労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成26年(不)第15号・第61号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年5月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   会社が、①会社の店舗の店長等を通じて、組合に対する誹謗中傷や別労働組合結成への関与等を行ったこと、②組合との団体交渉の日程を変更する提案を行ったこと、③組合の組合員を店舗従業員から配置転換したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、会社が、組合に対する誹謗中傷、組合員への脱退勧奨、別労働組合結成への関与を行ったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するとして、会社に対して、文書交付を命じ、その余の申立を棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
X組合
執行委員長 A1 様
株式会社Y       
代表取締役 B1
 当社が、平成26年3月から同年9月頃にかけて、店長等を通じて、①貴組合に対する誹謗中傷、②貴組合員への脱退勧奨、③別労働組合結成への関与を行ったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(平成26年3月から同年9月頃にかけて、会社は店長等を通じて、①組合に対する誹謗中傷、②組合員への脱退勧奨、③別労働組合結成への関与を行い、組合の結成及び運営に対する支配介入を行ったといえるか。)及び争点2(本件日程変更提案は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
(1) 平成26年3月から同年9月頃にかけて、会社は店長等を通じて、①組合に対する誹謗中傷、②組合員への脱退勧奨、③別労働組合結成への関与を行い、組合の結成及び運営に対する支配介入を行ったといえるかについて、以下判断する。
ア 店長等におけるC組合結成に関係する行為について
(ア) まず、C組合の設立についてみると、①平成26年3月3日、組合は会社に対し、組合の結成を通知するとともに、団交を申し入れたこと、②同月20日付けでC組合ニュース第1号が作成され、配付されたこと、がそれぞれ認められ、C組合は、実質的には、組合が結成を通知した直後に、活動を開始したというのが相当である。また、C組合が活動を開始するまでの間に、労働組合としての活動方針の違いから、組合とは別の労働組合を立ち上げようとする機運が従業員の中にあったとする疎明もない。
(イ) 平成26年3月10日夜、B1社長、B12統括店長及びB9副店長が会食したことが認められるところ、組合は、この場で、B1社長がB9副店長に対し、第二組合を作るように指示し、後に、B12統括店長は、この時のことを前提として組合役員と話をしている旨主張する。
 そこで、平成27年3月16日のA3副執行委員長とB12統括店長の会話について検討するに、会社は、「嫌です。荷が重いですって俺に相談してきた」との発言について、誰から何を言われて荷が重いとしているのかは不明である旨主張する。
 しかし、この会話の内容をさらにみると、A3副執行委員長が「立場が違ったらお前もこっちに入っとるかわからんやろ」と発言したのに対し、B12統括店長が「たまたま店長やってるから、どうなってたかわかりませんけど、別に、よかったんですけど。今まで、組合がなかったのがおかしかったんやで」と述べていることからすると、会社従業員を組織する労働組合が、初めて設立された後、2つの労働組合が併存することになり、それぞれが異なる労働組合に属することになったことを話題にしていることは明らかである。また、その前のA3副執行委員長の「見てみろこの連中、仕事せんやつらばっかりやって、言ってるやろ」、「ほんでお前らに最初作れって言うとったんやろ」との発言は、従業員の勤務状況を評価し得る立場の者が労働組合を作れと指示したという意味と解されるところ、B12統括店長はこの発言内容を承けて、「B9が嫌です。荷が重いですって俺に相談してきた」と述べたのであるから、会社で店長等に指示できる地位にある者が、労働組合を作るようB9副店長に指示したことを前提として、双方が話をしているとみるのが相当である。
 したがって、平成27年3月16日のA3副執行委員長とB12統括店長の会話は、組合設立直後に、店長等に業務指示可能な地位にある者が、店長等に対し、組合に対抗する第二組合を設立するよう命じていたことを窺わせるものというべきである。
(ウ) さらに、①平成26年3月17日、A1執行委員長がB12統括店長に電話したところ、B12統括店長は会社がB7店長に指示し、そのB7店長から入るように言われたので入った旨返答し、店長としての立場があるので、会社側の労働組合に入らないといけない旨述べたこと、②同日、A1執行委員長がB8店長に電話したところ、B8店長は会社から言われているので、会社側の労働組合に入らないといけない旨述べたこと、③同月19日、A1執行委員長がB7店長と話をしたところ、B7店長はC組合に関して、会社から頼まれた、最近、管理職を中心に動き出した等と発言したこと、がそれぞれ認められる。
(エ) 以上からすれば、C組合の結成に当たって、会社が、店長等を通じて、一定の関与をしていたというのが相当である。
イ また、店長等によるC組合結成に関係する行為、また組合員や非組合員に対するC組合への勧誘行為等は、いずれも会社が店長等を通じて行った使用者の行為と評価するのが相当である。
ウ したがって、平成26年3月から同年9月頃にかけて、会社は店長等を通じて、①組合に対する誹謗中傷、②組合員への脱退勧奨、③別労働組合結成への関与を行ったと判断され、かかる行為は組合の結成及び運営に対する支配介入に当たり労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
(2) 本件日程変更提案は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるかについて、以下判断する。
 会社は、安易に本件日程変更提案を行い、その団交姿勢に積極性が欠ける点がみられるものの、団交を開催する意思を欠き、引き延ばしを図ったとまではみることはできず、この点にかかる組合の申立ては棄却する。
2 争点3(本件配転は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 生鮮センターの精肉部門及び海産部門においては、たびたび配転が行われ、人員数が増加しているところ、①生鮮センターでは魚介類、精肉等の食品加工・パック詰めが行われており、会社従業員が食品加工・パック詰めの業務についていること、②平成24年12月以降、生鮮センターの出荷パック数は、増加していること、がそれぞれ認められ、会社が、生鮮センターについて、人員を増加させる必要があるとすることには一定の合理性がある。
 また、①平成26年10月時点で、生鮮センターで勤務する正社員で組合加入資格を有する者は、A2組合員ら3名以外は全員がC組合の組合員であること、②A2組合員ら3名と同様、店舗から生鮮センターに配転された者が相当数いること、が認められ、会社が、組合員のみを狙い撃ちにして配転を行ったとも、組合員を分断して配転したとも解せない。
 さらに、会社がA2組合員ら3名に対し、生鮮センターにおいて、必要性の乏しい業務に就くよう命じたと認めるに足る疎明はない。
 本件配転について、組合は、A2組合員は海産部門から精肉部門への異動であることやA5組合員の通勤時間が増加することを指摘する。しかし、A2組合員は、海産部門で勤務するという条件で入社したものではなく、店舗の青果部門から生鮮センターの精肉部門に配転された例や、店舗間の異動において、異なる部門へ異動している例があることが認められ、海産部門から精肉部門への異動であることをもって、A2組合員の配転を不当であるとはいえない。また、本件配転によりA5組合員の通勤所要時間が片道で30分程度長くなったことは認められるが、これを通常の異動によって起こり得る限度を超えたものとみることはできない。
 さらに、組合は、A5組合員の配転が降格に当たる旨主張するが、A5組合員は、店舗の精肉部門のサブマネージャーから生鮮センター精肉部門(2等級)に配転になったところ、店舗では各部門の長で3等級の者がマネージャーと呼ばれていることが認められ、A5組合員がサブマネージャーであった頃、3等級以上の地位にあったと認めるに足る疎明もないのであるから、A5組合員の配転を降格に当たるということはできない。
 以上のとおりであるから、本件配転は、A2組合員ら3名が組合員であること等を理由にしたものということはできず、また、支配介入に当たるともいえないのであるから、この点に関する組合の申立てを棄却する。  
掲載文献   

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