労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成26年不第37号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」)  
被申立人  Y株式会社(会社) 
命令年月日  平成28年6月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要  ① 21年4月頃、会社は、月2億4,000万円の売上高があれば賞与を支給できると発言し、その後の団体交渉においても発言の事実を認めていたが、売上高がその金額を超えたにもかかわらず、経費の増加を理由に25年夏期賞与及び冬期賞与を支給しなかった。
② 前件である東京都労委平成25年(不)第48号事件の25年11月13日和解協定書(前件協定書)には、会社が、組合員に対し、26年1月から1年間エコ奨励調整手当を支給すること、27年以降の同手当の存続、改定について、組合と誠実に協議すること等が定められていた。26年6月16日に組合が27年1月以降の同手当について団体交渉を申し入れたところ、組合と会社の間の協議は妥結に至らず、会社は、27年1月以降、同手当を支給していない。
③ 会社は、前件協定書により、団体交渉には基本的に社長が出席することで合意していたが、26年3月1日開催の第133回団体交渉及び同月29日開催の第134回団体交渉にB1社長は出席しなかった。
 本件は、①第133回団体交渉及134回団体交渉にB1社長が出席しなかったことが不誠実な団体交渉及び支配介入に該当するか、②25年夏期賞与及び同年冬期賞与を支払わないことが支配介入に該当するか、③組合の26年6月16日付団体交渉の申入れから27年3月13日までの間における同年1月以降のエコ奨励調整手当に関する会社対応が不誠実な団体交渉及び支配介入に該当するかが争われた事件で、東京都労委は、会社に対して、団体交渉ルールに関する協定書等の遵守、エコ奨励調整手当に関する誠実団交応諾及び文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合と団体交渉を行う際には平成13年4月21日付団体交渉ルールに関する協定書第3項に定める「団体交渉には、基本的に社長が出席する。」及び18年2月8日付和解協定書第2項に定める「団体交渉には、基本的に会社側は社長が出席する。但し、やむを得ず社長が出席できない場合は、解決能力のある取締役を出席させる。」との条項を遵守しなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合から27年1月以降のエコ奨励調整手当について団体交渉の申入れがあったときは、25年11月13日付和解協定書に基づき、組合員と非組合員とを分けた燃料費に関する資料を提示するなどして誠実に応じなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
X組合
委員長 A様
Y会社         
代表取締役 B
 第133回団体交渉及び第134回団体交渉に当社代表取締役社長が出席しなかったこと及び平成27年1月以降のエコ奨励調整手当に関する当社の対応は、いずれも東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)
4  被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 B1社長が、第133回団体交渉及び第134回団体交渉に出席しなかったことについて
① 組合と会社の間で締結した平成13年4月協定書において、「団体交渉には基本的に社長が出席する。」、同じく18年2月協定書においても、「やむを得ず社長が出席できない場合は解決能力がある取締役を出席させる。」と定められている。そして、これまで締結した協定書を遵守することは前件協定書にも定めるところである。
 会社は、B1社長は健康上の理由により団体交渉への参加を控えたと主張するが、組合に対してそのような理由を一切説明しておらず、当時B1社長が団体交渉に出席できないほどの健康状態にあったことを推認させる事情も、特に見当たらない。B1社長が団体交渉に出席しなかったことは、「やむを得ず社長が出席できない場合」に該当しない協定違反行為と認められる。
② 解決能力のある取締役が出席していたか否かについても念のため検討したが、B2常務の発言や対応等をみると解決能力のある取締役が不在の団体交渉であったと認められる。
③ 以上のとおり、B1社長が出席せず、実質的な権限のない取締役が参加した第133回及び第134回の各団体交渉は、不誠実な団体交渉に該当するものであるとともに、会社側のこのような団体交渉の姿勢は、本件申立て以前から一貫して継続しているものであり、組合と再三にわたり締結した協定書を無視するものであって、組合の交渉能力の弱体化を図った支配介入にも該当する。
2 25年夏期賞与及び冬期賞与の不支給について
 B2常務の発言は、21年4月当時の経費率の下で賞与が支給可能となる売上高を述べているにすぎず、その後の賞与支給に当たっての絶対的な基準を示したものとみることはできない。
 したがって、会社が、一定の売上高に達した際には賞与を支給することを確約したとはいえず、25年夏期賞与及び冬期賞与を支払わないことは支配介入に該当するとはいえない。
3 27年1月以降のエコ奨励調整手当に関する会社対応について
① 前件協定書に定められたエコ奨励調整手当は26年12月支給がその終期となるところ、会社は、非組合員に適用されるECO原価低減協力奨励金とは異なる内容とすることを示唆しながら、結局は、組合が反発していた26年9月時点の改定案(注:ECO原価低減協力奨励金と同じ内容にするという改定案)を終期後の27年1月に正式提示したのであって、このような会社の対応は、前件協定書の趣旨を踏まえた誠実な交渉態度とは言い難い。
② 27年1月以降のエコ奨励手当の評価調査表についてみれば、会社は、特に評価査定表に関する組合の疑問を解消させるような対応は行わず、具体的な代案を示すこともないまま、以前、組合が疑問を呈した内容と同一の評価査定表を提案している。この会社の対応は、組合との間での妥結を目指し、誠実に交渉したものとはいい難い。
③ 組合が、組合員と非組合員とを分けて燃料費に関する資料を開示するよう求めても、会社は資料開示に応じていない。組合は、組合員に適用された制度(エコ奨励調整手当)と非組合員に適用された制度(ECO原価低減協力奨励金)のどちらの制度がより合理的かを問題として交渉を求めていたのであるから、組合員と非組合員に分けた燃料費に関する資料は重要なものである。そして、この資料を作成することが会社にとって困難であるといった事情も特に窺われない。
④ 以上からすると、27年1月以降のエコ奨励調整手当に関する会社の対応は不誠実な団体交渉に該当する
⑤ B1社長が27年1月以降の団体交渉に一度も出席せず、協定違反を続けるなど、前件協定書を締結した後の一連の会社の交渉姿勢を併せて考慮すれば、27年1月以降のエコ奨励調整手当に関する会社の対応は支配介入にも該当する。
 
掲載文献   

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