次有給休暇の取得や争議行為による欠勤であるとしたのに対し、会社は無断欠勤であり懲戒事由に該当するとしたことから、やりとりを繰り返しても対立が解消しないまま推移した。
 会社は、平成26年12月19日、無断欠勤を理由として、同月1日付けでA2を懲戒処分とし、同人の給与を同月から1年間5%減額するとともに同年冬期賞与を支給しないこととした(以下「本件懲戒処分」という。)。
 本件は、本件懲戒処分が、A2が組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに組合に対する支配介入に当たるとして申立てがあった事件で、大阪府労委は、会社に対して、本件懲戒処分を取り消し、当該処分がなければ得られたであろう給与相当額と既支払額との差額及び26年冬期賞与相当額の支払い並びに文書の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2に対する平成26年12月1日付けの懲戒処分がなかったものとして取り扱い、当該処分がなければ得られたであろう給与相当額と既支払額との差額及び平成26年冬期賞与相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
年 月 日
X組合
執行委員長A1様
株式会社Y    
代表取締役 B
 当社が平成26年12月1日付けで貴組合員A2氏を懲戒処分としたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。  
判断の要旨  1 本件懲戒処分の根拠や程度、手続について
① 会社は、A2は解雇事由に該当するところを降格・減給にとどめ、減給の程度も軽くしている旨主張しているが、本件懲戒処分は、就業規則に則って行われたものということはできないから、会社の主張には理由がない。
② 懲戒処分という不利益処分を行うに当たって、A2に弁明の機会を与えないことは手続上も問題があるといわざるを得ない。
③ 以上のことからすると、本件懲戒処分は就業規則に則ったものではなく、手続上も問題がないとはいえない。
2 A2を無断欠勤としたことに合理性があるという会社主張について
① 会社は、会社が承認しなければ無断欠勤になる旨主張している。会社就業規則32条には、欠勤する場合は所定の手続により職長に届け出て、承認を受けなければならない旨の規定がある。しかしながら、会社では欠勤届に係る書式はなく、承認申請の前提となる同条所定の届出手続が定められていないのであるから、会社の主張には理由がない。
② 会社は、組合による争議行為の予告が適法要件を欠き、無効であるからこそ、診断書云々が問題とされている旨主張しているが、会社主張の事実をもってしても、組合の同盟罷業の決定が有効投票の過半数を欠いたとの疎明はなく、また、同盟罷業という労働組合が自主決定すべき事項に対し、使用者が確証もなく疑義を呈すること自体、問題なしとしない。
 そうすると、平成26年9月1日以降のA2の欠勤は争議行為によるものと解すべきであり、会社の主張は採用できない。
③ 会社は、平成26年8月31日以降の欠勤については、根拠となる診断書の提出がなく、届出がない旨主張するものの、少なくとも体調不良を理由とするものであったことは認識した上で対応していたといえる。
 したがって会社の主張(注:診断書の提出がないA2に体調不良があるとしてもA2の欠勤について、会社が承認できるだけの理由がない。)は、A2を無断欠勤とする根拠とはならず、採用できない。
④ 以上のことからすると、、会社がA2を無断欠勤としたことには合理的理由がない。
3 本件懲戒処分当時の労使関係について
 A2は、組合と会社が激しい対立関係にある中で、本件配転命令に異を唱え、組合の闘争手段としての争議行為に参加し、争議行為として欠勤を続けてきたといえる。
4 以上を総合的に判断すると、本件懲戒処分は、労使対立が激しい中で、会社が組合活動としての争議行為により欠勤したA2に対し、合理的な根拠もなく、手続に問題があるまま、懲戒処分を行い、A2に不利益を与えたものといえ、また、これにより、組合員の組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものであって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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