労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成25年(不)第39号
エスト不当労働行為審査事件 
申立人  Xユニオン(「組合」)  
被申立人  有限会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年5月26日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社が経営する外国語学校Dで就労していたA1及びA2は、会社との間で労働条件を巡る問題が生じていたため、平成25年6月上旬、組合に加入し、同年8月6日に組合と会社との第1回団体交渉が開催された。
 同年10月下旬には、Dで就労していたA3、A4、A5及びA6も組合に加入した。
 A1、A2、A3及びA4は、会社から、経営悪化による事業廃止を理由に、平成25年10月31日付けメールで解雇予告を通知されたため、同年11月26日、解雇問題等を議題として組合と会社との第2回団体交渉が開催されたが、A1、A2、A3、A4、A5及びA6(以下「A1ら6名」という。)は同月30日をもって解雇された。
 本件は、会社が、①組合との団体交渉を誠実に行わなかったこと、②事業廃止並びにA1及びA2の解雇について組合に連絡、協議を行わずに解雇予告を行ったこと、③A1及びA2を平成25年11月30日をもって解雇し、翌月以降の給料を支払わなかったこと、④A1ら6名に係る離職票の交付を遅滞させたことが、労働組合法第7条第1号及び第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
 神奈川県労委は、組合の申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団体交渉について
ア 団体交渉の開催期日について
 会社が組合から要求された団体交渉開催日に応じないことが、直ちに不誠実な対応といえるものではないし、団体交渉期日は一方的に決めるものではなく、双方の合意によって決められるべきものである。本件についてみると、B1にとって初めての団体交渉であり、対応をB2弁護士に依頼したことは無理からぬ面があること、加えて、組合は上記平成25年11月15日付け「組合結成通知書・団体交渉要求書」においてはB2弁護士の出席を求めていることからも、会社が団体交渉期日を決定する際にB2弁護士の都合を考慮したことはやむを得ない対応であったといえる。さらに、会社は、候補日を複数挙げて組合に検討を求めるなど、団体交渉に応じようとする姿勢が認められることから、会社の都合で団体交渉開催期日が変更されたことをもって、会社の対応が不誠実であったとまではいえない。
 なお、組合は、第2回団体交渉が、事業廃止まであと4日に迫った平成25年11月26日に開催されたことを、不誠実であると主張するが、組合は、会社が同年9月26日に従業員に「重要なお知らせ」を配付して事業廃止について周知した直後に、A2からの報告で、会社の事業廃止を知つたものの、その後団体交渉を申し入れるまでに、約1か月半もの時間が経過していることも考え合わせれば、団体交渉が同年11月26日に開催されたことを会社の責にのみ帰すことはできない。
イ 団体交渉における会社の対応について
 このように、会社は、どちらの団体交渉においても、B2弁護士が同席し、組合に回答書を提出している。また、組合の要求に対して、第1回団体交渉でA2に係る残業代を2分割で支払う旨を回答し、第2回団体交渉で経営状況を口頭で説明した上で、経営状況を示す資料の会社での閲覧を認める旨を回答しているのであって、会社が団体交渉において不誠実な対応を行ったとまではいえない。
ウ 組合と連絡・協議・交渉なしで事業廃止を強行したことについて
 確かに、既にA1及びA2は組合に加入しており、しかも第1回団体交渉が行われた後にもかかわらず、会社が、事業廃止並びにA1及びA2の解雇について、組合に連絡、協議しなかったことは、結果的に労働組合を無視したものといえる。しかしながら、不誠実団体交渉に該当するか否かという点については、第2回団体交渉で組合は、会社が事業廃止並びにA1及びA2の解雇について組合に連絡、協議を行わなかったことを指摘しているものの、同団体交渉そのものは、前記イのとおり不誠実であったとまではいえない上、会社が、この問題を団体交渉事項とする組合からの団体交渉申入れを拒否した事実もないことから、労組法第7条第2号に該当するという組合の主張は採用できない。
エ よって、会社の対応は不誠実な団体交渉には当たらない。
2 A1及びA2の平成25年11月30日付け解雇について
 B1は、A1及びA2への事業譲渡が平成25年8月6日の第1回団体交渉で拒否されたことを契機に、事業継続が困難であると考え、同年9月下旬に事業廃止を決断した後、同月26日には全従業員に対して、事業廃止の通知を行った上で会社の事業継承者を募り、同年10月19日には、同年12月以降他の事業主体が事業を継承した場合に引き続き勤務を希望するか等の意向確認を行っている。また、同年11月末日には、事業が廃止され、自主退職者1名を除き、従業員27名全員が解雇されたが、上記意向確認で継続勤務を希望した19名全員が、同年12月以降事業継承先であるE又はFに引き続き雇用されている。このように会社の対応は全従業員について同一であり、組合員に対してのみ、特に不利益な取扱いをしたとはいえず、会社の行為は、労組法第7条第1号に該当しない。
3 A1ら6名への離職票の交付について
 本来、事業主は、従業員が退職した場合、退職日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険資格喪失届に離職証明書等を添付してハローワークに提出しなければならず、その後、事業主はハローワークから交付された離職票を、退職者に速やかに交付しなければならない。B1は、解雇日から2か月近く遅れて離職票を交付している。一般的に、事業主の離職票交付の遅れにより、雇用保険基本手当の受給開始が、遅れたり、受給期間中に就業した場合には、本来の受給期間に比べて短い受給期間となり、総受給額が減少することもあるが、本件において、離職票交付の遅れによりA1ら6名が被った不利益の内容については、明らかにされていない。
 また、平成25年11月30日付けで解雇になった従業員のうち、離職票が交付されたのはA1、A2、A3及びA4の4名だけであり、A5及びA6についてはパートタイム講師であったこと、組合員以外の従業員については、解雇後引き続きE又はFに雇用されているなどの理由で、雇用保険対象外であったため、離職票は交付されていない。
 よって、離職票交付の遅れによりA1ら6名がどのような不利益を被ったのかについて明らかにされておらず、また、その離職票交付の遅れが組合員であるが故であったかについても立証されていないことから、会社の離職票交付の遅れは、労組法第7条第1号に該当しない。  
掲載文献   

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